凋落の地下遺跡11
「いやあ……"昔日の叡智"は強敵でしたね」
ボスの魔石を回収してから精霊さんに向けて言った。
コメント
・他人事みたいに言うなw
・ガチでソロ討伐しやがった……
・すげええええええ
・強すぎるやろ
・おめ!
ナナミン・おつかれー
・当然のように被弾ゼロかよ
・最後のアレなんで避けられるんだ……?
・背中に目ついてんのかこいつ
「まあ途中イレギュラーな事態が起きましたが。でもなんとかなるもんですね。『奴の赤い本叩き落として蹴り飛ばすとキレて障壁を武器にし始める』、ぜひ今後の攻略の参考にしてください」
コメント
・このダンジョン小僧さあw
・さわやかな笑みで言う事ではない
・サイコパスかな?
・言うて武器を本体から離すのは普通は妥当な戦術だし……
・殺るか殺られるか(疑似)の戦いだからね。しかたないね
「念を押してもっぺん言っときますが、ダンジョンと地上じゃ思考は別物ですからねー。俺が普段から他人様の本を足蹴にする奴だとは思わないでくださいねー」
気にしすぎか? とも思うがいちおう弁解しておく。
いや本当、普段はごくごく普通の高校生だよ? 鈍器振り回してヒャッハーなんてしないよ? 客観的にそう言える程度には自覚あるよ?
だがダンジョンに入ると途端に意識が切り替わるのだ。
さながらネクタイ締めると仕事モードに入るサラリーマンよろしく、俺はダンジョン用装備を身につけると思考がダンジョンモードとなるのである。
「ただ、あんな想定外の事態が起こったにしては普段と討伐タイムが変わってないんですよね。この『狂魔のバンダナ』のスキル威力増幅効果のおかげでしょう」
コメント
・強い
・攻撃力上がってるからな
・マナ消費は増えるけど使いこなせてる感じじゃん
・やるな
「そうですね。このバンダナ、今後も末永く相棒としていくつもりです」
マナ管理がシビアになる点こそネックだが、それは俺の立ち回り次第でどうとでもできる。探索者として上を目指すためにもリスクがあろうが積極的に乗り越えていかねばなるまい。
「では"帰還の間"で報酬を入手しましょう」
俺は広いボス部屋を突っ切り、その奥にある大きな扉を開いて中へ入る。
通路っぽい縦長の部屋の中央に、ひとつの宝箱が置かれていた。
さすがに宝物殿に罠が仕掛けられていることはない。一切警戒することなく箱を開けた。
「……中身は魔石と簡易術技巻物ですね。そこまでレアな品という訳ではありませんでした」
各ダンジョンの宝物殿に用意される報酬は時間が経つほどグレードアップしてい
く。
魔石はどんどん大きくなり(=高額で売れる)、アイテムや素材もより貴重なものが用意されるようになる。
言い換えれば、長期間誰にも攻略されていないダンジョンほど宝箱の中身が豪華になっていくのである。
対して今回攻略した"凋落の地下遺跡"はそれなりに探索者が入る。というか俺もよくソロ攻略してきた。攻略成功者もたまに現れるため報酬はそこまで豪華になりづらいのである。
コメント
・でも独占できると考えれば悪くないじゃん
・ソロ探索者の利点
・俺より収入多そう
・まあ探索者って収入は多いが不安定で、しかも支出も多いから黒字出すの割と難しかったりするんだよな
・探索業だけで生活できる奴はそれだけで有能探索者
リスナーコメントの通り探索者の収入は不安定である。
難易度の低いダンジョンで入手できる報酬はさして高額で売れないし、トレジャー運や討伐報酬運にも左右される。
一方で消費アイテムの補充や装備品の手入れ――たとえば装備の術式も劣化して効果が落ちたりするので、専門業者に頼んで都度刻み直して性能を維持しなければならない――などの出費は馬鹿にできない。
現代において『専業の探索者に憧れる』という者は少なくない。特に俺たちのような"生まれた時からダンジョンが存在している"世代ではすっかり定番の進路志望先となっている。
だが実際にはそれだけで生活していくのは決して楽ではない。高い能力は必須であるし、そこまで実力を磨き上げるのもひと苦労。さらには豊富な知識も経験も欠かせないうえ"辛い怖い痛い"の三拍子にも耐えなければならない。
結局"暮らしていける"程度の収入であれば探索者は割に合わない、そう考えて転職してすっぱり引退するかあくまで副業に留めておく……そうした者もまた少なくはないのである。
それでも学生であれば『リアルなRPG』と『アルバイト』半々の感覚でやっていける。政府・自治体から各種支援を受けられる――たとえば武具含めた基本的な探索者用品を無料もしくは格安でレンタルできるなど――ためだ。
なんでもステータス成長やスキル熟達の効率は十代がもっとも優れているらしい。魔石は資源問題解決の大きな糸口であり、その収集の担い手を育成するためにも多くの先進国が十代若者のダンジョン探索を積極的に支援している。
日本も例に漏れない。十三歳になれば誰でも簡単な試験を受けて探索者免許が得られるし、ダンジョンにも挑めるようになる(十五歳になるまでは色々と制限はつく)のである。
閑話休題――
「まあこれにて"凋落の地下遺跡"攻略は完了となります。あとは帰還門で地上へと戻るだけですので、本日はここで配信終了といたします」
コメント
・おつー
・おつかれさまでしたー
・おもしろかったぜ
・単なる一発屋で終わりそうにない逸材だった
・不可能をひっくり返した男は伊達じゃなかったな
ナナミン・牛乳ないから買ってきて
「はいはい牛乳ね。……おっと」
コメント
・ん?
・おや?
・お?
・身内?
・知り合い?
・コメントで連絡すなw
コメント欄が軽くざわつく。
しまった、いつもの調子で私的な返事しちまった。
俺も七海もリスナーがほぼいない状態に慣れていたからな。ナナミン、ダンジョン内じゃスマホ電波届かないからって買い物頼むのにこうしてコメント欄使うことがあるんだよな。
……いや。案外ミスじゃなくて、俺の妹だと隠す必要がないと思ったのかも。
そもそもリスナーにバレてもOKだからこそ、これまで連絡に使っていた訳だし。この配信する前にも本人から『リスナーさんにナナミンがお兄ちゃんの身内だって知られても別にいいよ』と言質も取っているし。
「あーすみませんでした。……言っていいか?」
いちおう確認。
コメント
ナナミン・いいよ
「紹介します。ナナミンってのは俺の妹です」
コメント
・!?
・ガタッ
・ガタッ
・ガタッ
・ガタッ
・ガタッ
・ガタッ
・ガタッ
・お前らw
待ちなさい。
なぜここで高評価数が跳ね上がるんだ。
お読みいただきありがとうございます。
『面白い』『続きが気になる』と思われた方は下部からブックマークおよびポイント評価(☆マーク)をお願いいたします。
執筆の励みになります。




