表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/127

009 おっぱいさん

登場人物

長道:主人公。11歳。元日本人だが記憶を奪われている。チート能力を持つ。

デルリカ:9歳。ブロンドの美少女。かまってあげれば可愛いだけの妹。

康子:8歳。170cmはある体に隆々の筋肉。しかし中身はイケメンな妹。

里美:7歳。日本の記憶を持って居る。意外な過去を持つ。日本では80歳だった。

マリア:28歳。長道と里美を買ってくれた女性。結構長道に甘い。

― 009 おっぱいさん ―


朝からデルリカがうざい。

「お兄ちゃん、早く起きてくださいませ。魔法の練習をいたしましょう。」


<スマホ念話>を開いて時間を見た。


5:32


早いよ!

子供はもっと寝ろ!

昨日は興奮して23時まで起きていたんだから、せめて8時くらいまで寝かせてよ。

子供は寝るのも仕事なんだぞ。

僕は11歳だぞ。


「早く起きてくださいませ。一緒に魔法で遊びましょう!」

デルリカは恐ろしいことに、毛布を引きはがそうとしてきた。


やめろ、昭和の肝っ玉母さんみたいな起こし方やめろ!


こうなったら、一か八か最終手段だ。


「デルリカ、僕は絶対もっと寝る。このまま一人で立ち去るか、一緒に寝るか好きな方を選べ。」


デルリカは迷わず僕のベッドに潜りこんできた。

「お隣失礼いたします。」


可愛い奴め。

っていうか少しは迷いなさい。


まあいいか眠いし。

そのまま、体をデルリカに向けてポンポンとかるく布団を叩いてあげる。

これでデルリカも少し寝なさい…




眠った意識の外から、メイドの声が聞こえた。

「坊っちゃん、お嬢様がた、冬眠中の栗鼠じゃないんですからひっついて寝ていないでくださいませ。ご飯ですよ、起きてくださらないと私たちが大変なんですから、食堂に向かってくださいませ。」


けたたましい声で目を覚ます。

エプロン子だっけ?目覚まし並みに耳につく声だ。

目を開けると、腰に手を当てて仁王立ちになっているメイドのエプロン子が見えた。


「おはようエプロン子。」

「おはようございます、お坊ちゃま。」


起き上がろうとしたら起き上がれなかった。


「あれ、起き上がれない。」

「そうでございましょう。そんなに子栗鼠をひっつけていたら。」


いわれて気づいた。

左腕にデルリカが抱き着いている。

だが右手も重い。

右を見ると、里美が抱き着いていた。


この子たちはもー、可愛いな。

絶対日本には、こんな可愛い妹は実在しないよ。


しかし、可愛いゆえに僕はこまった。

さてどうしよう。


まずは目でエプロン子に助けを求める。

「坊っちゃま、ここが頑張りどころでございますよ。あ、そうそう。早く起きないと朝ごはんが無くなるかもしれませんね。ガンバレガンバレ。」


このやろう、助けてくれる気はない様だ。両手が動かないというのは本当に何もできない。


首ブリッジをしてみる。

だめだ首が折れそうだ。


体をひねってみる。

妹が意外に重くてビクともしない。


オナラをしてみる。ブー

あかん、毛布の隙間から匂いが漏れて、僕自身が苦しい。


「や、康子を呼んできて。」


五分後、やってきた康子に無事救出されてやっと起き上がれた。


「康子が来てくれて助かったよ。」

「お姉さまは、しがみつく力がビックリするほど強いですからね。私も時々動けないくらいですから。」

「デルリカ凄いな。」


話ながら、眠そうにしている小柄な妹達を連れて食堂にいった。


席につくなりデルリカが僕に小言を言い出す。

「お兄ちゃんが二度寝させるからいけないんですわ。朝食に遅れたのはお兄ちゃんのせいです。」


何で僕のせいやねん、迷わず二度寝したのはデルリカだろう。

「いやいや、朝5時半に起こしに来られても困るから。朝ごはん食べたら遊ぼうね。」

「絶対ですからね。」


これで落ち着いて食事ができる。

モグモグ食べだすと里美がピーマンをそっと僕の皿に入れて来た。

君の中身は80歳のお婆ちゃんだよね。

何やってるの。


まあいか。

そっと里美の皿にドレッシングのかかったレタスを突っ込む。

ここの料理はおいしいけど、ドレッシングだけは僕の好みじゃない。

味が強すぎるんだよね。


里美はドレッシングのかかったレタスを黙って受け入れた。

トレード成立のようだ。


ピーマンもおいしいのに。

この少し苦いのが良い。

サッパリするというか何というか。


ピーマンを味わっていると、目の前から僕のお皿にニンジンが放り込まれる。

デルリカがニンジンを突っ込んできたのだ。

いいだろう。

有無を言わさず、ドレッシグが掛かったレタスの残りを突っ込み返す。

頷きあう。


トレード成立。


僕はニンジン好きなんだ、ラッキー。

モグモグ。


次は康子がそっとソーセジをくれた。

えええ、なんで?

