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第一回 2023年4月7日

 山奥にたたずむちっちゃな村、このはな村のコミュニティラジオ、このはなFM。金曜夜のDJは板谷楓さん。彼女のトークと素敵な音楽で綴る番組の様子を、小説スタイルでお楽しみください。

(もちろんフィクションなので番組は実在しません)

 みなさんこんばんは、板谷楓です。

 今日から始まりましたこの番組、わたくし板谷楓が金曜の夜に、音楽とトークで綴る番組です。週末の始まり、力を抜いてゆっくりお聴き頂ければ幸いです。


 というわけて始まりました、板谷楓のスイートメイプルタイム。このはな村役場中央広場分署一階サテライトスタジオから生放送でお送りしています。

 実は、この時間にレギュラー生放送をするのは、このはなFMとしては初の試みなんです。夏の観光シーズンなどには不定期で夜の生放送を行ったりしてますが、毎週金曜の夜、というふうに予定を決めてやるのは初めてだそうです。

 その夜のレギュラー番組初のDJを務められるというのはとっても名誉に感じます。

 当FMもコミュニティFMらしく、インターネットでも同時配信していますので、そちらでもお楽しみください。


 で、インターネットでお聴きの皆様のために、このはな村とこのはなFMについて、ちょこっと紹介します。

 このはな村は、北関東の隅っこにある小さな村です。近くには世界的に知られた観光地がいくつかあるのですが、その合間に隠れて目立たないところです。

 このはなFMは、村役場の分署内にあります。生放送はすべて村役場分署一階のサテライトスタジオからお送りしています。

 スタジオのある役場の分署は円形の広場に面しています。昼間は小さな村なりに多くの人で賑わうのですが、スタジオから見る限り、この時間はひっそりとしています。標高の高いところですので、まだ雪が残っています。その雪に何本かある街路灯の光が反射して、うっすらと明るく見えます。


 このはなFMの特徴は、とにかく低予算でやっているということと、昔ながらのDJスタイルを守っているということです。

 DJというと、今はクラブとかで曲を流す人みたいな意味で使うことが多いですけど、わたし達の親世代とかだとラジオで話す人をディスクジョッキー、略してDJと呼んでたみたいですね。今だとパーソナリティとかナビゲーターとか色々呼びますけど、このはなFMでら DJでほぼ統一してる感じです。

 なんでかっていうと、このはなFMは基本、ワンパーソンコントロールスタイルDJで番組を作っているからなんです。どういうものかというと、DJはしゃべるだけじゃなくて、自分でCDやレコードを掛けたり、効果音とかエコーとかを入れたりするんです。

 これを卓操作っていうんですけど、それが全部出来ない人がしゃべる時は、ディレクターが入ることもあります。ですがほとんどの番組はDJ一人で進めています。

 それが低予算で運営できてる理由でもあるんですけど。


 低予算でやれる理由は他にもありまして、この時間に生でDJ入る番組は初の試みだとさっき言いましたけど、普段はこの時間とかって、ひたすら音楽流してるんです。DJがしゃべる番組は、朝と昼と夕方だけ、休日の昼間はわりと生番組やってますけど、それ以外はほとんど無人で、音楽だけ流れてます。

 流す音楽も、著作権が無くなっているものがほとんどです。だいたいクラシックとか民族音楽とかですね。さっきから、わたしのおしゃべりのバックに音楽流して、時々話すのを休んで音量上げて、というのを繰り返していますが、これもクラシックなのは、そういうわけです。


 いま、曲を変えました。これもわたしの手作業でCDからレコードに音を切り替えています。

 著作権の切れている音楽をかけるのは、著作権料を節約するためなのと、あとDJが自分でかけた曲に著作権がある時は、自分で申請の書類を書かなきゃいけないんで、それもあって著作権無しのレコードかけることが多いんですよね。

 あと、このはなFMの特徴といえば、時間にルーズなんです。放送局でそんなのアリ? って思いますけどね。

 だいたい放送の始まりは決まってるんです。でも終わりはわりと適当というか、しゃべることが無くなったら終わるとか、そんな感じですね。

 あとに番組がつかえてる時はまた別ですよ。まーそういう時は早めに番組終わらせて残りは音楽流しとく、なんてことがほとんどですけど。時間に追われるってことは滅多にないです。

 番組表もありますが、コロコロ内容が変わるのでその都度サイトの番組表を更新しています。FMこのはなの公式サイトや公式SNSで確認できます。今日どんな番組があるのかはリスナーのみなさまも一番気になるでしょうから、公式SNSは番組表とか番組や出演者の変更を最優先で書いて、他の方のつぶやきの引用とかPR関係はほとんどしないようにしてあります。いつどんな番組を知りたいというときにはそちらをご参照ください。

 また、インターネットが無い場合でも、その日の番組表は村役場本庁舎と分署に置いてありますので、そちらもご活用ください。デジタルと、思いっきりアナログな放送のふた通りで、番組情報をお届けしております。どうぞご利用ください。


