063 懲りないフレンツ公国
さっき、うっかり62話をアップせずに63話をアップしてしまいました。
内容は差し替えました。
申し訳ないのですが、すでに読んでしまった人は脳内でアレをアレしてください。
― 063 懲りないフレンツ公国 ―
散々騒いだ後、僕らは雑魚寝する。
器用に僕の上で寝るマリーさんが重いけど、大豊姫の爆乳を見ながら寝るのは悪くない。
こういう賑やかなのも、たまには楽しいかも。
妹達が小声で話をしているのが聞こえる。
姉妹で仲良くやってるようで安心した。
もう少し何か話をしたかったけど、僕の上で寝るマリーさんの体温がちょっと心地いいんだよね。
その体温は妙に安心を与えてくれるというか…、有無を言わさず僕を眠りの中に落としていった。
次の日の朝。
顔が濡れて目を覚ます。
マリーさんのヨダレか!
この駄魔王が!
この人、ほんとうに僕の上で器用に一晩寝てたのか!
「マリーさん!ヨダレたらさないでくださいよ。起きてください!」
「朝ごはんができないと起きませんよー。」
押し飛ばそうとしたら、器用に体を動かして僕の上からどいてくれない。
「スマ子、はやく朝ごはんをお願い。」
そう叫ぶのが僕の精いっぱいだった。
10分後
スマ子の朝ごはんが出来上がったので、僕はやっとマリーさんから解放されて顔を洗う事が出来た。
くそー、ひどい目にあったな。
妹のデルリカはボサボサ髪のまま目を擦る。
「お兄ちゃん、おはようございます。」
「おはようデルリカ。顔を洗ったら髪の毛を梳かさないとね。」
まだボーっとしているデルリカの顔を洗ってあげて、髪をとかしてあげる。
綺麗なブロンドだけど、軽くウェーブしているので梳かしている時に油断すると引っかかるんだよね。痛くしたら可哀想だから丁寧に梳かしてあげた。
それから服を着替えさせてあげたころには、頭がはっきりしてきたようだ。
「ありがとうございます、お兄ちゃん。ワタクシは康子と里美の面倒を見てきますわ。あの子たちは手がかかりますの。」
おませな顔をして、顔を洗う康子と里美の方に行ってしまった。
自分は僕やマリアお母様に面倒見てもらってる事に気づいてないのが子供だよなー。
そんな子供なデルリカ可愛いなー。
そう思ってたら、後ろからヒーリアさんが僕の頭を梳かしていた。
「長道坊っちゃん、妹様の面倒を見る前に自分のボサボサ頭をどうにかしないとね。」
うぐぐ、僕も人のことは言えない程度に子供っぽい。
一応ダグラス団のおじさんたちは馬車の反対側で身だしなみを整えている。
覗いてみたら髭をそっていた。
そっか、自分が子供になって忘れていたけど髭剃りもソロソロ買わないとな。
もう13歳だからソロソロだもんな。
「ダグラスさーん、朝ごはんが出来てますから準備できたら来てくださいねー。」
「おう、わかったぜ坊っちゃん。」
そしてみんなで食卓に着いた。
マリーさんの前にはすでに平らげられたお皿が並んでいる。
「ここのご飯はおいしいですねー。シェフを呼べ。」
ゴーレムの体で出てきた人工精霊のスマ子が、僕らの食事の用意をしながら微笑んだ。
「シェフはウチだよ食楽王様。お口にあったぽくてマジ良かったよ。」
「美味しかったのです。もう一人前よこすのです。」
「はいはい、一緒に用意するからチョッチ待っててね。」
その隣で、美味しそうに朝ご飯を食べる大豊姫さん。
まだ帰ってないんだ。
大天使って暇なのかな。
そう考えると現れる大天使さん達がみんな「いつでも呼んでいいから。遊びで呼んでもいいから」っていうのにも納得がいく。
