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         1  婚約者

 マリエールに大嫌いな婚約者ロバートが、最愛の人が出来たのでお前との婚約は破棄すると言われた。喜んで応じた。

            1  婚約者      


 マリエール伯爵令嬢は二人姉妹の長女。人の羨む才色兼備、家の跡継ぎにするために厳しく育てられた。お陰で貴族学院ではトップの成績、礼儀作法は完璧、剣術にも優れ、魔法も全属性適性ありというチートだ。当然、婚約者も早めに決められている。子爵令息のロバートだ。そのロバートに、

「最愛の人が出来た。お前との婚約は解消する。」

と言われた。願ってもない幸運だ。マリエールはロバートのことが嫌いだ。怠け者で好色、無責任で傲慢、まるでいい所のない外れくじのような男だ、マリエールは、

「それは残念です。でもあなたに最愛の人が出来たなら仕方ないですね。婚約解消しましょう。」

ロバートはニッコリして、

「そうか、理解してくれるか。僕は最愛の人と幸せになる。君は君で最愛の人を探してくれ。」

何を勝手なこと言ってやがると思ったが、最悪の人と別れられて良かったと思ってので黙っていた。

 早速、父親の伯爵に報告して文句を言った。マリエールは、

「父上、ロバートに婚約破棄の宣告を受けました。最愛の人が出来たそうです。父上が勝手に婚約してその婚約者に勝手に婚約破棄されました。私はもう父上の勝手はこりごりです。自分のことは自分で決めます。」

それを聞いた伯爵は、

「ロバートがそんなことを言ったのか。見損なったぞ。マリエールも大変だったな。結婚前でまだ良かった。自分のことは自分で決めると言ったが、誰か思い当たる人でもいるのか。」

マリエールは、

「貴族学院では友達はいます。今迄婚約者のいる身でしたので婚約者候補、結婚相手とは見てきませんでしたから、今いるかどうかと言われたら、いませんけど、これからは自分で自分の好きな方を探します。父上の探しこられる人は、ろくな人はいないと判りましたから。」

伯爵は気分を害したようだ。

「ロバートは最低の人間だと思うが、婚約した時点で判るはずがあるまい。」

永遠に言い合いが終わらない。とにかく子爵家と婚約解消の話し合いをするのとしばらくは伯爵が婚約相手を探さないことは決まった。

 後日、ロバートを最愛の相手が商家の娘だと判った。跡継ぎ娘じゃない以上働き口を探さないとならない。子爵を伯爵が呼びつけてロバートの責任を追求した所、子爵は伯爵に詫びて婚約解消しないでくれと頼んだそうだ。後の祭り、幾ら伯爵がお人好しでもこればっかりは認めるわけにはいかない。伯爵は子爵から慰謝料を受け取り婚約解消をした。ちなみに、ロバートは最愛の人にふられたそうだ。ロバートはマリエールに対して婚約破棄したことと、最愛のふられたことが醜聞になって貴族学院を退学することになった。

 自由の身になったマリエールは伸び伸びと生きる。生き方を妨げる物は何もない。ただ自由に生きるだけだ。魔法の練習、剣術の訓練、読書---------------。伯爵家には自由に学べ、訓練する環境がある。冒険者登録可能な年になった。マリエ―ルは早速冒険者登録した。マリエールはアンドロイド魔法が使える。伯爵も承知のことだ。アンドロイドも一緒に登録した。マリエールはアンドロイドとチー厶を組んだ。

 マリエールは学院の休みの日にアンドロイドは連日冒険者活動した。冒険者活動をしばらく続けるうちに学院は夏季休暇に入った。冒険者の中にも貴族はそれ程珍しくない。マリエール以外の貴族の冒険者は当然いる。特に夏季休暇にはマリエールも連日冒険者活動に励むし貴族の冒険者にも良く顔合わせる。ルイスとは連日顔を合わせるようになった。マリエールはルイスに声をかけた。

