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064 妹がカメ○メ波を撃ちました

― 064 妹がカメ○メ波を撃ちました ―


浮遊バイクで突き進む。

暑い日差しの中、バイクの速度で涼しい風を感じる。


走っていると快適かも。


でも実は、めっちゃビビってます。

だって馬車でも時速10~20km。

騎乗しても最速で時速40kmくらい。


この浮遊バイクは今、時速120km。


怖い!速すぎて怖い!


本当は減速したいけど、周りが全然減速する気配がないから「速度落として」って言いにくいのですよ。


僕の背中にしがみついているビレーヌも「きゃー」とか言いながら笑顔だし。


妹達も平然と僕の前を走っている。

速度を落としてくれる様子はないどころか…

バイクになじみがないはずのデルリカが、一番目を輝かせて速度を出そうとしているのが怖い。


僕の後ろにはダグラス団、ヒーリアさん、ユカエルさんが走ってるけど平気な顔をしている。

冒険者は命知らずだからかな。


そして僕の横には…

「あははは、長道を蹴っちゃうぞー!」


横から『食楽王』マリーさんが僕のバイクを蹴ってきた。

「やめろ!危ないでしょ!こんど危ない事したら泣きわめくぞ!」


「あはは、怒らないでくださいよー。長道は短気ですねー。怒られてマリー悲しいなー。」


「悲しいならやらないで!危ないことはダメ絶対!僕はこの速度だとギリギリなんですから、ほんと勘弁してください。」

「長道は臆病ですねー。」


魔王は自分が頑丈だからか、イタズラが危なすぎて怖いよ。

120kmで転んだらビレーヌも死ぬでしょ!


騒いでいたら、遠くの先に沢山の人が見えてきた。

草原だから、かなり遠くまでみえる。

どうやらデスケント皇子とヘルリユ皇女の親衛隊に追いついたようだな。


向こうはせいぜい時速20kmだから当然かな。


追いついて驚かせようかな。

そう思って近づていくと…

どうやら空中から攻撃を受けているようだ。


女子高生型ゴーレムか!

高麗こま!敵の種別と数を教えて。」


耳元で人工精霊の高麗がささやくように教えてくれた。

『敵はフレンツ公国のインテリジェンス・アーツのゴーレムです。数は95。親衛隊は圧倒的に不利です。』


ほんと航空戦力を持っているかどうかって大きいな。

こんな自国の真ん中で敵の襲われるなんて。


こんど航空戦力を開発してデスシール騎馬帝国に売りつけなくちゃな。



とりあえず今は助けに行くか。

「みんな!僕はヘルリユを助けに行く。戦いが嫌な人は迂回して先にグロガゾウに入っていて!」


スロットを回して、僕は真っすぐ戦線に走った。

<探査>でそれとなく見たら、全員ついてきてくれたみたい。

よかった…

僕だけだったら怖かったから。


背中でビレーヌが叫ぶ。

「長道様、わたくしには選択権をくださらないのですね。」


いっけね、またビレーヌのこと忘れてた。

「もしかして、離脱したかった?」


すると背中で頭を横に振るのを感じた。

「もちろんご一緒いたします。わたくしに、わざわざ確認しなかったことが嬉しかったのです。」

そうなんだー。

おんな心は謎だ。


まあビレーヌもレベル300超えの魔王だから心配は無いだろうから良いか。

僕と違って、ちゃんとスキルとかにポイント振ってあるだろうし。


近づいたので僕はビレーヌに叫んだ。

「ビレーヌ!遠慮のない一撃をあいさつ代わりに撃ち込んでくれる?」

「はい!挨拶を撃ちこみます!」


するとビレーヌは座席の後ろで立ち上がる。

あ、危ないよ!


半分振り返った時、ビレーヌの顔は好戦的に笑っていた。

あかん、こいつも戦闘民族や!さすが魔王!幼女でも魔王だぞコイツ!


ビレーヌは赤い髪を逆立てて「はー!」とか言い出した。

なんと体が赤く光り出す。

おいおい、どこの戦闘民族だよ。


そしてビレーヌはゆっくり両手の掌底をつけてわきに構える。


おい!

それはマジで某戦闘民族が得意としているアレじゃないよな!

いや、間違いない!野菜人の王子が使う、ビッグバ○アタックの構えだ!


ビレーヌはその状態でさらに体を赤く光らせる。

手には赤い灼熱のエネルギーが溜まっている。


そして、その両手を突き出した。

「紅竜王ブレス!」


ドゴゴゴゴゴゴォォォォォ!


赤い光は真っすぐ放たれて、空を薙ぐ。


一瞬間があった。


次の瞬間。

ドゴオオ


女子高生ゴーレムが居るあたりの空が真っ赤に爆発した!


