シルヴァリエ家のお茶会にて。
衝撃的な再会から更に月日が流れた。
今年で私も10歳。
お披露目会から五年経ち、お茶会デビューの歳を迎えたわけだ。
あの再会から、私とカーティスはお互いの家をよく行き来するようになった。
というのも、両親同士の仲がよく、仕事の都合もあってお互い顔を合わせる機会が多かった為、無理を言って連れて行って貰ったりしていたわけなのだけど。
「しかし、アーティリア嬢はうちのウィルを随分気に入ってくれているようじゃないか」
と、本人を前に言い放った男性はカーティスもとい、ウィルフレッド・クロリスの父親、ディセント・クロリス・シルヴァリエ侯爵その人だった。
気に入っている?
間違っていらっしゃいますねシルヴァリエ侯。
気に入っているのではなく、単純に愛しているのです。
と言うのはまだ時期尚早かな、と思うので。
「初めて出来た、同じ歳の大切なお友達ですから」
等と適当に誤魔化しておく。
今日はというと、私達はシルヴァリエ侯爵の屋敷に来ている。
さっきのような会話を楽しみつつティータイムと言うわけだ。
とは言え、この後父親達は仕事の、母親達は母親で談笑を始めるので、私は従者のジルを連れて、カーティス、いや、ウィルは執事を連れてお互い中庭に行きティータイムの続きをするのだ。
ああ、なんて平和的で甘美な時間なのだろうか。
子供同士の姿とは言え、かつて前世で愛しあい、しかし結ばれる事は無く、それでも再び出会い、こうやってお互いの顔を見ながらお茶を飲みお菓子を食べている。
いつまでもこんな時間が……。
うーむ、最後まで言うと、何か良からぬ事が起こりそうね、これ以上は考えないようにしましょう。
「お嬢様、お加減がよろしくないのですか? 先程からその、表情が……」
いけない、ウィルと対面しているとつい嬉しくなって頬が緩んでしまうわ。
それを悟られないように平静を保とうとしたんだけど、私どんな顔してたのかしら。
「だ、大丈夫よジル、何でも無いわ」
「本当に大丈夫かいアーティ、今日はちょっと暑いからね」
ウィルの言葉に私は首を横に振る。
「大丈夫、本当に大丈夫よ」
「そう、なら良いんだけど」
ウィル、五年前出会った時は本当にまだ幼い子供だったけど、10歳になって早くも凛々しさが出てきた。
将来、美男子になる事に違いないわね。
そうじゃなくても、魂がカーティスのままなら醜男だろうと私は愛する自信があるのだけど。
「そうだ、今日は僕から大事な話しが有るんだった」
「大事な話し?」
はて、近々何かあったかしら、お茶会デビューの日はまだ少し先だし、学園への入学はまだまだ先の話しだし。
特に思い当たる節が無い私は手元のアイスミルクティーを口に運び一口含む。
「僕と婚約してほしいんだ」
「ブッ!!」
「あう」
突然のウィルの言葉に口に含んだミルクティーを盛大に吹き出してしまったわ。
ああ、ごめんなさいウィル。
私のせいでウィルがミルクティーまみれに。
「ごめん、タイミングが悪かったね」
「本当よ! なんてタイミングでプロポーズしてくるのよ!?」
虚勢を張ったのはもちろん照れ隠しの為です。