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地球行き

「そろそろ地球に行きますか?」


 食事をしているときにプロメが言った。


「出発はまだまだ先だって言ってなかった?」


 テルルが言った。確かに出発はまだまだ先だって言っていた気がするが、実際ここで出発の時を待つのは少し退屈だった。 


「出発はまだ先なんですが、みなさん少し飽きてきてるみたいなので」


「いつでもいいぞ、何か準備するものはあるのか?」


 マリーがやる気満々で言った。


「服は地球ぽいのがいいわよね?」


 テルルがファッションを気にした。

 トラン人の髪は真っ赤だから、どんな服を着ても逆に変ではない気がした。全てモデルや美容師やデザイナーやコスプレイヤーと言えば、地球人は納得しそうだった。


「俺は財布を作っておくか」


 中身は3万3千円しかないが、キャッシュカードとクレジットカードが・・・と思ったところで気が付いた。


「もしかして、俺の貯金って下ろしちゃダメなのか?!」


「ダメに決まってるじゃない、オリジナルのあなたが管理してるわ」

「俺の貯金じゃなくなったのか・・・」

「カードや身分証は廃棄してください。いえ、私がやっておきます」


 プロメが天井を見ながら何かを考えていた。私がやっておきますという発言はたぶん、カードや身分証を偽造する算段を考えてあるんだろう。


「やっておきますって?」テルルが聞いた。

「あとで皆さんのバッグの中に、身分証とお金を入れておきますので、地球に着いたら確認してください。まあ、私も行きますので、また言いますけど」


 やっぱりな。おれは心の中でそっと思った。


「何をどうするのか全然わからんが、他に注意事項は?」


「いえ、特には無いです。装備品はモコソだけでいいです。体調の悪い方は?」


 手を上げる者はいなかった。


 出発はまだまだ先だが地球に出発するという。まったく、俺の頭が悪いのかみんなの頭が良すぎるのか・・・

 たぶんみんなの頭が良すぎるのだろう。天才だらけだもんな。俺はそう思うことにした。


「では、モコソと身の回りの物を少しだけ持ってエレベーターに移動しましょう。トイレだけ行っておいてください」


 俺たちは身の回りの物を入れたバッグを持って、エレベーター前に集合した。


「下に行きましょう」


 プロメの指示に従って俺たちはエレベーターに乗り、ボロンの製造空間に下りた。


「天井から何かが下りてきたな」


 天井からウィンウィンとモーター音をさせながら、照明のようなものを持ったアームが下りてきた。


「フラッシウムだな、あれで俺たちはスキャンされるからな」少佐が言った。


「トミサワさん、これをバッグに入れておいてください」


 プロメが大きな黒くて四角い物を出した。それはプロメのラボで見た携帯型ボロンだった。


「なんで俺が持つんだ?」

「みんな持ってますので。くれぐれも、扱いには注意してください」

「手が無くなるんだっけな」

「その通りです」


 みんなに渡した携帯型ボロンを俺にもくれるという事は、多少はプロメにも信用されるようになったらしい。


「じゃあみんな、ここに並んでくれ」


 少佐の指示で、俺とマリーが横に並び、俺の後ろにテルルが立った。

 そして俺とマリーの前に、プロメとストルン少佐が立った。2,2,1の隊列で俺たちは整列した。


「今回は、スキャンされた瞬間にトミサワさんとマリーさんは2歩前へ出てください」

「軍曹、忘れるなよ。咳き込みながら2歩前だ」

「了解した」


「では、行くか!」

「それでは地球へ出発します。ハイチーズ!」


 体に強い衝撃が走った。




「ゴホゴホ!」

「2歩前に!」


 俺は言われるがままに2歩前に出た。背中に何かがぶつかって俺は押されてさらに前に1歩出た。

 前のプロメにぶつかった。後ろを振り返るとテルルが咳き込んでいた。

 テルルの後ろには、大きなボロンの黒い壁があった。

 俺たちは狭い部屋にいた。


 少佐が俺たちの手に飴を握らせた。

「舐めて」

 俺たちは飴を素直に口に入れた。喉がラクになった。


『生きてるかー』


 どこかのスピーカーから少佐の声が聞こえた。


「問題ない。成功だ!」


 こちらの少佐が答えた。


『シートは?』

「まだだ、少し待ってくれ」


「下からシートが出てきますので、その四角を踏まないでください」

 プロメが床を指さして言った。床には四角い枠が6個白く書かれていて、俺たちはそれを避けて立った。

 床の四角がグンと上昇し、硬そうなイスに変形した。横にシートベルトが垂れ下がっている。


「そこに座ってシートベルトをお願いします」


 俺たちは座ってシートベルトをカチッと締めた。


『プラセオ積むぞー』

「了解だー」


 遠くでゴーンという音が聞こえ、ガクンガクンという音が近づいて来て、最後に足元でゴーンと音と振動が響いた。


『どうだ?』

「問題無しだー」


『投げていいか?』

「いいぞ、プロメは?」

「大丈夫です、やってください」

『みんな歯を食いしばれ、いくぞ』


 体にグォーンとすごい強い力が加わった。部屋がミシーと鳴った。投げていいかってことは、俺たちは宇宙船のアームに掴まれて投げられたらしいってことを体にかかる強い力に耐えながら思った。


 そして体にかかった強い力がなくなった。その瞬間、ゴゴゴゴーと遠くで振動が響いた。

 グググっと体が後ろに押し付けられた。どうやら更に加速しているらしい。


「燃焼終了!」


 少佐がそう言うと、音が止まった。


 体が無重力に浮いた。


 プロメは空中で手を忙しく動かし、何かを操作していた。


「無重力だと何かと不便なので、少しだけ安定加速します」


 体が無重力から解放され、床に足が付いた。


「床に足が着くってことは、上方向に加速しているってことね?」


 テルルがプロメに聞いた。プロメがコクリと頷いた。


「シートベルトを外していいです。ここで9時間ほど過ごします」


 プロメと少佐のシートの前には大きなディスプレイがあって、様々なデータが表示されていた。


「よし、映画タイムだな」少佐が言った。


 ディスプレイの表示が変わり、映画が流れ始めた。








 

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