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2個セット

 食堂は6人が座れるテーブルが2つあり、左右の壁にはラウンジにあったようなボタン付きの自販機が並んでいた。奥の壁は大きなモニターになっていた。

 みんなで食事タイムになった。


 食堂のボロンから食事を出してテーブルに座ると、プロメが壁のモニターにペンライトのような細長い宇宙船の内部構造が分かる図を表示させた。


「この宇宙船は、左から、スカッシウム、元素カートリッジ、居住ユニット、製造空間、ボロン、外側のボロンです」


 元素カートリッジがこの船の大半を占めていた。


「元素カートリッジって大きいんだな」

「これは船の燃料や電気の役割もしていますので、これが空になると私たちは死にます」

「そりゃ大切に使わないとな」


「でも作ります」プロメが言った。「内側のボロンで作ったものは製造空間に作られますが、この空間以上の物を作ろうとすると、居住ユニットが破壊されますので注意してください」


 そんな大きなものを作ろうとするのはプロメだけだろうと思ったが、言わないでおいた。


「次に居住ユニットの中です」


 壁に丸い円が表示された。居住区画だ。

 円の中は細かく升目に分かれていた。丸の直径は80メートル近くあり、中には様々な部屋があり、スポーツ施設や娯楽施設など、小さいが色々揃っていた。プロメの説明によれば、何か必要なものがあったら後からボロンで作って追加できるらしい。


「落ち着きましたので休みましょう。このへんが個室になってますのでご自由にどうぞ」


 プロメが図を指して言った。


 俺たちは部屋に分かれた。


 部屋はビジネスホテルのような部屋だった。小さなテーブルとイスがあったが、全てが固定されていた。部屋の隅にシャワーとトイレが一体になった狭い部屋があった。入口の扉に「無重力時は使えません」と小さく書いてあった。

 俺はベッドに横になり、ゆっくり眠った。



 ぐっすりと眠って起きると、自分が今どこにいるのか一瞬解らなくなった。

 ボーっとする頭を抱えたまま起きて部屋の外に出ると、廊下の壁に居住区画の地図が貼られていた。

 地図には管制室や倉庫やプロメのラボや、いろいろな説明書きが書いてあった。


「これってけっこう広いわよね」


 テルルが隣に来て言った。


「何で日本語なんだろう」

「これからの計画の為」

「これからの計画?」


 近くのドアが開いてプロメが出てきた。

「ねえ、ここって端から端まで何メートルだっけ?」

「内側の壁で計算すると76メートルぐらいです」


 俺は数字を聞いてもピンとこなかった。それに聞いたからって何がどうなるものでもなかった。しかしプロメはポケットからペンを出し、地図に76メートルと書き込んだ。


 図をよく見ると、外周の壁にエレベーターがあった。エレベーターは広めの廊下の突き当りだった。


「これは、どこに行くエレベーターなんだ?」

「それは下に行きます」

「下?」

「ボロンと製造空間です」

「なるほど」

「これから作らなければいけないものがありますので、一緒に行きますか?」

「私も行くぞ」

 マリーが起きてきた。


 3人はプロメに続いてエレベーターに向かった。長い廊下を歩いてエレベーターに着くと、けっこう大きいエレベーターだった。大きな工場の倉庫にありそうなやつだった。


 4人でエレベーターに乗ると、エレベーターは下降した。

 ドアが開くと、そこは暗くて広い空間だった、高い天井にはライトがいくつもあったが、黒い床まで光が届いていないようだった。エレベーターの横の壁はザラザラとしていて、石のようにゴツゴツしていた。

 


「まずはプラセオを作ります」


 テルルの前の床にオレンジの枠が光って、その中から深緑の大きな四角い箱が2つ現れた。マリーの研究室に運んだ黒いのと同じ大きさだった。

続いてその下から台車が2つ現れ、深緑の箱は台車の上に乗った。


「続いて大きなフラッシウムを作ります」

 床から長い蛍光灯のような白い棒が現れた。2メートルぐらいあって、蛍光灯より少し太い。



「続いて大気圏突入用の船を作ります」

 床から大きな石が出てきた。

 高さ3メートルはありそうな巨大な石だった。表面はゴツゴツしていて、青っぽい灰色をしていた。

「ただの大きな石に見えるな」

「そうね、石ね」

 


「これを組み立てます」

 石の下のほうがバカっと開いた。中には黒い空間があり、チカチカとライトが光っていた。中には機械が入っているようだった。

 石の開いた扉の四角い空間に、プラセオを乗せた台車が1台だけ近づいていって、台車の上の四角いプラセオがその中に吸い込まれ、石の扉は閉まった。


「トミサワさん、フラッシウムを持ち上げてください」


 俺は床に転がってる太めの蛍光灯を持ち上げた。ずっしりと重かった。


「それをあそこに入れてください」


 石の側面が、丸くパカッと開いた。俺はその中に蛍光灯を入れた。


「はい、完成です」


「これをどうするんだ?」


「地球に飛ばします」


「へー」


 天井から大きなアームが降りてきて、その大きな石をどこかに持って行った。

 床には2個セットで作った深緑のプラセオの片方が、台車の上に載っていた。


「では戻りましょう」


 俺たちはエレベーターに乗った。そして台車も一緒にエレベーターに乗った。


「これを倉庫に置いてきてもらえますか?」

「倉庫ってどこだっけ」

「エレベーターを降りてすぐです」

「了解した」


 エレベーターが開くとそこは当然ながら居住区画だった。


「中に別のプラセオがありますので、台車ごと隣に置いてください」

「了解した!」

 台車はマリーが運転した。俺もモコソで台車の運転をしてみたかったが、何も言わなかった。


 倉庫はすぐ近くにあった。扉を開けて入ると、暗くて広い空間があった。

 倉庫の隅に、台車に乗ったプラセオが置いてあって、紫と黒のプラセオが台車に乗っていた。

 マリーはその隣に深緑のプラセオを置いた。


「この黒いのが私の研究室にあったやつだな」

「この黒いので、あの研究室と連絡できるのか?」

「たぶんそうだ」

「なるほど・・・」


「戻ってご飯食べましょう」テルルが言った。



 


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