「最近良く会うようになりましたね。連日ダンジョン攻略ですか。」

ルイスはにこやかに微笑み、マリエールに、

「そうです、ダンジョン攻略です。まだ5層辺りまでしか潜れませんが、やはり冒険者の憧れはダンジョンですよね。」

マリエールもニッコリ微笑み、

「私もダンジョン攻略専門です。私も5層辺りまでしか潜れません。良かったら一緒に潜りませんか。」

ルイスとマリエールは一緒にダンジョン攻略することになった。ルイスは鎧兜に剣を構えゴブリン達を攻略した。マリエールも鎧兜に剣を構えゴブリン達を攻略した。他アンドロイド達は拳でゴブリン達を攻略する。午前中に5層まで潜った。マリエールはルイスに提案した。

「もう少し下まで潜ってみましょう。」

6層からはオークがいた。ゴブリンのようには容易くいかない。ルイスとマリエールとアンドロイドが連携してオークを倒していった。

 ダンジョンを出て冒険者ギルドに戻った。換金してテーブル席に着いた。ルイスも一緒だ。二人は自己紹介しあった。ルイスから自己紹介した。

「ルイスと言う名前は言ったね。伯爵の3男で貴族学院の最終学年の4年生だ。将来は冒険者になりたいと思っているけど、親からは役人になれって言われている。君の名前は知っているよ。マリエールだろ。有名だからね。成績抜群で全魔法属性適性ありというチートなんだろう。確か3年生だったよね。」

お互いに自己紹介しあって、学院のこととか、趣味とか将来の展望とか語りあった。翌日の冒険者ギルドの集合時間を確認しあった。

 数日が過ぎた。ついに10層のボス部屋だ。ゴブリンキング、オークジェネラル、オークキングの3頭がいてどれも強い。ゴブリンキングの相手をルイスとマリエールがして、オークジェネラルとオークキングの相手はアンドロイドがした。ルイスは剣でマリエールは魔法でゴブリンキングの相手にした。ルイスは流石に将来冒険者を目指すと言うだけあって、剣技に冴がある。魔法も3属性の適性があって時々魔法攻撃も使う。ゴブリンキングにトドメを刺したのは、ルイスの剣だ。ゴブリンキングにトドメを刺した頃オークジェネラルとオークキングもトドメを刺された。魔石とドロップアイテムを回収して宝箱を開けた。金貨と宝石入っていた。ルイスは思わぬ財宝に感激した。

 冒険者ギルドに立ち寄り、10層のボス部屋の攻略の報告と魔石やドロップアイテムの換金した。ルイスは、

「ありがとう、君達のお陰で10層のボス部屋を攻略出来たよ。ボス部屋のゴブリンキングは僕一人じゃとても敵わなかったよ。オークジェネラルやオークキングなんてとてもじゃないが無理だよ。これからよろしく頼む。」

11層以降もルイスは懸命に努力して下層に進んだ。剣術、魔法の力も共に上がった。後、数日で夏季休暇が終わろうする頃、20層ボス部屋まできた。相手はオークジェネラル、オークキング、ベアーだった。ルイスとマリエールはオークジェネラルに挑んだ。オークジェネラルは体格も大きく力も強い。剣も通じないし魔法も通じない。マリエールは、

「目よ。目を狙うのよ。」

ルイスは剣でオークジェネラルの右目を狙い、マリエールは魔法でオークジェネラルの左目を狙った。両目を失ったオークジェネラルは雄叫びを暴れ回った。マリエールは、

「トドメは心臓への剣の突きよ。」

ルイスはオークジェネラルの心臓へ剣を突いた。マリエールはオークジェネラルに電撃を喰らわせた。オークジェネラルは消滅した。魔石とドロップアイテムを回収した。宝箱の中身は10層よりも豪華だった。

 学院に通うようになってもルイスとマリエールは盛ん会った。昼休み、放課後は必ず会った。ルイスは、

「君やアンドロイド達は本当に凄いよ。僕達はもうDランク冒険者だけど、僕だけなら多分Fランク冒険者のままだったろう。みんな君達のお陰だ。君達さえ良かったらずっと一緒にチー厶でいて欲しい。」

