王都
「見えたぞ」
砂漠の向こうに、街が見えた。
(あれが、王都……)
サラダールの王がいる。
騎士団も——。
「そろそろ地上へ降りるぞ」
「どうして」
「王都への、空からの侵入は禁止されている」
「? 」
「上からの攻撃は、有利だ」
「あ……」
二頭のパギリングは地上へ降りた。
王都へ近づくスピードが、ぐんと落ちた。
(こんなに違うのか)
ようやく王都を取り囲む城郭のそばまで来た。
門番が、身分や通行証をチェックする。
「どうぞ」
門をくぐった。
ざわ……と、喧噪に包まれた。
城郭の内側には、生活が息づいている。
(ワーフの街も人が多かったけど、雰囲気が全然違う)
水路がない。
街路樹も少ない。
建物と人ばかりだ。
どこか、味気ない。
「降りよう」
三人は、パギリングを降りた。
引きながら、歩いていく。
街の雑踏から抜けだし、わき道へそれた。
ふたりは、一言も話さない。
建物に挟まれた、迷路のように入り組んだ道を進んでいく。
——突然
レイフが、アリフを突き飛ばした。
ドッ! と背中を壁にぶつけた。
体を何かがかすめた。
トトトッ——足元にナイフが突き刺さる。
キンキンッ。
レイフがまだ飛んでくるナイフを捌く。
ダールは、顔も見えない人影と戦っている。
(お、俺も……)
アリフはレイフからもらった剣を出そうとした。
レイフが、ダールを襲う敵を切りつけ、煙幕を投げた。
——ボンッ……!
煙で何も見えない。
腕を引かれ、そのままグンッと放り投げられた。
(イテッ!)
穴に、尻から落ちた。
「……シッ」
レイフの手が、アリフの口を塞いだ。
ダールもそばにいる。
狭い穴の中だ。
どこなんだ。どうなった……?
「……」
三人は微動だにしなかった。
——どれくらい、そうしていたのか。
アリフの口は、レイフの手に塞がれたまま。
心臓だけが早鐘を打っていた。
……やがて、
ダールとレイフが目くばせし、軽く頷いた。
「もう、大丈夫だ。気配が消えた」
レイフが囁いた。
アリフたちは、道ではなく、建物に挟まれた狭い横穴のようなところにいた。
「王城への抜け道だ。いったん避難した」
「行くぞ」
狭い通路をひたすら歩く。
どれだけ進んだのか、わからない。
「アリフ。狭い場所での近接戦には、長剣は不向きだ」
歩きながら、レイフが言った。
「……あ、そうか」
「短剣の使い方も覚えておくといい」
「うん……」
ダールが止まった。
「……少し待て」
壁の継ぎ目を、ゆっくりと指でなぞる。
「……ここか」
ボコリと石がひとつ壁から取れた。
中の石を、ゆっくり押し込む。
ズ、ズズズ……。
隣の壁が動いた。
——眩しい。
外だった。
壁の中から出た。
生い茂る蔦をかき分けると、そこは美しい中庭だった。
水路が作られ、柑橘系の木々が生い茂っている。
砂漠の都市らしい造りだ。
「王城の祭祀宮にある庭だ」
「王城の中に、祭祀宮があるんですか? 」
「神事も、王の勤めのひとつだからな。祭祀長や神子たちは、祭祀宮の一角に住んでいる」
「広いんですね……」
「騎士団本営も、王城の敷地内にある」
「え、騎士団も?」
「それぞれ、隣町ほど離れているがな」
(マシュアもいるのか……)
「基礎訓練を終えた騎士は、各地へ赴任される。王都にいるのは、基本、近衛だけだ。」
あ、そうなのか……。
マシュアがここにいるとは限らない。
中庭を横切り、回廊の屋根の下へ入る。
美しいモザイク模様の壁には、また仕掛けがある。
ダールがそれを外すと、ガクンと壁が下がり、通路が現れた。




