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砂漠の聖都  作者: 神代奈々
第3章 旅立ち
32/37

王都



「見えたぞ」


 砂漠の向こうに、街が見えた。



(あれが、王都……)



 サラダールの王がいる。

 騎士団も——。




「そろそろ地上へ降りるぞ」


「どうして」


「王都への、空からの侵入は禁止されている」

 

「? 」


「上からの攻撃は、有利だ」


「あ……」



 二頭のパギリングは地上へ降りた。

 王都へ近づくスピードが、ぐんと落ちた。



(こんなに違うのか)



 ようやく王都を取り囲む城郭のそばまで来た。

 門番が、身分や通行証をチェックする。


 

「どうぞ」

 


 門をくぐった。

 

 ざわ……と、喧噪に包まれた。

 城郭の内側には、生活が息づいている。


(ワーフの街も人が多かったけど、雰囲気が全然違う)



 水路がない。

 街路樹も少ない。


 建物と人ばかりだ。

 どこか、味気ない。



「降りよう」



 三人は、パギリングを降りた。

 引きながら、歩いていく。


 街の雑踏から抜けだし、わき道へそれた。

 ふたりは、一言も話さない。


 建物に挟まれた、迷路のように入り組んだ道を進んでいく。




 ——突然

 レイフが、アリフを突き飛ばした。

 


 ドッ! と背中を壁にぶつけた。


 

 体を何かがかすめた。

 トトトッ——足元にナイフが突き刺さる。



 キンキンッ。



 レイフがまだ飛んでくるナイフを捌く。

 ダールは、顔も見えない人影と戦っている。



(お、俺も……)

 

 アリフはレイフからもらった剣を出そうとした。



 レイフが、ダールを襲う敵を切りつけ、煙幕を投げた。



 ——ボンッ……!




 煙で何も見えない。


 腕を引かれ、そのままグンッと放り投げられた。



(イテッ!)


 穴に、尻から落ちた。




「……シッ」


 レイフの手が、アリフの口を塞いだ。

 ダールもそばにいる。



 狭い穴の中だ。

 どこなんだ。どうなった……?



 

「……」



 三人は微動だにしなかった。





 ——どれくらい、そうしていたのか。



 アリフの口は、レイフの手に塞がれたまま。

 心臓だけが早鐘を打っていた。




 ……やがて、

 ダールとレイフが目くばせし、軽く頷いた。




「もう、大丈夫だ。気配が消えた」


 レイフが囁いた。



 アリフたちは、道ではなく、建物に挟まれた狭い横穴のようなところにいた。



「王城への抜け道だ。いったん避難した」


「行くぞ」



 狭い通路をひたすら歩く。

 どれだけ進んだのか、わからない。



「アリフ。狭い場所での近接戦には、長剣は不向きだ」


 歩きながら、レイフが言った。



「……あ、そうか」


「短剣の使い方も覚えておくといい」


「うん……」




 ダールが止まった。


「……少し待て」

 


 壁の継ぎ目を、ゆっくりと指でなぞる。




「……ここか」


 ボコリと石がひとつ壁から取れた。

 中の石を、ゆっくり押し込む。


 ズ、ズズズ……。



 隣の壁が動いた。


 ——眩しい。


 

 外だった。







 壁の中から出た。

 生い茂る蔦をかき分けると、そこは美しい中庭だった。


 水路が作られ、柑橘系の木々が生い茂っている。

 砂漠の都市らしい造りだ。



「王城の祭祀宮にある庭だ」


「王城の中に、祭祀宮があるんですか? 」

 

「神事も、王の勤めのひとつだからな。祭祀長や神子たちは、祭祀宮の一角に住んでいる」


「広いんですね……」


「騎士団本営も、王城の敷地内にある」


「え、騎士団も?」


「それぞれ、隣町ほど離れているがな」



(マシュアもいるのか……)



「基礎訓練を終えた騎士は、各地へ赴任される。王都にいるのは、基本、近衛だけだ。」



 あ、そうなのか……。

 マシュアがここにいるとは限らない。



 中庭を横切り、回廊の屋根の下へ入る。

 美しいモザイク模様の壁には、また仕掛けがある。

 

 ダールがそれを外すと、ガクンと壁が下がり、通路が現れた。





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