「それはあなた次第よ。誠実に努力して、剣術や魔法の力をつけること、私やアンドロイド達の信頼を得る努力を続ければきっと叶うわ。」

学院の休みの日には、ダンジョン通いを続けた。確実にルイスの剣術や魔法の力が伸びた。マリエールと一緒に競っても遜色ないようにみえた。30層のボス部屋はオークキング、ベアー、アナコンダだ。ルイスとマリエールはオークキングを受け持った。ルイスの剣はオークキングに通用した。ルイスは4属性目の火魔法の適性に目覚め、剣に火魔法を纏わせオークキングに斬り掛かった。火剣である。侵掠すること火の如し。風林火山の一節だ。火剣は剣撃の威力を高める。これまで通じなかった剣撃が通じる。剣に火と同時に乗せられる魔法は風魔法と土魔法と闇魔法だ。風魔法は剣撃を速くし、土魔法は剣撃を重く強くし、闇魔法は破る力を高める。ルイスの剣に纏わせる魔法は火魔法だけだが今の場合は十分だ。オークキングは大きく揺らぐ、マリエールのアイシクルランスがオークキングに突き刺さる。ルイスの火剣がオークキングの首を刎ねる。30層の宝箱は20層よりも豪華だった。30層には転移陣があった。次回以降ここから始められる。

 マリエールのアンドロイド達は幾つかの冒険者チー厶を作っているいずれもこの国の未踏破ダンジョンを攻略中である。未踏破領域を進行中の冒険者チー厶が幾つかある。マリエールとアンドロイド達はいずれも共有アイテムボックス、フライ、転移、複製と全魔法属性適性ありのチートがある。剣に纏わせる魔法も多様だ。水魔法を纏わせた温度を操る凍剣、光魔法を纏わせた魔を祓う祓魔剣、神聖魔法を纏わせたアンデッドや呪いを祓う神聖剣、勿論、火と土と風と闇を纏わせた最強の剣を作る出すことが可能だ。ただし過剰な魔法を纏わせることは、事実上剣の強度と魔法の通り易さの関係で完全な魔法剣つまり魔剣を作ることは不可能とされていた。ところが、アンドロイド達が未踏破領域のダンジョンを攻略中、それを可能にする金属を発見した。ミスティル銀、アダマンタイト、オリハルコン、ヒヒイロカネがそれだ。どんな剣よりも固いアダマンタイト、どんな剣よりも鋭いヒヒイロカネ、どんな攻撃をも払い除ける盾、鎧、兜を作るオリハルコン、魔法を自由自在に流す杖作るミスティル銀、用途により使い分けることが可能だ。戦況を一変させる武器とも言える。他にもチタン、クロム、ニッケル、タングステン、アルミニウム、金、銀、プラチナ、宝石など、様々な金属や宝石が出てきた。複製して加工してまた複製する。

 完成したアダマンタイトやヒヒイロカネの剣やオリハルコンの盾や鎧、兜やミスティル銀の杖はマリエールやアンドロイド達の共有アイテムボックスの中にある。マリエールは、ルイスに尋ねた。

「ルイスはアダマンタイトやヒヒイロカネの剣、オリハルコンの盾や鎧兜、ミスティル銀の杖、どれが欲しい。」

「それはどんな物だ。」

「どんな剣よりも固いアダマンタイトの剣、どんな剣よりも鋭いヒヒイロカネの剣、どんな攻撃をも防ぐオリハルコンの盾や鎧兜、魔法を自由自在に操るミスティル銀の杖のどれが欲しい。」

