どうしたロッキー!
ダーサが絵を見せて退室したあと、奈々さんは今朝はどうしたものか、このまま出かけるか、それともちょっとNHKワールドでも見てのんびりするかとぼんやりしていたら、ロッキーとルーシーがけたたましく吠えながら鉄製の門扉に体当たりする音を聞いた。
僕は以前、二匹のことを「シェパード」と書いた。一見そう見えないではない。ダーサにしてもバンダーラにしてもシェパードだと言い張るゆえ一応シェパード犬としておいたけれども、犬を知っている者であれば似て非なる種だと分かる。
なるほどロッキーの体に生えた黒い毛と白い毛はシェパードめいている。(ルーシーは黒と薄茶。)しかし、頭から顎にかけての毛がシェパードより長く、正面から見るとライオンのような顔つきをしている。バンダーラは、これを別名ライオン・シェパードとも呼ぶのですといった。彼の説では、ジャーマン・シェパードとライオン・シェパードとは同じもので、頭部の毛が長い犬である、と。キャンディーあたりで人気と見え、あちこちの家で飼われている。僕が考えるのに、恐らくシェパード犬と島犬のあいの子でないかしら。そしてまた、この新種が好評を博しつつある理由は、ほかでもない、ライオンに似ているから。セイロンの人、とくにシンハラ人は、非常なライオン好みなのである。(国旗を見よ)
そろって騒いでいたうち、どういうわけかロッキーははたと鳴りやみ、ルーシーひとりが頑張っているようなので、奈々さんがバルコニーへ出て見おろすと、門の外に男が立っている。庭の水まきをしていたダーサを呼び寄せて何やら相談中。あいだあいだに、「ルーシー!ぶっ!ルーシー!クールー!」とダーサは叱りとばす。ロッキーは門に前足を掛けて鼻をくんくんくんくん表を窺っていたと思うと、突然悲鳴に似た情けない声を出しはじめた。
ダーサは男と合意に達したらしく小首をゆらした。いつになく暴れるルーシーに縄をつけてクールーへ引っぱって行く。(クールーとは現地言葉で檻のこと。)閉じ込めても執拗に吠えるルーシー。ロッキーはその辺を行ったり来たりしている。
ダーサが戻ってくる。手には門を開ける鍵。
男を中にいれたとき、一匹のライオン・シェパードがロッキーに気兼ねするかの足取りで付いて入った。
「本当に愛くるしい顔。ロッキーだって一目ぼれしちゃう。けどおじさん、犬も人間も同じね。驚いちゃった。」




