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列車

 再びエレベーターのドアが開くと、白いタイル張りの地面があった。その空間の向こうに、巨大な駅の改札が見えた。


 車はエレベーターを降り、外に出た。

 駅の構内のような空間だったが、何もかもが縮尺が大きかった。その空間に銀色に存在感を示す大きな改札は、車が通れる大きさで、それが4つ並んでいた。


 車はゆっくりと改札に進んだ。俺たちはそこでスキャンされ、認識番号を確認された。


「バッタン!」大きな音を立てて改札の扉が開いた。


「何だか全てがでっかいな」


「そうか?見慣れてるから気にならないけどな」


 改札を抜けると、下に向かうスロープが何本かあった。車はその中の1本を下った。


 スロープを下ると、そこは大きな駅のホームだった。そこには平らな一直線の空間があった。

 天井からは、電光掲示板が吊るされていて、次の列車の到着時刻が表示されている。


 ホームの右側はコンクリートの壁で、左側に列車が到着するらしかったが、そこには分厚い透明なガラスがあった。ガラスの向こうに隣のホームの風景が歪んで見えている。


「このガラスは何だ?」

「この向こうに列車が来る」

「列車が来ると、ガラスは消えるのか?」

「消えないよ、開くよ!」

「そうか・・・」


 車はホームにオレンジで書かれた「ここに並びなさい」という線に沿って停車した。


「少し時間があるので降りましょうか」


 俺たちは車を降りた。


「うーーーーん」


 俺たちは伸びをして体を伸ばした。やっと長旅が終わった。かなりヘトヘトだ。

 狭い空間でじっと耐えるのが、こんなにもキツイものだとは思わなかった。


 俺はホームをブラブラして足を動かした。ガラスに近寄って下を見ると、線路のようなものが見えた。ガラスは線路を四角く覆っていた。


「左から来るからな」


 少佐の指さす方向を見ると、ホームの向こうに丸いトンネルが見えた。だがトンネルは黒い頑丈そうな扉で閉ざされていた。


「なんで閉まってる?」

「うーん、空気が入らないように?」

「空気?」


「なあ、プロメ」少佐は振り向いてプロメに話しかけた。「この列車の名前を日本語にするとどうなる?」


「真空超特急」プロメが答えた。


「シンクウチョウトッキュウ?」俺は謎の名前を繰り返した。


 その頑丈そうなトンネルの扉を見ると、扉はゆっくりと開き始めていた。


「そろそろ来ます。車に乗ってください」


 プロメが俺たちに言い、俺たちはその指示に従った。


「少し忙しくなるけど頑張れよ」

「忙しい?」テルルが不思議がった。


 無理もない、列車に乗るのに忙しいって何だろうか。


「荷物は全て収納扉の中に入れてください」プロメが指示を出した。


 俺たちはバッグを救急車の収納扉の中に入れ、ついでに床に散らかったゴミをゴミ箱に入れた。



 車のフロントガラスの向こうに列車が現れた。


 列車は四角くて角ばっていて、まったく速そうに見えない黄土色の車体だった。

 新幹線というよりコンテナを積んだ貨物列車のように見える。それよりは全体的に少し大きい。


「これ、速いのか?」

「速いな」


 列車はゆっくりと停車した。

 列車が止まると、ホームの分厚いガラスの数か所が、バシューーーという大きな音と共に開いた。

 開くと同時にガラスが全て白く曇った。


 俺たちの前に停まった車両は窓もない車両で、古ぼけた大きな扉がスライドして開いた。そこからホームまで車用の短い橋が伸びた。


 車はその橋から列車に乗り込んだ。


 車内に入ると、床に駐車する目安であろう白い枠が書かれていて、車はそこに合わせて駐車した。


「ガン!」車がロックされる音がした。


 タイヤではなく、車のフレームをロックしたような音だった。




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