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曖昧/楽しい

この話の冒頭部分までがシリアスです。

「さぁて、あっという間にお出ましですねぇ。このまま滅してしまいましょうか?」


 独り言のようにマツリは呟く。相手からの返事はない。当然、マツリが開いてからの返事を待つこともない。


 数メートルの距離を一瞬で動き、『それ』の前を剥がすように拳を振るって。


 それだけで、俺の倦怠感や、眠気が消し飛んだ。椅子に座っている必要も無さそうなくらいに。ということは。


 その『妖精』とやらの身体は、服ごと塵になるかのように崩れ、足元には黒い液体が零れ溢れ、それもまた塵になっていく。


「これで、終わりか?」


 マツリに問いかける。


「はい。このくらい倒せなければ、わざわざメイドの格好なんて選んでいませんよ?」


 その理由はどうなんだろう。


***


「まあ実際にメイド服を選んでいた理由は、牛柄に色が似ていたからなんですが」


 マツリは屋内から箒を取り出し、そのまま妖精だった塵を遠くに掻き払おうとしている。いや、別にそのあたりは言及しようとは思っていないのだけれど。


「マツリ、今回はありがとう。あれが倒されて、力が身体に戻ってきて……すぐにわかったんだ。あのままあれに力を、魂を奪われたままだったら、死んでいたんじゃないかって」


 マツリには頭が上がらない。朝食や夕飯の準備、それから看病に加え、また借りができてしまった……ような気がする。


「メイドにお礼を言うなんて、別にしなくてもいいんですよ。こういうのは好きでやってるんですから。確かにきっかけは事件で、結び付きは妖精の悪意だったりするかもしれません。でも、こうなって獣の義務から離れることができているので、ご主人が何かしらを気にするようなことはないのですよ」


「そういえば、人間と同じように獣帯……とかいうのだったか。それって、どういう状態なんだ?」


「人間の歴史で例えるなら、戦国時代程度には殺した殺されたがある世界、ですかね。まあそんなのは関係ないのです。もう私はただの獣じゃあないんですから」


 ご主人があの場にいたおかげです、とこちらに告げてきた。


「まあ、それはともかく。これからどうする?」


 問いかけたところ、ちびマツリの方が遠くから俺の肩に飛び乗ってきた。


「まったく、1人でやってしまうなんて……と。これからですよね? とりあえず、お風呂に入ったほうが良いんじゃないでしょうか。できれば一緒に」


 一緒に、って。少なくとも身体では男と女で、俺は年相応の理性を押さえるくらいしかできないんだぞ。


「良いんじゃないですか、私達の事を襲ったって。大きいほうだって、そういう事が出来ないわけじゃないんですよ?」


「まあ、ご主人が望むなら受けないこともないですけど……」


 ニヤニヤしながら悩むフリをしている。こいつら、からかっているな?


「風呂……というか、シャワーは浴びる。汗だけさっくりと流しておきたいし、それに今からお湯を沸かしてたら時間がかかるだろうし」


 言いながら2人にと一緒に部屋に入った。


「ご主人、大きいほうはご主人と一緒に入りたいって言っていますよ」


 念話ではどちらの声も聞こえてこないので真偽は分からない。ただ、今まで楽し気にニヤニヤしていたマツリの顔が急に真っ赤になっていたので、おそらく真実なんだろう、と勝手に判断しよう。


「じゃあ、一緒に入るか?」


 こっちからもからかってやろうと考えてそういった結果、


「はい、喜んで!」


 あれ……?


***


 いろいろ失念していたことがある。マツリは恩義だとかそういうのを考えないようにしても、こっちに対してかなりの忠義心を持っているようだ。いろいろ頼む前から準備してくれていたりするし、ちびマツリを用意してくれたことだってそうなのだ。


 そんなマツリに何かを頼んだら、二つ返事どころか何も考えずに受け入れてくれることを考えたほうが良かったのではないだろうか。


 という訳で、現在風呂場でシャワーを浴びている。お互い隠すべき場所にタオルを巻くように言いくるめるには少し時間がかかってしまったが……うん、頭からシャワーを浴びている状態で壁に手をついて背中を洗われていると、なんだかとても悪いことをしているようなされているような、そんな気分になってしまう。


「ご主人、この後はどうします?」


 ここで答えを間違えると、いろいろと大変なことになりそうだという事は分かる。


 だが、今更メイドと同居していることもあるのだし、間違えたところでどうなるんだ? という考えも同時に頭の中に浮かぶ。


「とりあえず、体力が回復しきっているわけでもないし……少し何か食べてから、寝ようと思う」


 それだけどうにか告げて、身体を洗われる状態を、柳の様に受け流そうと頑張っていた。いろいろ褒めて欲しいが、それを誰かに告げるわけにもいかない。


 とても長い時間身体を洗われていたような気がするが、実際にはそんなに時間は経っていなかった。


「次は、此方の事も洗ってくださいね?」


 風呂場から出る時、そんなことを言われた。マツリはこれから自分の身体を洗うようだ。


 やはり、大きいな……と考えてしまったが、後ろを向くことでいろいろと回避した。そして、次回を要求されてしまったが、どうするべきかという新たな問題もできてしまった。


「ご主人があんなに積極的だなんて、と言えればいいのだけれど」


 ちびマツリがこちらの事をからかうように告げてくる。この2人にはどうしても勝てないような気がする。いや、勝つ必要はないのだろうけども、それでもいろいろと心臓に悪いようなことはしたくない。


 ちびマツリが食事を用意してくれていたようなので、マツリを待ってから一緒に食べることにした。

次回投稿は来週水曜日の朝予定です。


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