その55 『暗示とは』
「おぉ! 思ったより広いし、綺麗!」
今しがた部屋に駆け込んで行ったブライトの歓声が、喧しい。
マーサにリュイスと順に部屋の中へと入っていくので、遅れて長い廊下を歩いていたイユも重い足を無理に動かすしかなかった。
そうしてようやく辿り着いた部屋は、殆どイユのいた部屋と代わり映えがしない。淡い木の色の壁紙に、つやつやとした光沢のある床。白い掛布団が敷かれたベッドに、壁に固定された木のテーブル。配置まで同じだった。唯一、天井まであるガラス扉の棚と衣装棚の位置だけが逆転している。
確かに、マーサの手入れが行き届いているらしく、清潔感はある。今まで人がいなかったのが嘘のようではあった。
けれど、その部屋の真ん中でくるくる回って喜んでいるブライトは、間違いなく本に襲われ兵士に追われた結果汚れている。そのせいで折角の綺麗な部屋が、ブライトが動く度にどんどん汚されていくかのようだ。
汚れの元凶たるブライトは、イユの考えなど微塵も読んでいないようで、イユたちを振り返ってにっと笑った。
「まるで、客室だね」
その言葉にはっとする。イニシアで泊まった部屋と似ていることを思い出したからだ。
「ベッドも飛び込みやすくていいね!」
更にブライトは訳の分からないことを言いながらベッドへとダイブする。走ったりくるくる回ったり、挙句の果てに飛び込んだりと、足の怪我はもう良いらしい。
掠り傷という言葉を思い出して溜め息をついたのはイユだけだった。
「久しぶりに使う部屋だから確認しますね」
と告げて、マーサは浴室に入っている。
「ブライト。杖を渡してもらってもよいですか」
その時間を利用してか、リュイスはブライトに声を掛けている。
「いいよ。むしろ今まで取り上げてなかったのが不思議なくらい」
ブライトとリュイスのやり取りを聞きながら、イユはテーブルに近付き壁に備え付けられていた取っ手を引っ張った。椅子の準備をしてその場に座る。
「はい、確かに」
「間違えて壊したとかはなしだよ」
テーブルの上に、二本の杖が置かれる。木でできた短い杖だ。白く塗られているが、一部に小さな宝石が埋め込まれている。先端には白いチョークが取り付けられていた。法陣を描くためのものだ。
ブライトから特に何かを言い出すつもりがないのを見て、口を挟んだ。
「他に描けるものを持っていないの?」
イユの言いたいことがわからなかったらしい、リュイスに不思議そうな顔をされる。
「魔術師は描くものさえあれば、法陣を作り出せるのよ」
イユは異能者施設で何度か魔術師がチョークで法陣を描いているのを見ている。法陣を描ければ、魔術など使い放題だ。
ベッドで足をぶらぶらさせたブライトと目が合った。
「よく知っているね。でも普段持ち歩いている予備のチョークは追われたときに落としちゃったんだよ。確認してごらん?」
ベッドから立ち上がったブライトがバンザイをする。それをみたリュイスに視線を寄越された。
「何よ」
「いえ、その、お願いしても良いですか」
「リュイスがやればいいじゃない」
イユでは信頼されていないだろうと思っての発言だったが、眦を下げて困った顔を向けられる。
渋々席を立った。
リュイスが確認すれば良いのにと思うが、抵抗感があるらしいと気がついたからだ。リュイスに代わりブライトの身体を確認する。服のポケット、杖を格納する袋、靴も脱がせてみせたが、確かにチョーク一本見つからない。
「この部屋にもチョークやペンの類はなかったはずですよね」
戻ってきたマーサに、リュイスが確認をいれる。
「えぇ。用意していないわ」
それを聞いてひとまず安心した。
「お湯はちゃんと出ていたし、タオルも用意しておいたから、好きなときにお風呂を使って下さいね」
部屋の確認が終わったらしい、マーサからの説明がある。
「マーサ、ありがとうございました」
