凋落の地下遺跡3
「……奥に魔物の群れがいますね」
俺は通路の角に隠れながら言った。
浮遊する瞳の『ゲイザー』、手にそれぞれ斧やら鉄槌やらを持った身長二~三メートルほどの緑の亜人種『オーク』の混成、数はざっと十数体。
奇襲に備え櫂杖を構える。同時にあらかじめ攻撃スキルの準備をしておく。
コメント
・多いな
・スルー推奨
・先手は取れても後がキツい
・パーティー組んでても面倒、ましてやソロじゃ無理
「コメントは撤退が主流みたいですね。ただずっと向こうに宝箱らしきものが見えるんですよね。分かります?」
俺は精霊さんの位置を調整し、通路の奥を映す。
コメント
・どこ?
・あった
・だいぶ遠いな
・いや絶対罠あるでしょ
・通路に設置とか
・露骨に誘ってるな
リスナーの指摘通り、通路の真ん中に赤い箱がぽつんとひとつ置かれている。
「ぱっと見の雰囲気では箱そのものではなく通路など周辺に罠を仕掛けてるパターンですかね。まあ根拠が薄いので断定できませんが、ひとまずそれを念頭に置きましょう」
コメント
・なるほど
・まさか行くつもり?
・あれは止めといたほうがいい
・罠以前に敵が多杉
「そうですよね。明らかに多勢に無勢ですし。タフなうえ一撃が重いオークと空中から攻撃してくるゲイザーという組み合わせも嫌らしいです」
コメント
・先制〈インフェルノバンカー〉でまとめて吹っ飛ばせない?
「無理ですね。まず発動難易度が高いため時間がかかります。しかも術式に集中しなきゃならないのでその間あまり動けません。規模も大きいスキルですので準備段階で盛大に放出されるマナの波長と発光現象も容易に察知されるでしょう。ゲイザーの探知能力ならなおさらです」
コメント
・ほうほう
・そもそも運用難しいロマン砲で有名
・本来なら味方の支援が必須だからね
「あとこうした通路内で撃つのは避けたいですね。威力が高すぎて壁や天井が崩れてエラい目に遭ったこともありますし。さらには他探索者への誤爆、消費の重さなどなど、普段使いにはまったく適さないスキルなのです」
"雷霆の座主"戦では様々な条件がカッチリかみ合っていたからこそだし、それでもボスや周辺ザコに察知されてうっかり殺されかけることなど何度もあった。
コメント
・なるほどー
・基本動きの遅いボス向け、それでも扱いづらさが勝つ
・じゃあなぜ覚えたしw
「ロマンですが?」
コメント
・草
・草
・草
・覚えるにも手間かかるだろうにw
・俺は好きだぜそういうの
「とにかく『状況的に不利なのでスルー』がみなさんの総意っぽいですね。俺もその判断が妥当だと思います」
コメント
・やな
・そもそも不要な戦闘は避けるのが探索の基本だし
・素材収集が主眼でもあれは止めるのがベター
・勇気と無謀は違う
「はい。ところで話は変わりますが、みなさんの大半が初見の方だと思います。まだ俺についてをよく知らないって方が大多数だと思いますのでひとつお伝えしておきたいことがあります」
コメント
・おう?
・なんだ?
・ん?
・どうした?
「俺こと堂崎大地はですね。こういう困難な状況を見ると
つ い ヤ ッ ち ゃ う ん だ 」
俺はパドルロッドを手に勢いよく角から飛び出し魔物の群れに突っ込むっ!!
コメント
・!?
・!?
・行ったぁ――!?
・草
・おいぃ!?
・マジかこいつ
「はい始めましてのご挨拶〈ファイアボール〉!」
杖先端から準備を終えていた火炎魔術スキルを発射。目標は手前のゲイザー!
命中! 不意打ちの一発をモロに食らった目玉オバケは丸焦げになって床にボトリと落ちる。
「ヒャッハァァァァァ――――――ッ!!」
奇襲の勢いを殺さず立て続けにオークに襲いかかる。動揺を見せる緑の巨体に飛びかかり、手にした杖を振るう!
『GYAッ!?』
木製鈍器の一撃をまともに頭部に食らいタフさ自慢のオークもたまらずよろめき片膝をつく。
その肩を足がかりに跳躍、空中のゲイザーに大上段から思いっきり振り下ろす。
『……ッ!?』
それほど耐久力の高くない目玉オバケを強引に地面へ叩き落とす。着地と同時に追撃。渾身の一撃を無抵抗で食らった魔物はそのまま赤紫の煙となって消えた。二体目撃破。
事ここに至って魔物たちはようやく混乱から立ち直り、身構える。俺も少し距離を取って相対する。
「っしゃ来いやぁぁぁぁ――――――ッ!!」
コメント
・蛮族すぎるw
・バーサーカーかな?
・やべー奴じゃんw
・直前に冷静な分析しといてコレだぜ?
・狂ってるよぉ
ナナミン・やっちゃえ!
コメントをチラ見しつつ、俺は群れに向かって雄叫びを上げた。
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