エピローグ ハイエルフ美少女は夢の続きを見る
人生には、いろいろある。
乙女ゲームが好きすぎて、ライトノベル編集者になったり。
担当作家のボツ原稿を横流しした金で、担当ホストにシャンパンタワーを建てたり。
過労とカフェインでうっかり死んだり。
その勢いのまま、なぜか三回も異世界転生したり。
三回目の転生先で銀髪ハイエルフの公爵令嬢になり、公開断罪イベントで婚約者だった王太子の顔面を殴り飛ばし、廃嫡されて神殿送りになったり。
そこで押しかけ聖女候補とちょいギャルエルフを引き連れ、数万人の奉光を浴びて歌ったり。
まあ、そのへんまでは、百歩譲ればいい。
問題は――
そんな滅茶苦茶な人生を、私はいま、心の底から楽しいと思っていることだ。
もしかしたら。
これは、編集部の机でカフェインの錠剤をエナジードリンクで流し込み、そのまま倒れた私が泡を吹きながら見ている、長い、長い夢なのかもしれない。
この世界も。
神殿も。
リゼリアも、リュミエも。
全部、酸欠寸前の脳が最期に見せている、出来の悪い走馬灯なのかもしれない。
もし、この世界が本当にどこかに存在していて、このライブシーンがアニメ化されたとしても。
海外勢に切り抜かれ、違法アップロードされるくらいの神作画になるとは限らない。
予算の足りないCGで髪もスカートもカックカクに揺れて、伝説の作画崩壊回として話題になるかもしれない。
原作者がSNSでブチ切れて大炎上。
担当編集は編集長に役員室へ連行され、初版の大半が社員配布で消えた社長のハードカバーの著書を投げつけられているかもしれない。
円盤は爆死。
二期の企画は、会議に上がる前に消滅。
そんな世界線に、私は立っているのかもしれない。
それでも。
握ったリゼリアの手は、あたたかい。
反対側から抱きついてくるリュミエは汗だくで、背後に並ぶ同期たちは、みんな肩で息をしている。
客席から押し寄せる歓声は、耳が痛くなるほどうるさい。
降り注ぐ奉光は、目を開けていられないほど眩しい。
夢かどうかなんて、どうでもいい。
いま、この瞬間。
私は、確かにここにいる。
仲間たちと、一緒に。
夜空を埋める星々のような奉光の海を見ながら。
私はいま、このヒドい異世界で――
大聖女という、世界のセンターを目指している。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本作は、もともとカクヨムで連載していた作品でした。
ミリエルたちの物語を少しずつ育てながら、ゆっくりと書き続けてきました。
そんな折、第1回ブシロードワークス小説大賞の開催を知り、「この機会に、ミリエルたちを最後の舞台まで連れていこう」と一気にアクセルを踏み込みました。
この物語を書き上げるきっかけをくださった、ブシロードワークス小説大賞を開催してくださった皆さまに、心より感謝いたします。
そして何より、ここまでミリエルたちを見届けてくださった皆さま。
本当にありがとうございました。