リュイスが礼を言うと、ブライトも靴を履きながら
「ありがとー!」
と声を上げる。
「その、一つお願いになるのですが、クルトを呼んで来ていただくことは可能ですか。扉の鍵を頼みたいのです」
リュイスの言葉に、マーサはにっこりと笑みを浮かべる。
「えぇ、もちろんよ。ブライトちゃんも、何か入り用があったら遠慮なく言ってね」
マーサが部屋を出ていくのを見送ったイユは、きょろきょろと部屋を見回しているブライトへ視線を向けた。ブライトの目線は少ししてリュイスに固定される。
「うーんと、あたしはここで待っていればいいのかな?」
「はい。さすがに自由行動は認められないので……」
クルトに扉の鍵を頼むということはこの部屋に監禁という形になるのだろう。部屋には浴室にベッドにと必要なものは揃っている。相変わらず、セーレの待遇は良いようだ。
ブライトも嬉しそうに再びベッドに飛び込んだ。
「やったぁ! 快適!」
ごろごろと寝転がる様子はまるで子供だ。しかも、ふいにぴたっと動きを止め、残念そうな顔をリュイスに向ける。
「これなら寝ながら本が読み放題なのに……」
本を広げる仕草に、イユは呆れて何も言えなくなった。魔術書を持って来いとは、図々しいにも程がある。
「いえ、それはさすがに」
「えぇ? じゃあさ、魔術書じゃなくて何か別の本とか」
「それも、ないです」
困り顔のリュイスを見て、イユはブライトに言ってやった。
「セーレは図書館じゃないわよ」
それほど本が読みたいなら、ダンタリオンに戻ればよいのである。
暫くそうした他愛ない会話をしていると、ノック音が聞こえてきた。
「はーい。どなた?」
すっかり客気取りのブライトが返事をする。
「クルトだよ。って、なんかもう打ち解けすぎだね」
ベッドでごろごろと寝転がるブライトを見て、部屋に入ってきたクルトからそう感想がある。
少なくともこれから監禁される人間の態度ではないと、イユも内心で同意を示した。
「お疲れ様です」
「疲れた、疲れた。リュイスも意外と人使い荒いし」
「すみません」
クルトの言葉に謝りつつも、リュイスはあまり気にしていない様子である。二人のやりとりより、イユとしてはクルトが手に持っている見たことのない金具が気になった。
「それ、何なの」
クルトに金具を持ち上げられて、イユの視線が金具を追う。鎖のような見た目だが、両端に四角い装飾がある。クルトが少し力を入れると鎖の途中にあった部品が外れ二つに分かれた。片方には鍵穴が、もう片方には鍵のような出っ張りが覗いている。
「鍵。外から閉められるように」
クルトの説明に、これがリュイスの頼んでいた鍵なのだと合点がいく。扉の鍵では内側でしか閉められないので、部屋の外側に、持ってきた金具を取り付けるつもりのようだ。
「イユの場合は見張りがついていたけど、それはイユの異能があると頑丈な鍵でも力任せに開けられるからでしょ。魔術の使えない魔術師相手なら、外から鍵を取り付けるだけで良いんだよ」
詳しい解説をされておずおずと頷いたイユに、
「つまり、イユは手がかかるんだね」
とブライトから口を挟まれる。
「私に喧嘩を売っているつもり?」
思わず睨みつけたが、どこ吹く風と流されてしまった。
「えぇと、とりあえず取り付けるから待っていてね」
二人のやり取りに戸惑った顔を浮かべたクルトが、早々に退散して部屋の外へと作業しに行く。
部屋に鍵を掛けられる側のブライトは
「どうぞ」
と明るい返事をし、ベッドで再びごろごろし始めた。その態度だけを見ると、逃げ出すつもりは皆無のようだ。
改めてできた待ち時間に、イユは口を開いた。今この場にレパードはいない。腹の立つ魔術師だが、何かしら聞いておくとしたら今しかないのだ。
「ブライト。聞きたいことがあるのだけれど」
ブライトが顔を上げて、イユに視線を向けてくる。
「暗示は……、記憶を読まないと本当に解けないものなのかしら」