「それではヒヒイロカネの剣だ。」

「今度の冒険の時、渡すわ。」

ルイスはヒヒイロカネの剣を渡され、ダンジョン攻略がスムーズになった。苦戦するはずの敵が容易に倒せたり、大軍を薙ぎ払えたりできるせいだ。

 未踏破ダンジョンの未踏破なる所以はアンデッドの層が10層あるためだ。何の対策もなくアンデッドの層を10層踏破することは至難の技だ。何らかの対策が必要だ。聖女が何十人、僧が何十人いようとも成し遂げられない。ルイスには神聖魔法を纏う剣、神聖剣が手に入った。5つ目の魔法属性の適性が手に入ったのだ。遂にルイスは未踏破領域に進出した。神聖剣でアンデッド達を薙ぎ払った。死なないアンデッドはただ消滅するだけだ。神聖剣さえあればアンデッドの層は他の層よりも進み易い。ただ進行すればアンデッドは自ずと消えて行く。60層のアンデッドの層のボス部屋はオーガのアンデッド、スケルトン、ゾンビの集まりであったが神聖剣の前では無力であった。宝箱には豪華な財宝の他聖剣エクスカリバーがあったのは偶然だろうか。聖剣エクスカリバーは手元に置いて分析しても構わないのだろうか。それとも国王に献上すべきだろうか。伯爵にお伺いべき案件だ。

 ルイスも将来を見据えた行動をすべき時が来た。5属性の魔法の適性を得た今、このまま冒険者でいていいものかそれとも伯爵の言う通り役人になるべきか。冒険者のままいるにしてもマリエールは何時までも当てにすべきではないだろう。マリエール抜きでこれまで通りには冒険者として活躍できないだろう。マリエールだって何時までも冒険者のままというわけにはいかないだろう。彼女には将来伯爵としての役割がある。ルイスはマリエールに聞いた。

「マリエールは何時まで冒険者を続けるつもりだい。伯爵としての役割があるのだろう。」

「何時までって何時までもよ。私にはアンドロイドがいるわ。自分で行けなくてもアンドロイドが行ってくれるわ。アンドロイドが行けば情報は私に伝わるから私が行ったのと同じことだわ。指示も報告も出来るし受けられるわ。不便はないわ。私が行けなくなってもあなたがアンドロイドと一緒に行ってくれるならその方がありがたいわ。休憩の指示を出さないと一日24時間年365日活動しずめになるから活動停止の指示を出せる人が必要だわ。もしも、その人が私の伯爵家で伯爵家の仕事を手伝ってくれたら嬉しいわ。」

別にマリエールがルイスに婚約者になれと言っているわけではないのだろう。婚約破棄された痛手は察しがつく。今どうこうするという話しではないはずだ。冒険者活動を続けたいと望む僕に救いの手を差し伸べて。確実に成功する手段を差し示す。ついでに役人擬きになれと呈示する。僕にとっては冒険者活動が続けられるメリットと役人擬きをすることで父親の承認を取りやすいメリットがある。マリエールにとっては特定の男を手中に収めることにより婚約者擬きとしてしばらく親や周りを誤魔化す材料になる。そんな話し一度もしていないにも拘らずだ。都合が悪くなれば何時でも切り捨てられるただの物。婚約者擬きであって婚約者ではない。役人擬きであって役人ではない。冒険者擬きであって冒険者ではない。なんて僕にとって相応しい立場ではないか。僕はマリエールに伝えた。

「喜んでなるよ。その中途半端な立場を。親はもっとはっきりした立場になれっていうかも知れないけど、僕にとってはその中途半端な立場こそが丁度いい。冒険者擬きであって冒険者ではない立場こそが丁度いいよ。自分の実力は自分が一番知っているからね。こんな都合のいい立場を今更人に譲れないよ。婚約者擬きでいい。誰かが本気で突っ込んできたら何時でも切り捨てられるように。お互いに都合のいい関係でいよう。」

ルイスは自分がマリエールの婚約者になりたいのかどうか良く判らない。婚約、結婚が自分にとって現実味がない物であることは確かなことだ。だから婚約者擬きが丁度いい。マリエールは、

「あらそう、それは丁度良かったわ。あなたはあなたの伯爵に伝えて頂戴、私は私の伯爵に伝えるわ。あなたが卒業した後、あなたが私の伯爵の元で働いてくれるって、良く伯爵に言っておくわ。仕事を教える程度でとどめなさいって。何事も中途半端が丁度良くってよ。真剣になればなるほど馬鹿を見るものよ。中途半端でいれば何があっても笑って済ませられるでしょう。」