おおおおお!

な、なんだ今の攻撃?


すると僕の横に来たデルリカも浮遊バイクの上に器用に立ち上がって、同じような構えをしていた。

いや!あれは「おら」とか言う野菜人の必殺技、かめ○め波の構えだ!


「咆哮ブレス!」

叫ぶと当時にデルリカが手を突き出す。

その時空気が震えた。


ドゴゴゴゴゴゴォォォォォ


空気が白く濁るほどの野太い衝撃波が真っすぐ打ち抜かれる。


白い衝撃波も空を薙ぎ、残っていた女子高生ゴーレムを一撃で吹き飛ばした。


最強兵器であるところの女子高生ゴーレムが…

95体も…

幼女の攻撃を二回食らっただけで…全滅した。


うわぁ、最強兵器が噛ませ犬にもならないとかどうなのよ。


ちなみに、

このブレス技は昨日の「ぼくのかんがえた、さいきゅのまおう」大会で、景品として与えたものだ。

まさか早速猛威を振るうとは思わんかった。

びびったす。


紅竜王ブレスは1万度の熱を放つレーザー光線。

咆哮ブレスは突猿王が持っていたスキルで、衝撃波を撃ちだすヘイザー砲。


しかしブレスを…両手を合わせて撃つのかー。

ブレスだから、てっきり口から撃つのだとばっかり思っていたけど、もしかして両手を合わせて顎にみたてているのかな?

それで撃てるんだ…、ブレスも案外いい加減だな。


そんな事を考えているうちに親衛隊に追いついた。

バイクで近づくと、兵をかき分けてヘルリユが飛び出してくる。


「長道!やっぱりお前の仕業か!」


助けたのに酷い言われようだ。


「いまのは僕ではないけど、戦力を連れてきたのは僕だよ。兵たちの治療は必要?」

「助かる!」


ダグラスさん達には、吹き飛んだ女子高生ゴーレムの残骸の回収をお願いして、僕らは治療を開始しようとした。


すると大豊姫さんがフワリと空から覗き込んでくる。

「長道さん、治療でしたら私が得意ですから手伝いましょうか?」


あ、この大天使さんまだいたんだ。

でも助かる。


「お願いします、手伝ってあげてください。」

「お任せください!。」


すると、このあたり一帯の地面から暖かい光が湧き上がってくる。

「面倒なので一気にやっちゃいますね。エリア魔法でパーフェクトヒール!」


地面から湧き上がる光で、兵士たちはあっという間に傷がいえた。

離れたところで歓声があがる。


「生き返ったぞ!うそだろ、奇跡だ!」


僕は大豊姫さんを見上げる。

「生き返ったって言ってますが?」


「ふっふーん。私のパーフェクトヒールに驚きましたか?頭が半分くらい無事でしたら、死んでから1時間以内なら生き返らせることができるんですよ。死んだように見えても完全に細胞が死んだわけではないので、私のヒールなら回復できるのです。見直しました?」


まじか!

ただ胸が大きなお人好しのお姉さんだと思っていたけど、さすが大天使だ!

「憧れるレベルで凄いですよ、大豊姫さん!さすが大天使です!。」


大豊姫さんは口に手を当てて半泣きになる。

「うそ…、長道さんがスゴい褒めてくれた…。私、頑張ってきて本当に良かった…。」

マリーさんがフワフワ浮かんで大豊姫さんの頭をなでる。


「よかったですね、貴女の努力に幸あれですよー。」

「マリーさん!」


ガシ!

泣きながらマリーさんに抱き着く大豊姫さん。

なに?僕に褒められるって、そんなに嬉しいの?

本当に僕らは前世で友達だったの?


なんかスッキリしない気持ちになったけど、助けてもらったことだし突っ込むのやめておこう。


デスケント皇子も僕らを見つけて走ってくる。

「やはり長道であったか。助けてもらい感謝の言葉もない。これでフレンツ公国のインテリジェンス・アーツ・ゴーレムは残り687体か。凄い戦果だ。」

「いいえ、あと444体ですよ。」


「え?」(デスケント皇子)

「え?」(ヘルリユ皇女)