掛かっているかどうかは、記憶の有無で判断する。以前ブライトからあった説明では筋が通っているように聞こえた。
だが、ブライトのことだ。実は掛かっていようが掛かっていまいが、本当は簡単に解く方法ぐらいあるのかもしれない。聞かれていないからというだけで答えていない可能性は十分にあると思ったために、確認をしたくなったのだ。
「そうだねぇ。よっぽど有能な魔術師なら、さらっと解いてくれるんじゃない」
そうして繰り出された回答に、イユは口をあんぐりと開けた。代わりに、責め口調でリュイスから発言がある。
「それが本当なら、イユさんの過去を見る必要はないじゃないですか」
「いや……、あたしは派手な魔術は得意なんだけれど、そういう方面には弱くてね」
つい、反論したくなる。
「あんた、天才魔術師とか呼ばれていなかった?」
「うん。けれど、解除は専門外だから。それにあたし、一応まだ準魔術師ね」
頭が痛いどころではない。こめかみに手を当てつつ、イユはブライトを睨みつける。思いつきで聞いて正解だった。まるで詐欺師だ。魔術師はこれだから信用できない。
「まさか、解除ができないとか言うんじゃないでしょうね?」
「いやいや、専門外でも一応天才だから? できるにはできるよ」
何故か自分自身のことに疑問形で答えがある。追及したいことが増えて仕方がない。
「『準魔術師』とは何でしょうか」
リュイスも同じ気持ちだったのか、すかさず質問が飛ばされる。
「大したことじゃないよ。魔術師は貴族でもあるから、家柄も関係する。家を継いでいないうちは準魔術師。ついでに破門された場合も魔術師の位を剥奪されて準魔術師になるかな」
知らない知識だった。つまり、魔術師は魔術が使えるだけでは魔術師とは呼べないのだ。
「つまり、一家の代表者だけが魔術師を名乗れるということよね」
その通りだとブライトから肯定がある。
「そう、だから貴族として認められない限りは魔術師にはなれないよ。ただし、魔術を使えることが魔術師である前提条件だからね。跡継ぎがいなくなったり跡継ぎが魔術を使えなかったりするとその一族の魔術師の位は剥奪される。このあたりはイクシウスだろうがシェイレスタだろうが事情は変わらないね」
魔術師の位が上がれば、生活が保障され領土をもらえるらしい。つまりは王族と同じ待遇だという。
イユには雲の上の話で、途中からちんぷんかんぷんになった。訊けば訊くほど知らない情報が増えてくるだけなので、耳を塞ぎたくなる。
「それで、一家代表者ではないブライトは準魔術師で天才だけど、暗示をどうにかできるかは怪しいというわけ?」
話を反らされないように、元の話へと戻す。油断すると、初めてダンタリオンで会ったときのように、無駄に時間稼ぎをされる展開になりかねないからだ。
イユの胡乱な目に気が付いたのか、ブライトが慌てたように弁明しだす。
「怪しくないって。暗示なら心配いらないってば。大抵暗示って記憶を操作して起こすことが多いから、その修正をすれば、暗示を解いたことになるんだって。通常の魔術師もそうやって治すと思うし。パッと見てすぐ治せるような魔術師はあたしが知っている限りだと一人しかいないよ」
なんとなく、その弁明の先が見える。
「その魔術師はシェイレスタにいるとか言い出すんでしょう」
そして、シェイレスタに行きましょうという話になるのではないか。どうにもブライトはイユをシェイレスタに連れて行きたくて仕方がないらしい。
ブライトの思惑は何なのだろう。
「よくわかったね。けれど、あたしはシェイレスタの魔術師だからシェイレスタ以外のことを知らないのは普通じゃないかな」
会ってから数時間しか経っていないが、ブライトの話は突っ込みどころがあるようでいて必ず言い訳が用意されている。それがどれほど無理やりなものだとしても、ブライトの話の真偽が分からない以上、イユとしては言及がしにくい。
