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絶対だ

「いっぱい食べて、ゆっくり休んで、それからにしましょう!」テルルが大きな声で言った。



「いや、今回のでかなりの時間を無駄にしてしまったからな、ここまで来る間にプロメと相談して、新しい作戦を考えてある」少佐は手を挙げてテルルの発言を止めた。


「新しい作戦?」


「とても楽な作戦だ。とても楽で、とても暇で、とてもつまらないが、まあ急がば回れってやつだ」

「遠回りするのか?」

「一番安全なのは地上を自動運転で窓を隠して行く方法だと思うのですが、それだと時間がかかりすぎます」

「どうするんだ?」

「救急車で軍用列車の駅まで行く」

「警察がウロウロしてる街を通るんだろ?」


「警察は、サイレンを鳴らした救急車を絶対に停めない」

「絶対か?」

「絶対だ」少佐が自信を持って言った。「そしてあたしたち5人は救急車の後ろに潜んで、1回も外に出ない。外も見ない」


 救急車の後ろのあの空間に5人で隠れて、大きな街5個分の長旅、救急車の中で数食分の時間を過ごすってことらしい。


「トイレはどうする?」

「トミ、私たちの旅した車と救急車は同じ車種なのよ」テルルが説明してくれた。

「同じ車種?」

「救急車は大きく改造してあるけど、私たちの車と同じで、トイレは付いてるのよ」

「そうなのか・・・」



「よし!」マリーが勢い良く立ち上がった。「休みたきゃ車の中でいくらでも休めるって事だな!」

「そのとーりだ!」

「食料をバッグに詰め込んでください」


「救急車は一般車よりもスピードは出せるが、たいして速くない」少佐が説明した。「長旅だな」

「甘いものもいっぱい持って行っていいぞ、ストレス解消には甘いものだからな」

 マリーがボロンからバッグを取り出して言った。



 女性陣が盛り上がっているのを俺は微笑ましく見ていた。


 どうやら俺は1回死んだらしい。そしてやり直すらしい。まるでゲームみたいだ。セーブポイントからやり直し。


 マリーがどこかから救急車を1台、地下10階の入口まで持ってきた。


 俺たちはその車に食料や着替えを積み込んだ。救急車の後ろには、俺が乗った時と同様に、真ん中に硬いベッドがあり、その周りにイスが6個あり、それを機械が囲んでいた。

 救急車の中の収納ボックスには、酸素ボンベや謎の医療道具が入っていた。俺たちはそれを全て取り出し、代わりに食料と着替えを詰め込んだ。



「しばらくはあの恐怖の操作はしたくないんだ、慎重に行けよ」


 留守番のマリーが子供を抱きかかえながら見送りに出てきてくれた。子供は少し重そうだった。


「了解した。軍の駅に辿り着けたら連絡する」

「無茶するなよストルン」

「連絡が来なかったら・・・」

「分かっている。行ってこい」


「ハイハイデキルヨウニナッタンデチュネー」俺は子供の小さな手をチョンチョンして言った。

「キャハハ」子供は笑っただけだった。



 俺たちはマリーと子供に別れを告げ、救急車に乗り込んだ。


 目的地を設定し、運転は基本自動運転。サイレンを鳴らしながら制限速度を少しオーバーして走る。俺たちは外を見ない。そんな作戦だ。


 運転席と後ろのスペースにはカーテンがあり、後ろのスペースには窓は無い。6個あるイスに俺たちはとりあえず腰かけた。


 外の状況に関しては、プロメが外部カメラにモコソを接続してチェックする。


 救急車がサイレンを鳴らして発進した。


 俺たちの長い暇な旅が始まった。



 

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