謁見の間での話 ①
多少急いで謁見の間へ。しかし、いつもながらにこの廊下は・・・。
「長いですね」
「いや・・・何普通に心の中を読んでいるのさ・・・」
「顔を見れば一目瞭然なのじゃ。普段は表情を読ませぬくせに、宮殿内にいる時だけは表情が読みやすいのじゃ」
「ええ。その通りです」
「あはは・・・。まぁ・・・安心しているってことで・・・」
そうか。そんなに変えているつもりはないのだけれど、やっぱり安心しているからなのか。それとも危機感がなくて単に弛んでいるだけなのか。後者だったら、カレンが指摘するだろうからきっと前者なのだろう。それでも、表情を読ませやすくするのは王族として弛んでいるから、気を引き締めないと。
「アル!」
「アルフレッド様!」
「「王太子殿下!」」
「おっと!お勤めご苦労。2人もありがとう」
「「ハッ!」」
「いえ」「うむ」
2人から言われたことを考えながら歩いていたら、危うく謁見の間を通り過ぎるところだったよ。危ない危ない。
「陛下に取次ぎを」
「王太子殿下が参られた際は、確認なしに通すよう陛下から承っておりますので、取次ぎは必要ありません。ただいま開門いたします」
「アルフレッド王太子殿下と従者カレン殿、エレン宮廷魔術師長お入りください」
近衛兵の1人が扉の内側に聞こえるよう大きな声で我々の通行許可を述べ、扉が開く。通常は王太子といえど取次ぎがあって、許可を待ち、扉が開き中に通される。この一連の流れを踏むのだけれど、今回は略式も略式だ。余程急いでいるらしい。私たち3人は、歩みを早めて陛下の前に進み、膝立ちの状態で頭を垂れる。
「アルフレッド。夜分遅くにすまぬな。面をあげよ。直答を許す」
「ハッ。火急の要件とのことで参りました。取次ぎの簡略化ありがたく」
「うむ。此度の世界樹への被害を最小限に食い止めたことは大変に素晴らしい。其方の動きによって、被害は最小限に抑えられ、人的被害も皆無であった。よくやった」
「ハッ。しかしながら、私1人の力では如何様にもしがたく。多くの者たちの助力をもって成し遂げたものにございますれば―――」
「皆まで言うな。よくわかっておる。従者カレン。エレン魔術師長。面をあげよ。よくやった。またここにおらぬ者にも後日褒美をつかわす」
「「ハッ」」
「っと。堅苦しい挨拶はここまでとして。カレン殿にエレン殿を重々しく呼ぶのはやはり慣れぬ。これからも我が息子のことをよろしくお頼み申します」
「畏まりました」
「任せるのじゃ」
「して・・・陛下」
「畏まらなくてよい」
「・・・父上。火急の要件とは一体」
「うむ。此度のことであるが、まずは誤解を解くのが一つ。下手人に関する話が一つ。魔王に関する事柄が一つだ」
「わかりました。して、まず誤解とは?」
「アングリア宰相」
「はい。陛下」
「ん?なぜ宰相が?」
「それは「大変申し訳ありませんでした!」まてい!まだ余が話して「私の口から話さねばなりません!」う・・・うむ」
「うぅ・・・。うぅ・・・」
なっ・・・なんだろう。さっきから狼のようにうなり声をあげて、顔を赤らめながらこっちを見つめられているけれど。あっ。顔をそらされた・・・。
「うぅ・・・。物語の中だけでも憧れて、恋焦がれている存在なのに、実際に目の前にしてしまうと何を話してよいのかわからなくなってしまいます。それに、何から話し始めてよいのかわからなくなってしまうので、いつもそっけない態度をとってしまいます。あぁ・・・。絶対、嫌いだと思われてしまっています。そうに違いありません!ですが、伝えなければならぬことがありますし・・・。ここは意を決して・・・やっぱり無理!憧れの英雄様を前に直視してお話など、そんな。恐れ多くてできません!ここはやはり陛下に・・・」
「あぁ・・・。アングリア宰相?」
「なんでしょうエレン魔術師長」
「大変申し上げにくいのじゃが、先程から心の声が駄々洩れで、皆に聞こえておるのじゃ」
「へ!?」
ギギギとさび付いた音が聞こえそうなほどに、ゆっくりとぎこちなく私の方に顔を向ける宰相。あぁ・・・。聞いていて私も恥ずかしいけれど・・・。
「き・・・ききき聞こえていましたかっ!?」
「う・・・うん。それはもう。聞いている私自身が恥ずかしいと感じるほどに」
「キュウ・・・」
おっと!宰相が顔を赤らめて目をぐるぐる回しながら倒れかけたが、間に合った。これで倒れて頭を打ちでもしたら大変だからね。
「アルフレッド。助かった。彼女にけがを負わせるわけにはいかぬのでな。勉強中の身ではあるが、この国をこの若さで掌握しいているのだからな。ここで職務に穴をあけるわけにはいかんのだ」
「それにしては、随分と打たれ弱いようですが」
「アルフレッドのことを除けば、とてつもなく優秀なのだよ。カレン殿」
「ふむ・・・。わかりました。そういうことにしておきます」
あれれ。若干棘がある言い方だけど・・・。いつまでも腕の中で抱えてはいられないから、簡易寝台を創造してっと。ここに寝かせておけば大丈夫でしょ。
「しれっと謁見の間で魔法を使っておるのじゃ」
「管理権限はまだ余のはずなのだがなぁ」
「今更ではありませんか?」
うぅ・・・。ちょっと魔法を使っただけなのに。確かに、謁見の間で魔法は、父上が【許可する】と言わないと使えないのだけれど、なんだか「いける!」って思って使ってみたら発動したんだよね・・・。
「コホン。それよりも話というのは?」
「「「(さすがにこの視線には耐えられなかったか)」」」
「その生暖かい目をやめてよッ!話があるのでしょう!アングリア宰相の話以外の話を!」
「そう・・・だな。(慌てるアルフレッドを見たのはいつぶりだったか)宰相の話は、彼女が復活したら、自身の口から語らせるとして。下手人の話をするか」
まだ、若干生暖かい目をされているけれど。話が始まればそんな目を向ける余裕もなくなるよね。きっと!ね!そうだよね!そうだと言って―――――。