「お兄様は男性ですから沢山食べたいですよね。よろしければどうぞ。」


康子ーーー。

時々プロレスラーみたいとか思ってゴメン。

兄妹の中で最も心が清く優しいのは康子だ。

お礼にレタスを返した。


「康子の気持ちはありがたくもらおう。お礼にレタスを…。」

すっごく、子供に向けるような笑顔を返された。

だって、だって、、、、



そんなこんなで朝食を終えると、僕らは外に飛び出す。

康子は花の手入れを始めたので、僕はデルリカと里美を連れて畑に向かう。

このお屋敷の植物は、花壇は少しで9割が畑や果樹園だ。

さすが開拓村、こういうところは実用的でいい。


そして僕は何故か畑を見るのが好きなんだよな。

前世は農民だったのだろうか。


畑に行くとトマトがなっていた。

里美が悪い顔になる。


「お兄ちゃん、子供は畑のモノをとって食べちゃうものだよね。」

「そうだね里美、だって子供だもの。普通トマトがなってたら食べるよね。」


2人で速攻でもぎ取る。

見つかって取り返される前にかぶりつく。


くううう、とれたてトマト美味い!

デルリカと目があった。

「デルリカはトマト好き?」

「好きですけれど、勝手にとっては怒られてしまいますわ。」


僕はぶちっとむしるとデルリカに渡した。

「安心するといい。デルリカは僕からトマトをもらった。だが僕がどこから手に入れたかは知らなかったのだ。言いたいことは分かるね。」


「はい、ワタクシはお兄ちゃんがトマトを手に入れるところは見ておりませんでした。」

「よし、賢いぞ。」


デルリカ、悪い顔で微笑む。

9歳の子がしていい笑顔じゃないぞ。


ついでにもう1個ぶちっとむしる。

そして花壇に行った。


「おいーい康子ー。これあげる。」

「あ、お兄様。それはトマトですか?ありがとうございます。」


僕と里美がトマトを食べているのを見て、康子もその場でムシャムシャたべる。

デルリカを見ると、大きなトマトを両手で持って苦労して食べている。ムっちゃ可愛い。

康子を見ると、片手でぱくりと食べていた。ムっちゃワイルド。


おかしいな、同じ大きさのトマトのはずなのに、康子の持っているトマトが小さく見える。

そんなこんなで楽しくトマトを食べた。


最後に残ったトマトの芯は証拠隠滅のために花壇に埋める。

うん完璧。


丁度食べ終わると、マリアお母様がこちらにきた。

「あらあら、トマトは美味しかったですか?」

「う、なんでわかりました?」

「口の周りが真っ赤ですよ。」


僕と里美は口の周りをすでに腕で拭いてある。

横を見ると、デルリカの口の周りは真っ赤だった。


くっ、油断した。

デルリカはこういう事には頭が回らない派か。

責任は取ろう。僕はそっと両手を差し出した。


「自分がやりました。」


するとマリアお母様は手招きした。

「トマトくらい言ってくれば用意しましたのに。」

「もいで食べたかったから・・・」

「あなたも、変なところで子供ですね。まあいいです。ちょうどいいので向こうの畑に一緒に行きましょう。」


ちょっと呆れられてしまった。


しかし、お庭に畑があるのは貴族ぽく無くていいな。

花ばっかり育てるのが貴族だけど、やっぱり野菜と果物も大事。

果物育てると、蜂や蛇が出るから怖いけど。


そう思っていると、空の畑につく。

「長道、ここに何か育てようと思うのですが、あなたは何が良いと思いますか?」

「うーん、甘い作物が良いです。おやつになるような作物。」


「ふふ、構いませんよ。そういう野菜はサツマイモやトウモロコシ、もしくはニンジンでしょうか。何が良いですか?」

「僕が決めていいんですか?枝豆や小豆かな。餡子にしてお菓子をつくって食べたいです。」


すこし考えるとマリアお母様は手を上げて詠唱を始めた。

「大豊姫様にお願い申しあげます。この畑に枝豆と小豆の恩恵を。甘い餡子のお菓子が作れるようにお力をお貸しください。」


すると大地から胸の大きな半透明の女性が現れた。

緩やかなワンピースのような服を着ていて、長いゆるふわなブラウンの髪。

樹木のような羽をつけていた。

この人、見たことある。たしか天界でマリユカ様の後ろに立っていた人の一人だ。大豊姫さんていうのか、覚えておこう。


ナイスおっぱいだ。


『マリアさん、今日は暇だから私自ら来ましたよ。それでは枝豆と小豆を半々で作りますね。』


そこからの光景は、感動的に凄かった。

タネも蒔いていないのに、畑から芽が出てくる。

そのあとニョキニョキと伸びて、ものの5分ほどで収穫できるところまで育った。

「おおお、凄い!」


本当に感動した。

無機質な攻撃魔法とかと違い、地味に神秘を感じた。

タブン目をキラキラさせていたと思う。


手に取ってみる。

良い枝豆だ。これなら、ずんだにしたら美味しくなりそう。


どこからともかくメイドゴーレムがやってきて収穫を始めた。

いろいろすごい。