ルイスはマリエールのいう中途半端な生き方を受け入れた。しかしルイスは、真剣にことに当たった。伯爵家の仕事を真剣にこなした。伯爵が驚くほどに。冒険者活動も真剣にこなした。アンドロイドの一体が飛ばし過ぎだと言うほどに、マリエールとも真剣に接した。マリエールが婚約者でもないのにと言うほどに。ルイスはこれでいいと思う。全てが幻であってもその時にはそれなりの真実がある。

 未踏破ダンジョンの未踏破領域もどうやら最終地点にさしかかったようだ。121層はだだっ広いドラゴンのいる領域だ。フライの魔法が使えて良かった。天井が高過ぎて、地面から魔法を放っても届きはしない。ドラゴンはブレスを放ち放題だ。フライで飛んでドラゴンを囲んだ。アイシクルランスの一斉射撃だ。効果はないようだ。ドラゴンはブレスを放った。アンドロイドの一部が吹き飛ばされた。ルイスは残った全員に剣を構え火と土と風と闇の魔法を纏わせるように指示をした。一斉に斬り掛かってドラゴンを始末した。ドラゴンの魔石とドロップアイテム、財宝と宝剣、未踏破ダンジョン踏破に相応しい宝の数々だ。ルイスは誇らしい気持ちを感じた。マリエールとは拳と拳をぶつけ合って感動を伝えあった。マリエールは、

「自分達で未踏破ダンジョンを踏破するのもいいものね。」

と言った。ルイスは、

「そりゃーそうさ。なんたって未踏破ダンジョンの踏破したんだもの。こんな感動またとないよ。」

ルイスは知っている。別にルイスが頑張ったから未踏破ダンジョンを踏破出来たわけのではないことを。でもルイスやマリエールも頑張ったことを知っている。ゴブリン討伐に始まりドラゴン討伐に至るまで我々は頑張ってきた。その事実に嘘はない。未踏破ダンジョン踏破の結果はルイスとマリエールの結果でもある。ルイスとマリエールの努力こそに意味があることを二人は知っている。ルイスは言った。

「また未踏破ダンジョンを踏破しよう。」

マリエールは、仕方ないなという風に、

「たった今踏破したばかりよ。もう次のダンジョン。ダンジョンばかりが冒険者の仕事じゃないと思うけど。」

満更でもないようだ。マリエールはアンドロイドに一番近い未踏破ダンジョンの情報提供を指示した。

「ここから南へ10kmほど行った所にある海辺のダンジョンが一番近い未踏破ダンジョンです。海辺のダンジョンだけあって海の魔獣が出てくることで有名です。」

海の魔獣と言えば、クラーケン、シーサーペント、リバイアサン、大王イカ、ジョーズ、オルカなのが思い浮かぶ。どれも巨大で凶暴な魔獣だ。ことにクラーケンは出現件数が多く海上交通に深刻な影響を与えている。マリエールは、

「海の魔獣か。できれば会いたくないな。」

ルイスも同意見ではある。しかしアンドロイドに限って言えば不可能ではないはずだ。戦闘の場所が海中であること、相手が巨大で凶暴な魔獣であること、不利な点ばかり目立つが避けて通れない気がする。ルイスは、