これからは、もっと適当な事でも呼んでみよう。
僕らも食事を始めたら、そこからは軽い戦場だった。
テーブルの中央に置かれた、山のように積まれたフレンチトーストを奪い合い、
お鍋に沢山作られたコンソメスープを奪い合い、
大皿に置かれたソーセージやマッシュポテトを奪い合い、
嫌いな野菜を押し付け合い、
それはそれで楽しい朝ごはんだった。
食事のあと、康子がデルリカと里美を肩に乗せて遊んでいるのを見ながらお茶お飲む。
平和って良いなー。
ボーっとしていたら、人工精霊の高麗が急に現れて空を指さした。
『長道様、高速の飛行物体がこちらに向かってきております。その数243体。インテリジェンス・アーツのゴーレムのようです。』
「それってどういう事だろう?」
すると隣でお茶を飲んでいた大豊姫さんが困った顔になる。
「フレンツ公国の方に居る精霊に念話で聞いてみたところ、セルバー公爵の一派が大公の意見を無視して口封じに来たようですね。」
まいったな。
マリアお母様がいないところで襲撃されたら勝てるとは思えない。
・・・っと思ったけど。
横を見たら魔王『食楽王』マリーさんが楽しそうに屈伸運動を始めていた。
魔王様がアップを始めたようです。
「マリーさん、もしかしてヤル気ですか?」
「これから来るゴーレムは敵なのですよね。やっつけちゃいますよー。」
楽しそうに腕をぶんぶん振っている。
うん、敵が可哀そうになってきた。
「マリーさん、できたら残骸は回収したいのでチリに変えないでくださいね。」
「わっかりましたー。では人工精霊をゴーレムのボディからを吹き飛ばして、活動停止にだけしますね。」
うん、かなりたすかった。
初めてマリーさんが居てくれて良かったと思ったかも。
僕は安心してお茶を飲みだす。
少しすると、空の向こうに豆粒みたいなものが沢山見えてきた。
その豆粒に向かってマリーさんが咆哮した。
「死になさーい!」
その咆哮と同時に、遠くに豆粒のように見えていた敵は地面に落ちていく。
「長道、敵をみんな殺しましたよ。回収に行きましょう。」
え?
それだけ?
今ので皆殺し?
この距離で即死とかできるの?
うそー。
うん、絶対絶対マリーさんとは敵対しないことにしよう。
マリーさん、僕らはズッ友だからね。絶対に僕たちに敵対しちゃだめだよ。
引き攣った僕を気にせず、笑顔のマリーさんが、早く走りだしたい犬みたいな顔で待っている。
「えっと、じゃあ回収に行きましょうか。」
「よし、れっつごーです。」
浮遊バイクを出して走り出すと、その隣をマリーさんも走る。
流石に速い。
2分ほど走ってやっと現場に着くと、女子高生の死体っぽいゴレームが死屍累々に転がっていた。
それを僕は無言で回収する。
無傷で転がる243体のゴーレム。
凄まじいな。
ほんと、眠っている女子高生を回収しているような背徳感を感じる。
どっから見ても人間にしか見えないし…。
でもフレンツ公国は大丈夫かな?
たしか最強兵器の1つであるインテリジェンス・アーツのゴーレムはフレンツ公国の切り札として、832体あったと聞いているけど…
この三日で293体も僕らが倒してしまったので、現在は539体に減ってしまったのだよね。
大損害じゃないかな?
大丈夫かな?
まあ、僕らが考える事じゃないか。
落ちていた女子高生ゴーレムをすべて回収すると馬車の位置に戻る。
いやー、マリーさんとハサミは使いようだねー。
馬車まで着くと、丁度マリアお母様とジージョ準大司教が帰ってきたところだった。
マリアお母様!