 まあこんなルーズなFM局なので、決まったコーナーをきっちりこなしてく感じでもないんですが、これだけは毎週やろうと思ってるのが、食レポコーナーなんです。食べたいだけやろ、って声も聞こえてきそうですが、否定はしません、はい。

 今日は、このはな村営牧場売店部のアイスクリームをいただきます。このはな村はまだまだ寒いんですけど、アイスクリームって冬でもついつい食べちゃいますよね。

 ただこのアイス、けっこう硬いんですよ。だから少しずつ人肌とかで解かしながら食べる感じで、長い時間楽しめるんです。少しずつ食べごろに近づいていくのを待っている間に、このはな村営牧場について説明します。


 このはな村営牧場は、村民の食生活改善と、このはな村に別荘を持つ人々への牛乳や乳製品の安定供給を目的として作られました。

 百年を超える歴史のなかで、ホルスタインのほか、ジャージー牛などの牛も早い時期から飼育し始めました。そして牛乳の生産はもちろん、チーズやバター・ヨーグルト・アイスクリームなどの乳製品も手がけるようになりました。

 村営牧場の特徴は、ほぼ全ての製品が純国産だということ。つまり村営牧場や周辺の酪農家が生産した牛乳だけを取り扱っています。さらに飼料も国産のもの、とくに村内の牧草と家畜用作物のみを使用しております。これは国内でも非常に珍しいことだそうです。

 最近、牛乳が余っているというニュースが問題となっていますが、村営牧場では少なくとも過去十年間、牛乳の自主廃棄ゼロの記録を持っております。これは必要な量をその都度出すこまめな出荷管理と、日本でも相当早い時期から取り組んできたチーズ作りの材料として、余剰の牛乳を利用するなどしているためです。

 このはな村営牧場では、環境と、村民のお財布に優しい製品作りに取り組んでいます。


 というわけで、だいぶアイスが柔らかくなってきました。では、いただきます。

 んー! 冷たくて、でも牛乳の風味が強くて、口当たりが優しいから、口の中かがキーンとならないんです。ふわっと舌の上でとけていきます。

 原材料が、牛乳と砂糖と卵だけなんですよ。卵も牧場のニワトリが産んだものを使ってるから、完全にこのはな村産なんです。余計な味もしません。

 今日わたしが食べているのはミルク味ですけど、もちろんチョコ味とかイチゴ味とかもあります。

 でも、わたしのおすすめはミルク味に、このはな村て作られたジャムをかける食べ方です。今日わたしが選んだのは、クロマメノキ、このへんではアサマベリーって言うんですけど、その実で作ったジャムです。酸っぱい実だし砂糖も控えめにしてあるから、アイスの甘味とバランス取れて美味しいんですよ。あ、わたし特製のジャムでーす。

 んんーっ! ピッタリわたし好みの甘酸っぱさになりましたー! 美味しい〜! アイスも食べごろの柔らかさなので、ここからしばらく曲をお聴きくださ〜い。


 というわけで、アイスも美味しく頂きましたので、そろそろ番組をお開きにしたいと思います。えーっと、だいたいこんな感じでゆるっと進めていきますんで、これからも、ラジオやパソコンの前の皆様もだらっと力を抜いてお聴きください。

 DJは板谷楓でした。それでは皆様、おやすみなさい。


 というわけで、また性懲りも無くラジオ番組風の連載を始めてしまいました。こんな感じでゆるっとコツコツ書いていきます。

 時事の話題も視野に入れつつ物語を進めるスタイルも今までどおり続けていくつもりです。今回は日本国内で牛乳が余っているというニュースから話を膨らませました。

 高原いえば牧場。このはな村ももちろん高原の村ですから酪農がさかんという設定です。

 高原の牧場といえば観光スポットでもありますが、このはな村の牧場は地域の人々の生活に根ざしたものにしたいと思いました。日本で牛乳が余るのは輸入の乳製品を使わざるを得ないという構造的な問題があります。観光地では地元の牛乳で作ったアイスクリームが好まれる一方で、街なかのスーパーやコンビニで国産牛乳を百パーセント使用したアイスクリームを見つけるのは難しい現状。純国産か否か、の選択肢すら無いのです。

 だからこのはな村では、村人も自分の村でつくられた乳製品が大好きだという設定にしました。せめて牧場のある村に住む人がそこで搾られた牛乳を飲み、その牛乳で作られたものを口にすることくらい、当たり前になってほしい。お土産屋に行かないと地場の牛乳が飲めないというのは、さみしいことですよね。

 国産のチーズというのも、歴史が浅いんだそうです。このはな村は高原の別荘地で、世界中から日本にやってきた人々が避暑に集まって大きくなった村という設定ですので、さまざまな国々の食べものが取り入れられ、その中にチーズも含まれる、ということなんです。

 チーズのなかには何年も熟成させるものもあるのだとか。国産チーズの文化が日本に根付けば、生産調整にちょうどいいのでは? という野良小説家の思いつきです。


 このはな村という強い個性を持った架空の村。この設定を活かして、色々書き散らして遊んでます。

 その中のひとつでも、読まれた方の面白さのツボにはまってくれれば幸いです。


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