ふいにブライトが納得したような顔をしてみせた。
「うーん、あぁ、そっか。暗示についてよくわかってないからそんな不信な顔になるんだよ。説明するよ」
確かに、イユたちは暗示についてよく知らない。知りたかった知識なだけに、何か言われたら反論してやろうと開きかけていた口は閉じてしまった。
「そもそも暗示をどこで知ったか聞きたいぐらいなんだけれどさ」
リュイスをちらっと見ると、頷き返された。聞ける話は聞いておきましょう、ということらしい。イユとしても異論はない。
「正確には暗示とは言わないんだよね。君たちが言っている内容が多分これのことだと思っているんだけれど」
ブライトの言う『これ』には、特に名称はついていないらしい。ただ、暗示と思われる現象についてブライトなりに解釈すると三種類に分かれるというのだ。
「一つは、感情の操作」
「感情?」
訝しむイユに、ブライトはぐるんと身体を転がして、ベッドから起き上がった。そうして足をバタバタとしながら、説明を始める。
「たとえば、『好き』という感情を『嫌い』に書き換える。『愛しい』という感情を『憎い』という感情に書き換えるとか、かな。感情を向けている人の対象を変えることもできるよ。本当はマーサのことが好きなのに、リュイスのことを好きに変えちゃうとか」
あっけらかんと言われたが、具体的な内容を聞いてぎょっとした。イユが魔術師に抱えている感情を、もし『忠誠心』へと書き換えられたとしたら……、想像するだけで悍ましい。
「もう一つは記憶の操作」
ブライトは左手でピースしてみせる。二番目の話をしていると言いたいようだ。
「これは、本人の記憶にある出来事を、全く違うものに書き換えることかな。たとえば、イユは今日のお昼何を食べた?」
急に振られて、戸惑った。
「パン、だけど……」
「その記憶を書き換えて、ご飯を食べたことにしたりそもそも食べていないことにしたり、かな」
イユの記憶のなかの猫の形をしたパンが、ライスに化ける。
「そんなことをして何か得があるの?」
よくわからずにいると、リュイスから口を挟まれる。
「いえ、かなり危険だと思います。僕はブライトさんから杖を取り上げていないのに、僕の記憶では杖を取り上げたことになるということですよね?」
机の上に転がる杖を思わず見やる。この杖を取り上げたと思いこんで、机の上に置きっぱなしになったら……、ブライトは魔術を使いたい放題になる。
「やっぱり、こいつをロープでぐるぐる巻きにして床に転がしておいたほうが安心じゃない?」
イユの言葉に、ブライトが叫んだ。
「えぇ、そんな殺生な! わざわざ不利になる説明をしているんだよ? その思いを少しでも考慮して?」
両手を合わせて懇願されたリュイスが、視線を反らして答える。
「一応、縛り付ける気は今のところはないですので……」
さすが、セーレ。人道的である。
イユは溜め息をついた。今のところは、というのはレパードが考えを改めるまでは、ということだろう。リュイスがブライトのことを見ているうちは、きっとぐるぐる巻きになった魔術師の姿は見られまい。
素直に喜んでいるブライトは、今度は三本の指を立てた。
「そして、最後が本人の記憶のないところで命令や指示をだしておくというものかな」
これまた、危険な魔術である。
「たとえば、『手紙を出しておいて』と伝えると、掛けられた人は言われた通りに手紙を出してくれる。けどね、手紙を出したことも『手紙を出しておいて』と言われたことも覚えていないんだよね」
説明を受けたイユは、思わず自分の腕を擦った。知らない間に魔術師の指示に従っている可能性があると思うと、鳥肌が立ったのだ。
「ちなみに、二番目のは記憶を覗いたときにおかしくなっている部分を修正してあげればよいんだ。残りは、掛けられた記憶があるかどうかを探って、掛けられていた場合はその魔術を打ち消してあげれば解けたといえるかな」