嬉しくて飛びつこうとしたら、ジージョ準大司教が呆れた顔でマリアお母様と話をしているのが目に入ったので、マリアお母様の前で急停止。
「まさか口封じに来るとは思わなかったな。あやうく子供たちが皆殺しになるところだったね。私の読みの甘さで、マリアリーゼ司教の子供たちを危ない目に合わせてしまってごめんね。」
デルリカが何故か胸を張る。
「大丈夫ですわ。こっちにはお兄ちゃんが居ますもの。」
僕はわてて言葉を継ぎたす。
「まあ『食楽王』や大豊姫さんもいたので、その意味では凄い安全地帯でしたから大丈夫ですよ。ゴーレム達も瞬殺してくれたし。」
ジージョ準大司教はそれでも苦虫を潰したような顔のままだ。
「それにしても舐められたものだよね。50年前にウチの大司教・賢者大魔導士さんや、教皇の究極聖女様に滅ぼされかけた事を忘れたのかな?世代交代の弊害だよ。ここらで一発かまさないとダメかな。」
マリアお母様はなぜか余裕の顔で微笑んでいる。
「昔のことを知っているフレンツ公国の老人たちは、きっと青くなっていると思いますよ。なんでしたら、わたくしがデスシールに加勢してフレンツ公国を滅ぼしてしまいましょうか?」
「それもアリかもね。とはいえ今後の事を相談しなくちゃいけないかな。戻ってきたばっかりで悪いんだけどもう一度神殿に来てほしいな。今度はちょっと長い会議になると思うけど。」
なんか、厄介なことになって来たっぽい。
マリアお母様は僕の頭をなでる。
「長道、わたくしは神殿に行かないといけません。長道は浮遊バイクで先にグロガゾウの街に行って待っていられますか?浮遊バイクなら今日中に着くと思いますが。」
イヤイヤって言いたいけど我侭は言えない。
マリアお母様を困らせるわけにはいかないから。
「わかりました。では先にグロガゾウに入って教会で過ごします。お母様はお仕事を優先してください。」
マリアお母様は僕を優しく抱きしめる。
「長道、いつも我侭も言わずにありがとう。できるだけ早くグロガゾウに行きますので待って居てくださいね。」
「はい。」
シュン!
マリアお母様とジージョ準大司教はまた転移で神殿に向かった。
ううう、マリアお母様に甘えようと思っていたのに寂しい…
半泣きになっていると、デルリカが背伸びして僕の頭をなでる。
「甘えん坊のお兄ちゃんが、よく我慢しましたわね。えらいですわ。」
「デルリカさん、僕は我慢しました。」
「えらいえらい。」
デルリカ優しいなー。
里美も飛びついてくる。
「お兄ちゃんには私がいるでしょ。寂しくないよ。」
「里美さん、ありがとう。」
康子もそっと僕の肩に手を乗せる。
「お兄様、今夜はお兄様の好きなものを食べましょう。元気を出してくださいませ。」
「康子さん、あざっす!」
うちの妹達はみんな優しい!
大好きだ!
ひとしきりスキンシップを取った後、僕らは<空間収納>に馬車をしまい、浮遊バイクを出して出発準備する。
バイクにまたがると、僕の後ろの席になぜかビレーヌがぴょこりと乗ってきた。
「長道様、海が見たいですわ。」
何言っているんだ、この幼女は?
まあいいか。それはそれで可愛いし。
出発しようとしたら、マリーさんが掴みかかってくる。
「長道、さっきも思ったのですが、その面白そうな乗り物は何ですか!それも私によこすのです!」
言うと思った。
「女子高生ゴーレムを倒してくれましたし、これくらいは構いませんよ。でもマリーさんは自分で飛んだ方が速いんじゃないでしょうか?」
「いいんです、これに乗りたいのです!乗りたい乗りたい!これに乗りたいのですー。よーこーせー」
子供か!
魔王だろ!
いや、ウチに居るのは子供の魔王ばっかだった。
まあ、この程度で友好関係が維持できるなら安いものだから、元よりあげるつもりだったけど。
予備の浮遊バイクを与えると嬉しそうに乗る。
「あはは、これは面白いです。大豊姫、私の後ろに乗せてあげるのです。」
「ほんとうですか!ありがとうございますマリーさん。私だけ飛ぶのって寂しいなって思っていたんです。」
大豊姫さん、まだいたんだ。
いつまでいるんだろう?
そんなこんなで、僕らは浮遊バイクでグロガゾウの街に向けて疾走した。
お読みくださりありがとうございます。
今後のネタバレ:追々フレンツ公国に大変なことが起きます。デルリカのせいで。