「え?さっき243体の女子高生型ゴーレムが僕らを襲ってきたんで倒したんです。ですのでフレンツ公国に残った女子高生ゴーレムの数は444体です。」


ヘルリユはプルプル震えながら僕を指さす。

「な、長道!お前は化け物か!」

「失敬な!襲ってきた女子高生ゴーレムはマリーさんが一瞬で皆殺しにしただけだよ。」


僕の後ろでマリーさんが「えっへん」と胸を張る。

それをみて、ヘルリユ皇女は肩の力が抜けた。


「魔王の力か…、凄まじいものだな。この魔王と戦おうと思った過去の自分を叱り飛ばしたいな。」


デスケント皇子の顔が引きしまる。

「この女性が噂の『食楽王』?たしか紅竜王討伐を祝う席で食事を食べまくっていた女性であるよな。まさか魔王であったか。これほどの人材をそろえているとは長道は恐ろしい化け物であるな。」


「ち、ちがいますよ。友達になっただけです。」

「はっはっは、長道らしい言葉である。」


そのあと、親衛隊の被害を確認したところ、奇跡的に死者0であった。

大豊姫さんが居なければ1000人は死んでいたらしい。

大豊姫さん、まじ大天使。


ではみなでグロガゾウに行こうかとしたとき…

空から炎が落ちてきた。


「なんだ?」


炎が地面にぶつかって消えると、炎の中から大天使の大炎姫さんが現れた。

豪奢な金髪縦ロールで、目元がキツイ美人さんだ。


「大豊姫、いつまで遊んでいるんだ?世界管理係の交代に現れないから、大空姫が怒っていたぞ。」


大豊姫さんの顔が、サーと青くなった。

「あうあう、忘れてました!大炎姫さん、一緒に謝ってくれませんか?大空姫さんは怒ると怖いんですよ。」

「まったく、いつまでも子供みたいなことを。一緒に行ってあげるから急いで戻るぞ。」


大豊姫さんと大炎姫さんは炎に包まれると消えてしまった。

あ、お礼をいう前に有無をいわさず連れて行かれてしまった。

挨拶くらいさせて欲しかった…。


それに大豊姫さんのお陰でかなり助かったから、あんまり怒られないといいな。

そうだ祈っておこう。


両手を組んで空に祈る。

大空姫さん、大豊姫さんは僕のために残ってくれていたので、怒るのでしたら僕を怒ってください。

すごく助かりました。ですのでお怒りは僕にお願いします。


よし、これで少しでも大豊姫さんが助かるといいのだけれど。


振り返るとデスケント皇子やヘルリユ皇女が土下座していた。

いや、親衛隊全員が土下座している。


なに?僕になんで?


「どうしたの?頭を上げなよ。どうしたの?」


するとヘルリユが恐る恐る頭を上げる。

「どうしたの?じゃないだろ!大豊姫様に大炎姫様だぞ!大天使様が二人もだぞ!むしろお前たちは何故平然としていられるんだ!。」


「えっと…、大天使は大体友達だからかな?親衛隊だってさっき大豊姫さんに助けてもらたんだから驚くことじゃないんじゃないの?」


デスケント皇子は納得した表情になる。

「なるほど!さっきの奇跡の正体は大豊姫様であったか。大天使様の召喚ができるとは長道はすさまじいな。」


大天使さんは呼べば気楽に遊びに来る人たちなのを知らないのかな?


マリーさんが空気を読まずに僕の肩を叩く。

「長道、甘いものが欲しいです。スウィーツをよこすのです!」


「はいはい。」

<空間収納>に仕舞っておいたマンゴーパフェを出してあげた。

「わーい、これ美味しいんですよねー。」


なんか空気が変わったので、みんなノロノロと立ち上がり始めてくれた。

よかった、僕らだけ立っているのがつらかったので、一緒に土下座しようかと思っていたので助かった。


さすがマリーさん。エアクラッシャーの称号を与えたいね。


パフェを食べ終わるとマリーさんは楽しそうに浮遊バイクに乗る。

「じゃあ私は先に戦場見学の場所取りに行きますねー。新しい縄張りで手下も増やさないといけないのでー。じゃあ、また会いましょうー。」


ブヲンと風を切って走り去っていってしまった。


あの人は唐突に現れて、唐突に去っていくな。

自由過ぎる。


小さくなるマリーさんの背中を眺めていたら、ヘルリユ皇女が僕の肩を叩く。

「さすが上位の魔王だな。あれこそが絶対強者の生き方かもしれない。」

「そうなの?我侭でバカっぽくて子供みたいなのに?」


ヘルリユは微笑みうなずいた。

「絶対に誰からも害されないから頭を使う必要がなくバカっぽい。誰もその道を阻めないから我が侭でいられる。生まれながらの強者は大人になる必要がないから子供っぽい。あの無邪気な姿こそ、あの魔王の強さの証明な気がするよ。」


「なるほど…、強いから成長する必要がないか。たしかにそうかもね。」


たしかに大天使を一撃で瀕死にするほど強いんだもの。

そうかもしれない。

お読みくださりありがとうございます。

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