こんなすぐに作物が育つなら、開拓村があっという間に大きくなったのもうなずける。

普通の開拓村は3年は地獄の苦しみなものだ。

だって作物はすぐにできないから。

でも、こんなすぐに収穫できるなら、開拓村とはいえ活気が出るのは当然だろう。


よーし、僕の人工精霊の高麗こまに頼んで、夕飯の後のお茶請けにはずんだ餅を作ってもらおう。


感動の余韻に浸っていると、半透明の大豊姫さんが僕に近づいてきた。

そして目を血走らせて、僕の肩をガツっと掴んでくる。

怖い、なんか捕食された気分。


『わお、長道さんじゃないですか!こっちの生活はどうですか?』

「えっと、とっても快適です。とても良いところに引き取ってもらって感謝感激です。」


すると満足そうに微笑んだ。

『そうですか、それでしたら安心しました。奴隷スタートとか心配したんですよ』

「僕もびびりましたが、結果的には良かったです。」


いきなりギューっと抱き着かれた。

うぷ、おっぱいで窒息しそう。

しかし、そこがいい。

駄目だな、思考がおっさんだ。

今の僕は子供だというのに、てへ。


でもこのままだと本当に窒息で死にそうだから、タップしてみた。

ギブギブ


『うわ、すいません、苦しかったですか?』

「まだ余裕あったから大丈夫です。ところで大豊姫さんも僕の事を知っているんですか?」

『もちろんです。とっても仲良しだったんですよ。だから私からもチートを贈ったんですが役に立ちましたか?<日本ライブラリー>っていう魔法は。』


衝撃を受けた。

「ええ、あれは大豊姫さんがくれたんですか?まったく使ってないしポイントも振ってないですが、大豊姫さんがくれたチートなんですね。」


『え、全然使ってくれていないんですか?ううう、寂しいです。日本のコンテンツなしでは生きていけない長道さんのためにワザワザ開発して、日本からダウンロード購入まできるようにまでしたのに。』

「すいません、沢山能力が付いていたんでまだ検証に手が回っていなくて。」


『そうですか。里美さんの事が大好きな長道さんの事ですから、とっくにポイント振って佐山里美さんのアイドルビデオとか見ていると思いましたから意外でした』


「パードゥン?里美ちゃんのアイドルビデオ?それってどういう意味?」


『おっと、なんか教えすぎちゃった。まあ試せばわかりますよ。そうそう、用があったら気楽に呼び出してしてくださいね。それではー。』


大豊姫さんは地面に消えていった。


なんだったんだ?

呆然と地面を見つめる僕に、マリアお母様はそっと肩に手を乗せた。

「あれは遠回りに『はやく使って』とおっしゃっていたのでしょう。できるだけ早く試して差し上げなさい。」


「わかりました、気になる事も言っていたので試してみます。それと…今のおっぱいさんは、どういう人なんですか?」


「大豊姫さまですか?大地をつかさどる4大天使様のお一人です。そうそう、四大天使様といえば、奴隷商のところで召還させていただいた、裁きの大天使・大海姫様も4大天使様のお一人ですよ。ほかにも4大天使には空間をつかさどる大空姫様や、火や爆発をつかさどる大炎姫様がいらっしゃいます。」


ふと天界の光景を思い出した。

水色の髪の毛をした女神様の後ろには、4人の女性がいた。

もしかしてあの4人は…


「天界で、マリユカ様の後ろに4人の天使が居ました。そのなかに大海姫さんや大豊姫さんもいたので、あの4人が大天使だったんでしょうか?」


「間違いないでしょうね。マリユカ様に付き従うのは4大天使の皆さまですから。」


少し考える。

そして冷汗が出た。


「あれ?その大天使さんから友達扱いされている僕って凄くないですか?」

「もちろんです。今気づいたのですか?」


ダラダラ汗が出てきた。


「はい、、、だって大天使さんだって知らなかったし。。。」


マリアお母様は、僕の視線に合わせるように膝をついて覗き込んでくる。

「長道、大天使様は絶対的な存在です。その大天使様から頂いた魔法があるのでしたら、試してみなくてはいけないと考えます。その<日本ライブラリー>というものを今すぐ試しましょう。」


「マリアお母様がそういうのなら、、、はい、ポイント極振りします。」


試すために、まずは場所を移すことにしよう。


そして歩き出しながら、ふっと気づいた。

その大天使さんを呼び出して、普通に力を借りるマリアお母様も凄いのではないかと。

お読みくださりありがとうございます。

次回:僕のチートはいまいち。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングアップのために、↓↓クリックしてくれると嬉しいです
小説家になろう 勝手にランキング

新作
「異世界に行きたい俺たちの戦い ~女神さまは無責任~」
もよろしくお願いいたします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