岩盤
「そろそろ出発しましょう」プロメが言った。
どうやら宇宙船の材料になる小惑星が準備できたらしい。
「軍曹、今度の移動は少しだけだ。食料は必要ない」少佐が言った。「水分とおやつ程度でいいぞ」
「そりゃ、ありがたい」
俺たちは借りていた部屋を片付け、荷造りをした。
準備を終えてダイニングに集合すると、プロメリの体の3人が見送りに来てくれた。
「俺たちモ、イツカ宇宙に旅にデルつもりだ」
「タンパク質ノ体ハ、スグニ死ぬカラ気をツケロ」
「宇宙だと、トクニナ」
「では皆さん、行ってきます」プロメが少し緊張した顔で言った。
俺たちは天文台の黒い3人に別れを告げ、駐車場に下りた。
駐車場には乗ってきた救急車が停まっていたが、俺たちは救急車から普通の車に乗り換えることにした。隣に停めてあった黒い車、テルルと俺が旅したのと同じ車種の車だ。
俺たちは車の後ろに乗り込み、少佐が運転した。
車は上ってきたのと同じエレベーターで地下まで下り、来た時と同じトンネルを通って駅前の大通りまで戻った。真空超特急が停まる駅だ。
駅前の大通りにも相変わらず人の気配は無かった。
車は大通りを少し走り、別の交差点を曲がって別のトンネルに入った。
トンネルは緩やかに右に左にカーブしながら続いていた。車はかなりの時間その中を進んだ。
「宇宙ってのは、打ち上げロケットで行くのか?」
昔テレビで見たスペースシャトルの打ち上げを思い出しながら聞いてみた。
「地球のとは少し違うな」少佐がハンドルを握りながら答えた。「ギューンって登るんだよ」
「私たちが今向かっているのは、このトランで一番高い山脈です」
「天文台があったさっきの山よりも高いのか?」
「一番高い山の山頂は、ほぼ空気がありません」
「酸素が無いんじゃなくて、空気が無いのか?」
「そうです。酸素ではなく空気がありません」
「標高を聞いてもいいか?」
「8万メートルぐらいです。大昔に作られた巨大クレーターの縁です」
「クレーター・・・」
「遠い昔に巨大隕石の衝撃で、岩盤がほぼ直立し、そのまま固まったとされています」
「岩盤って岩盤浴の岩盤の岩盤か?」
「何を言ってるのか良く分かりませんが、その岩盤の中を地下から斜めに上昇して宇宙へ出ます」
「こっちも何言ってるか良く分からん・・・」
「ついたぞ」少佐が言った。
車の前を見ると見慣れたゲートがあった。緑とオレンジのライトが点灯している。車はそのゲートを通過した。
ゲートの中には、天井の高い真っすぐな道が続き、その両脇に10階建てぐらいの高さの大きなレンガの壁が続いていた。
車はそのレンガの壁に挟まれた道をしばらく進んだ。
巨大なレンガの壁には窓は無く、100メートル置きぐらいに小さな入口の扉があった。その小さな入口は、レンガの壁の巨大さに目が錯覚しているだけで、実際には大型トラックが楽に通れるぐらいの大きさがあった。
ストルン少佐はハンドルを切り、車はその入口のひとつからレンガの壁の中に入った。
入口にはトラン語で大きく何かが書かれていた。おそらく数字だ。
レンガの壁の中に入ると、薄暗い照明に照らされた広大な空間に、薄い水色の巨大な飛行機が1機だけ置かれていた。
ジャンボジェットのように大きく、形はスペースシャトルを少しスリムにしたような姿をしていた。
胴体と翼は一体化していて、下側に黒いセラミックパネルみたいなものがびっしりと張り付けられていた。3か所から車輪が降り、巨大な胴体を支えていた。
胴体の後ろには巨大なロケットエンジンのノズルが3個生えていた。




