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シャトル

「このシャトルで行くけどな、少し準備する」


 少佐が車を運転しながら言った。


「こういうのって、勝手に飛ばしていいのか?」


 俺は巨大なシャトルを見上げて言った。


「本当はダメだけど、あたしの上司はもういないんだよ」

「いない?」

「この辺の起きている管理者の中で、あたしが1番偉いってこと」

「マジか」

「だから気にしなくていい。それにプロメと2人で今までに何回も宇宙には上がってるんだ」

「そうなのか」


 車は巨大な飛行機の近くにある小さなプレハブ小屋みたいなところに向かった。近づいてみると、2階建ての立派な建物でプレハブではなかった。

 車はその建物の前に停まり、少佐は中に入って行った。ついて来てもいいと言うので俺たちはついて行った。


 俺たちは少佐の後ろにくっついて建物の2階に上がった。

 2階には小さな管制室のような機械が並んだ部屋があり、俺たちが部屋に入ると機械の電源が入ってチカチカと光りはじめた。


 2階の窓からは、巨大な倉庫に置かれた巨大なシャトルの全景がよく見えた。

 巨大な倉庫には高い天井に鉄骨が張り巡らされ、そこにはクレーンが何個も固定されていた。

 倉庫の床には、壁際に大きなコンテナがいくつも置かれ、運搬用の車も何台か停まっていた。


 少佐が何かの操作をすると、車が入ってきたのとは逆側の壁がスライドして大きく開いた。

 巨大なスライドドアの後ろに隠れていた暗い空間が口を開けたが、暗くてほとんど何も見えない。


 その暗い空間から、天井のレールを移動するクレーンが、白い丸い筒を吊るして出てきた。

 クレーンはその大きな筒をシャトルの真上まで持ってきて止まった。シャトルの胴体ぐらいの太さだった。

 続いてシャトルの胴体の上が左右に開き、その白い筒は胴体の中に下ろされた。シャトルは筒がセットされると開いた背中を閉じた。


「あれは燃料だ。あとは足を下げて終了だ」


 少佐がそう言うと、シャトルを支えていた足が縮み、シャトルは床にぺったりと着いてしまった。


「いいのか?」

「何がだ?」少佐が不思議そうな顔をした。「行こう。乗り込むぞ」


 俺たちは車に戻り、シャトルの横まで移動した。1か所シャトルから梯子が降りている場所があり、そこで車を停めた。


「自分の荷物を持って降りてください」


 プロメの指示に従って俺たちが車から降りると、車は自動運転で離れた位置に移動した。

 俺たちは荷物を担いで梯子を上り、ぺったりと床に腹を着けたシャトルに乗り込んだ。


 シャトルの中には操縦席があった。ジャンボジェットのコクピットのように計器類が並び、操縦席のシートが2つ並んでいた。

 操縦席の後ろには太い手すりが床から出ていて、後ろの空間とを分けていた。後ろの空間にはシートが左右に2つずつ、それが2列。8人が座れるようになっていた。客席なのだろうか、操縦士2人に客8人ということなのだろうか。


「壁に収納ボックスがあります。モコソを外して荷物に入れて、荷物を収納ボックスに入れてください」

「モコソ外すのか?」

「はい。それが終わったら、シートに座ってベルトを締めてください」


 俺たちはプロメの指示に従った。2人の帽子型モコソはそのままだった。

 壁を見ると、太い手すりのようなパイプがいくつもあり、その隙間に収納ボックスのフタがあった。俺たちはそこに荷物を入れ、扉を閉めた。


 少佐とプロメが操縦席に座り、俺たちは後ろのシートに座って頑丈そうなシートベルトを締めた。

 ベルトは両肩と腰と、股の間から通し、へその上でロックした。ロックするとベルトは自動で強く締まり、身動きが取れなくなった。


「股間が・・・」

「うるさい軍曹」


 少佐は計器類を忙しそうに操作していた。


「おっぱいが潰れるんだが」

「うるさいマリー」


 テルルが言った。


 ズズズズ、体に振動が伝わってきた。操縦席の窓から外を見ると、シャトルが横滑りして移動しているようだった。

 シャトルは壁に開いた暗い空間まで移動した。ガツン!シャトルが何かに固定された音と振動があった。

 横の扉がゆっくりと閉まり、シャトルは真っ暗な空間の中に閉じ込められた。操縦席の計器類が暗闇に光っている。


「うお!」


 俺たちの座っているシートがウィーンという音と共に変形しだした。


「おちつけ軍曹」


 イスは縦に真っすぐに伸び、俺たちは強制的に直立の姿勢にさせられた。足の下には床があるが、股間のベルトで足には体重がかかっていない。


「なんで立つんだ?」


「ひ・み・つ。」少佐が言った。


 窓の向こうの暗い空間に、緑の小さなライトが点灯した。緑のライトは徐々に増え、遠くまで真っすぐに伸びてゆく。長い一直線のトンネルが闇の中に現れた。


「行くぞ!」


 少佐がそう言った瞬間、グン!とシャトルは加速した。さらに、グン!グン!グン!と何回もシャトルは加速していく。髪の毛が引っ張られ、顔の肉が引っ張られ、胸が強く押され、息をすることが出来ないほどの加速力が体にのしかかった。

 前に乗った真空超特急という列車以上の加速感があった。シャトルはさらにグングンと加速していく。


 グォン!体に違う方向の力が一瞬加わった。


「上昇中!」少佐が大声で言った。


 少ししてグィン!と回転するような力が体に加わった。


 シュン!いきなり静寂に包まれた。ガタガタと悲鳴を上げていたシャトルのボディーの音が止まった。

 次の瞬間、ジュボォォォォォという振動と共に、シャトルはもう1度加速した。


「燃焼終了まで3,2,1、終了!」


 シャトルはまた静寂に包まれた。


「軍曹をジェットソン!」


「何?ジェット・・・?」


「なんでもない」少佐が言った。


「終わったのか?」


「ああ、宇宙だ。お疲れ様」


 汗が玉になって俺の目の前を浮いていた。



 

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