「こちらを避けて次のダンジョンを選ぶか、海辺のダンジョンを選ぶかだろ。海の魔獣と戦ったことがないだろう。戦っていない魔獣に苦手意識を持つのは間違っていないか。」

海の魔獣と戦う場合ルイスとしては頑張りようもない気がするが、剣が振るえないわけではない。頑張りようはあるはずだ。マリエールは、

「ルイスがどうしてもと言うなら試してはみるけど、明らかに不利だわ。無理は承知で戦ってみるけど勝ち目がないと判った時点で引き上げるわ。」

無敵の戦士アンドロイドに勝ち目がないということがありえるだろうか。見たこともない巨大で凶暴な魔獣という先入観がマリエールにそう思わせているだけではないだろうか。

 早速、海辺のダンジョンの冒険者ギルドに出かけた。この冒険者ギルド職員は優しい、ダンジョンの説明をしてくれた。

「ダンジョンの1層目はフードダンジョンと呼ばれています。小さな魔獣しかいません。ホーンラビットとか仔豚とか、海の魔獣も小さな物ばかりです。キスとかハゼとかカニとか。安全ですので年齢制限せずに人を入れています。街の住民も多いですが、孤児院の孤児達が多いです。ドロップアイテムが食料です。ドロップアイテムしか出ません。一層に限ってはドロップアイテムの買い取りはしていません。薬草だけ買い取ります。2層から30層までは普通のダンジョンです。割りと簡単なダンジョンなので初心者に人気があります。31層からは海のダンジョンです。あまりに厳しいダンジョンなので、挑戦する人が殆どいません。挑戦しても攻略できる人がいません。何しろ、始めの相手がクラーケンですから。」

とにかくダンジョン攻略を始めることにした。2層からだ。以前攻略したダンジョンの低層と同じような作りだが10層まではゴブリンしか出なかった。ボス部屋はゴブリンジェネラルとゴブリンキングだ。11層からオークが出てきた20層のボス部屋はゴブリンキングとオークジェネラルだ。21層からはオークの中にジェネラルやキングが混じる程度だ。30層はオークジェネラルとオークキング、あっさりと終わってしまった。

 31層は海の中に島がポツンと一つあるだけの殺風景な絵面だ。あの島がダンジョンなのだろうか。取り敢えずここまで確認して冒険者ギルドで換金と聞き込みをすることにした。受付嬢は、

「今迄31層に行った人にフライなんて使える人なんていなかったですから筏であの島で渡ろうとしたらしいわ。殆どの人はクラーケンに襲われたらしいわ。島まで渡った人はいるけど帰ってきた人はいないから島の詳しい情報はないわ。あなた達がフライで島に渡る始めて人達だから、情報を集めて報せて頂戴。無理はしないでね。海の魔獣に挑んで生きて帰った人はいないのよ。」

取り敢えずここまで聞いた。後は転移してフライで島に渡りダンジョン攻略するだけだ。

 一旦屋敷に戻り、ルイスは伯爵家の仕事、マリエールは貴族学院、貴族学院も残すところ後半年、今のところ万能美少女の地位は揺るがない。成績抜群、剣術敗け知らず、全魔法属性適性ありのチートは磨きがかかっても揺るがない。何しろ転生者の知識と転生特典故だからちょっとやそっとでは揺るがない。新たな領政にも検討しているところだ。複製魔法は何でも複製できるが何千トンも複製できるわけではない。高価な物の複製して効果的に利用しなければならない。自ずと貴金属、レアメタル、アダマンタイト等の希少金属、宝石、ジュエリー、高級酒、ブランド商品が狙い目になる。そういった複製物を有効的活用する手段を考えていかなければならない。伯爵とルイスには既には話してある。既に金山、銀山には生産量の上乗せをしている。ダンジョンの宝石として宝石の上乗せもしている。アダマンタイト、ヒヒイロカネ、オリハルコン、ミスティル銀は共有アイテムボックスの中にある。高級ワイン、ウィスキー、ブランディー等の生産はルイスが担当する。ルイスを助けるためにマリエールはアンドロイドを貸し出す。ルイスは全ての複製の業務を担うためにマリエール商会を作る。マリエール商会は酒造メーカーの中心になる。続いて宝石、ジュエリーの中心となった。金の取り引き、銀の取り引きの中心にもなった。続いて武器の取り引きの中心にもなりアンドロイドの剣、ヒヒイロカネの剣、オリハルコンの盾、鎧兜、ミスティル銀の杖売り出した。10%クロム鋼は錆びない剣の材料として好評をはくし、チタン合金やアルマイトは軽い鎧兜の材料として好評をはくした。ルイス率いるマリエール商会、アンドロイドという戦闘能力を持つ商会として他を圧倒した。

 海辺のダンジョンの31層に進んだ。ルイスとマリエール達はフライで島に渡った。島のほぼ中央に大きな建物があった。これがダンジョンの入り口だと判った。

 マリエールは冒険者登録して冒険者になった。夏季休暇になってルイスに会った。しばらくして声かけた。一緒にダンジョン攻略しようと。

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