解除方法の説明もされたが、イユの心配は収まるどころか膨らむばかりだった。
「魔術師たちは何故こんな危険な魔術を作ってしまったのですか」
全く同感なリュイスの質問に、ブライトは困ったように返す。
「どうしてって言われてもねぇ。ただ、悪いことのためだけに使うとは限らないんだよ?」
ブライトが例に持ち出したのは、感情の操作だった。
「悲しいって気持ちを抱えた子が、その気持ちに支配されすぎて精神的におかしくなっちゃうことがあったんだって。でも、感情を操作して、悲しみを減らしてあげることができるんだ。そうすればその子は普通に生きていくことができるからね」
それを聞いても、イユは頷けなかった。そうやって他者が人の心に干渉する権利はあるのだろうか。それが善意だとしても、あくまで外側から変えていくものではないのかと思うのだ。
「見分け方は……、本当に記憶を見るしかないのね」
話を切り替えて、問う。
「ううん、周りの人がいればそうでもないよ。ある日突然とあるものを『好き』だと言っていた人が、『嫌い』だと言い出したら誰でもおかしいと気づくでしょ?」
急な心変わりが、ヒントになるということらしい。
「あと、これは魔術の副作用といえるのかもしれないけれど、書き換えた内容は本人の心のなかを大きく占める傾向があるかな」
「どういうこと?」
ブライトは何故か好物を引き合いにだした。
「たとえば、『あたしの好物は?』って聞かれたら『リンゴ』って答えるんだけれどさ。それ以外にも、美味しいものはあるんだよね。さくらんぼとか、パイナップルとか。でも『好物は?』って聞かれたら『リンゴ』って答える」
分かるような分からないような例である。戸惑っていると、リュイスが代わりにブライトに確認をとった。
「要するに、本人にとってすぐに思いつくものが対象になっている可能性が高いということですか」
「そうそう」
イユは自分自身がすぐに思いつくものについて想像する。頭に浮かんだのはセーレのことで、ますます不安は増していくばかりだ。
「その魔術は……、複数掛けられる可能性はあるのですか」
リュイスの質問に唯一喜ばしいことに、ブライトが首を横に振った。
「この手のものは一つずつって相場が決まっているよ。掛けられた側の負担が大きいからさ、ある人のことを好きになる感情の操作に加えて、別の人のことも好きになる魔術を掛けられたら訳分からなくなるでしょ?」
二つも掛けられると本人の心が壊れかねないという。
「記憶も一緒。昼ご飯だけじゃなくて朝ご飯まで食べていないことにしたら、さすがにずっと食べてなさすぎて何でお腹が空かないんだろうって疑問を抱いちゃうでしょ?」
さっぱり分からない説明に、イユは思わずリュイスの顔色を見た。残念ながら、リュイスもよく分からないらしく補足できそうにない様子である。
「指示を与えるのもそうかな。朝に手紙を出して、昼にも出してってやってたら、違和感覚えちゃうもんね」
「つまり、本人が掛けられた魔術に疑問を持つと、心に負担が掛かるので一つのほうがよいということですか?」
リュイスがようやく紡いだ確認に、ブライトは何故かウインクして答えた。
「そそ。だからもし掛けるなら、一度解いてからでないとだね」
さらりと言われたが、物騒な発言だった。ぞわりと寒気が込み上げて、イユはぎゅっと腕を掴む力を込める。
そうしてゆっくりと息をしてから、考え方を変えることにした。
ブライトについてはともかく、これで少なくとも暗示に関する知識は増えたのである。全く知らないものに怯えるよりは、はるかに対処方法があるというものだ。だから、これでよしとしようと。
一方で、記憶を見られる以外に解決法はない。それは変わらない事実だと思うと、切り替えたばかりの気も重くなるばかりだった。




