名前
2人はそれからしばらくジムに通って体を徐々に慣らしていった。俺はそれに付き合っていた。
2人は体を動かし、肉を食べ野菜を食べ、また体を動かし、どんどん体力が回復していった。
ある時マリーから呼び出された。行ってみるとテルルと2人で揺りかごの中の赤ん坊をあやしていた。
「どうした?」
子供は少し大きくなったように見えた。
「どうしたじゃない。名前を考えた」
「ああ、そうか。名前か・・・」
「私がいくつか考えたからトミーが決めろ」
「俺がか?」
「イヤか?」
「いや、どんな名前だ?」
マリーはモコソ眼鏡を操作して名前を読み上げた。メモ帳だろう。
「マリトミ、トミマリ、ヨシオ、ピエール、アキラ、ピカード、ウーピー、ジャスミン、ケリー、マユマユ、マツコ、トランプ、プーチン・・・」
「ちょっとまてまてまて」
「なんだ?」
「もっとちゃんと考えよう」
「考えたぞ、地球人っぽい名前だろうが」
「いや、そうだが、そうじゃなくて、なんていうか・・・」
「気に入らないのか」
「トラン人の名前にしてくれないかな・・・」
「なんでだ、つまらんぞ」
「キュリウムなんてどうかしら」隣でやり取りを聞いてたテルルが言った。
「どういう意味のトラン語だ?」
「天才」
「キラキラネームだな・・・」
「いい、キュリウムにしよう。めんどうだ」マリーがスパッと決定した。
我が子の名前がキュリウムに決まった。キュリウムは揺りかごの中で、すやすやと眠っていた。
「マリー、テルルのほうはどうなんだ?」
「子供のことか?」
「ちゃんと子作りしてるぞ」
「ちょっと、もう少し言い方を気にしてよ」
「大丈夫だ、ちゃんと機能してる。機能はしてるが、妊娠はしてない」
「問題か?」
「いや、問題は無い」マリーは少し考えてから言った。「テルルの子宮は出来立てだ。いわば少女の子宮だ。だから、焦らなくていい」
「だから言い方を気にしてってば!」
テルルが顔を真っ赤にして怒った。
「それにだ、もう少ししたら宇宙を目指して移動する」
「宇宙?」
「みんなで宇宙だ」
「子供はどうする?」
「子供は連れて行かない」
「誰が面倒を見る?」
「ちゃんと考えてある、大丈夫だ」
この女性陣は俺に全てを話さないことが多い。
本気で話されても分からないことが多いし、俺の行動を読んで話すタイミングを計算しているようにも見える。
「宇宙に行って何をするって聞いたら教えてくれるのか?」
「地球を目指す」
「なんで?」
「秘密だ」
「やっぱりな・・・」




