ウ・・・
「記憶ってどうなってるんだ?」
「記憶?」
「だって、スキャンしたデータで体を作ったら、スキャンした時のマリーになるんじゃないのか?」
「ああ、それはな、作った瞬間に古い体はバラバラになって肉体に入り、脳を乗っ取ってるらしい」
「らしい?」
「プロメの考えだした方法だな。このカプセルタイプのボロンじゃないとダメらしいが、私も難しすぎて解らんのだ。だいたい、あの金属の体の仕組みも分からん」
「天才のなせる業か」
「肉の体に戻れたんだから何でもいいさ」
「テルルは最初、同化させたモコソを使ってたけど、再生で起きた後は使えなくなってた。体の中に金属はまだ入ってるのか?」
「いや、眠っている間に徐々に取り除いた。ゆっくりと血を循環させながらな。DNAを書き換えて骨もカルシウムに変わってる」
「骨折する体になったってことか」
「うーん、骨折しにくい頑丈な骨の人ってDNA改変は残っているから、無理しなければ大丈夫だろう」
「マリーの中の金属は?」
「私はな、徐々に体外に排出した」
「どうやって?」
「そりゃウンコだ」
「ウ・・・」
「ウ・・・」
「ウ?」
「ウマレル」
「はい?」
「テルルを呼べっ」
俺はテルルの部屋に走った。
テルルと2人でマリーの元に戻ると、研究室には謎のおそらく全自動分娩台があった。マリーはそれに掴まって痛みをこらえていた。
俺はテルルに部屋を追い出され、廊下でソワソワして待たなければならなかった。
親としてとかパパとしてとか父としてとか親父としてとか、自覚が無いのをどうすればいいのかグルグルと考えていた。
やがてテルルが扉を開けた。部屋の中には赤ん坊がいた。
赤ん坊の泣き声で2人が起きた。ストルン大佐とプロメが裸で起きた。
俺はまた部屋を追い出された・・・
「おまたせー」
扉の前でしばらく待っているとテルルが扉を開けてくれた。
部屋の中に入ると、小さな赤ん坊が白いタオルみたいのに包まれていた。それを汗だくのマリーが胸に抱いていた。
「健康そうだ。実験は成功だな」
マリーの発言は、俺に父親とか責任とか気にしなくてもいいぞという気配りが込められていて、俺は少し心が苦しくなった。
「俺もこいつを愛していいんだろ?」
「もちろんだ。父親だからな」
赤ん坊は男の子だった。赤ん坊の小さな手には、さらに小さな指が5本あって、それが動いていて、そんなことに感動して涙が出た。
「感動してるところ悪いんだけど、私はマリーと赤ちゃんで手が離せないから、2人を食堂まで連れて行って」テルルが2人を指して言った。
隣には起きたばかりの少佐とプロメが、赤ん坊を見ながらフラフラしていた。
「ちゃんと消化に良さそうな食べ物をゆっくり食べさせてね」
「大丈夫だ。2人は歩けるか?」
「はらへったー」少佐が言った。
俺は2人をファミレスに連れて行った。
「あ、モコソが・・・」プロメが料理を注文できずに固まった。
「そうか、こりゃ不便だな。モコソを忘れたら飯も注文できないな」
「俺が代わりに出すから、好きなのを言え」
2人に注文を聞いて俺が操作した。
「軍曹も父親になったか」
「赤ちゃん可愛かったですね」
「健康に育ってくれたらそれでいい」
「マリーが母親だからな、病気なんてちょちょいのちょいだ」
「そりゃ心強いな」
2人はクリームシチューのようなものを注文して、俺もついでにそれを食った。
中には野菜と一緒にホタテが入っていた。食べてみると、強いバターのような風味がした。
「2人もモコソを使う時はメガネをするようになるのか?」
「俺たちは軍用の帽子タイプだ」
「帽子?」
「帽子の中にいろいろ内蔵されてて、シャコンって上からモコソゴーグルが出てくるんだ」
「それを私がカスタムしてますので、いろいろ出来ます」
「いろいろって?」
「軍事機密です」
プロメは世界最大のボロンを動かして核ミサイルから宇宙船まで作れると言っていたのを思い出した。宇宙船を作る予定だと言っていたような気がする。これからどうするんだろうか・・・
「子供が生まれて、これからしばらくは子守りが大変そうだ。それに2人もリハビリしないとな」
「リハビリ?」
「長期間あの中で眠ってたんだ。筋肉が衰えてる。テルルも大変そうだった」
「俺たちは体のつくりが特別だからな、そんなに時間はかからないと思う」
「プロメもそうなのか?」
プロメは、運動神経はすごかったが、おとなしそうな性格に見える。どっちかというと、外見は病弱に見えるぐらいだ。
「私の体は少し裏技を使ってますので・・・」
「プロメは俺より強いぜ、鍛えればな」
「どういうことだ?」
「生命力がありすぎて、何もトレーニングしなくてもサバイバル能力の高いテレビディレクターの、ちょっと異常なDNAに変えてますので」
「テレビのデレクターってこの星にもいるのか・・・」
「これはこれで病気らしいぜ」
「大丈夫なのか?」
「カロリーを取れば問題ありません」
「2人とも少しのリハビリでいいってことか」
「そういうことだ。軍曹を鍛えてやろうか?」
「なんでそうなる・・・」




