私からのあいさつ
久矢君が自分の可能性を試しにオーストラリアに行ってから、1か月が経ちました。
彼は現地に到着した日から、毎日のように私にメールを送り、近況を伝えてくれています。
例を挙げますと、次のようなものがありました。
○月×日のメール
サキ、元気ですか?
オーストラリアに到着した日に気づいたんですが、ここでは「センター」のつづりがcenterではなく、centreなんですね。
これまで全く知らずにいたため、最初は驚きました。
でも発音は同じなので、会話は特に問題なくできました。
○月×日のメール
今日、買い物をしにデパートの中を歩いている時、エレベーターがelevatorではなく、liftと表記されていることに気が付きました。
またそのエレベーター内のボタンも、地上階の表示がGになっており、そこから1,2,3,4…となっていました。
これらのことは事前に習っていたので、知ってはいたんですが、やっぱり実際に見るとちょっと驚きました。
エレベーターに乗る時には間違った階のボタンを押さないように気をつけないといけませんね。
それから、僕はまだ実際に見たことがないのですが、海外のエレベーターでは13の数字がないというケースもあるそうなので、もし見かけたら気をつけようと思います。
○月×日のメール
以前からオーストラリアの英語にはAを「アイ」と発音するというような、特有のなまりがあるということは聞いていました。
実際、テレビのクイズ番組を見ていて、A,B,C,Dを「アイ、ビー、シー、ディー」と発音する人がいました。
また、スポーツ番組を見ている時、アナウンサーが「ア ファンタスティック ライス!」と叫んでいるシーンもありました。
最初は“a fantastic rice?” 何それ?スポーツなのでどう考えてもriceは変だし、第一riceは不可算名詞だし…。と思っていたら、raceのaを「アイ」と発音していたということに気が付きました。
うーーん、オーストラリアなまりって88541だなあ…。
○月×日のメール
こないだ、テレビで聞いたAの発音について書きましたが、今日は僕自身がなまりについて考えさせられることに出くわしました。
今日、郵便局に行って切手を買い、封筒に貼ろうとしていた時、
“Would it be alright if I paste the stamp here?”
(切手をここに貼ればいいですか?)
と質問したところ、なんかいまいち通じていないような感じがありました。
僕は「えっ?何で何で?」と思いながら、切手を貼るジェスチャーをしたら、局員の人は
“Ah, you mean, paste, right?”
(ああ、「パイスト」という意味ですね?)
と言っていました。
まさか、pasteを「ペースト」と発音しても通じないとは想像もしていなかっただけに、本当に驚きました。
とはいえ、Aを「エイ」と発音する人も多いので、僕は「エイ」と言い続けるつもりですけれどね。
○月×日のメール
今日から現地では夏時間(英語ではDaylight Savingと言っています。)が始まりました。
つまり、この日から時計が1時間進むことになり、日本との時差が+1時間から+2時間になりました。
夏時間が始まる前日は、寝る前に時計の針を1時間進めることになりますが、その日は事実上、1日が23時間になるため、寝る時間が1時間短くなってしまいます。
生まれて初めてこのようなことを経験する僕にとっては、大丈夫かな?生活リズムが乱れたりしないかな?と不安になりました。
とはいえ、今日は寝不足気味にもならず、ほとんどいつもどおりに過ごすことができました。
個人的にはこういうのもいい経験になるかなと考えています。
でも、今午後8時なのにまだ外が明るいので、何か不思議な感じがしますけれどね。
○月×日のメール
今日、飲食店でステーキを注文した時、店員さんが「安い」という意味でcheapという単語を使っていました。
以前、レッスンでcheapは「安いけれど品質がそれに伴っていない」という意味だと習ったのですが、その肉は決して安物ではなく、質のいいオージービーフだったため、あれっ?と思いました。
サキの言っていたことを疑うわけではないんですが、cheapを必ずしもネガティヴな意味で使うわけではなく、人によっては単に値段だけに着目して「安い」と言っているような気がしました。
他にも、dreamの過去形をdreamtと解釈する人もいれば、dreamedと解釈する人もいました。
さらにはfの発音をあたかもpのように言う人もいまして、その人と会話した時にはfantasticが「パンタスティック」と聞こえました。
同じ英単語でも人によって意味の解釈や活用の仕方、発音の仕方が異なることがあるので、時には柔軟な発想が必要なんだなと思いました。
○月×日のメール
今、仕事で英語を使うことの難しさについて実感させられています。
仕事では相手を説得したり、自分のアピールをしていかなければなりません。
日常会話は何とかなるんですが、話せるだけではだめなんだということを教えられました。
サキは日本にやってきた外国人の人と仕事で会話をした時、ただ言葉を訳すだけでなく、彼らの気持ちを落ち着かせたり、日本に来て良かった。また来たいと思ってもらえるように、色々な工夫をしていたそうですね。
その時は何でそこまでするんだろうと疑問に思っていましたが、今ならその理由が分かります。
きっとサキは、彼らには日本に定住していては分からない、色々な苦労があることを知っていたからこそ、そのような対応をしていたのでしょう。
僕自身、今アウェーの地にいるわけですし、この環境というものを受け止め、うまく対応していこうと思っています。
そして、日本に帰ったらこの経験を踏まえた上で外国人の人と会話をしていきたいと思っています。
仕事で英語を使うということは確かに大変ですが、サキからのメールを読むと励まされますし、頑張ろうという気持ちがわいてきます。
本当にありがとう。
私自身もこのようなメールを読むと元気がわいてきますし、頑張ろうという気持ちになります。
最初は彼がいなくて寂しい気持ちにもなりましたが、今はすっかり立ち直りました。
そして生徒さん達にも久矢君の体験談を伝えています。
中でも弥富さんは彼のエピソードにすごく興味を持ったため、今ではメールが届く度に彼女に転送しています。
思えば、私が弥富さんと最初に会った時、彼女はガチガチに硬くなってしまい、英語では会話がほとんど成立しない状態でした。
私としては果たしてこれからレッスンをやっていけるかなと思いましたが、今では英語で楽しく会話ができるようになりました。
正直、同一人物である彼女がここまで変わってくれたことがうれしかったです。
他にも、生徒さんの中には自分も久矢君に続こうと言わんばかりに英語を頑張り、海外を目指そうという人が出てきました。
もし彼らが私のもとを巣立っていってしまうとなると、それはそれで寂しいです。
でも、私の下で鍛えた英語力をもとに、彼らを海外へと送り込むことは講師にとって名誉なことですし、私としてはこれから久矢君に続く人を輩出していきたいと思っています。
さて、1年以上にわたって連載してきた「スクーグ咲の英会話アドバイス」は、今回でひとまず終了とさせていただくことになりました。
ここまで読んでくれた方々、本当にありがとうございました。
私の書いた内容が読者の人達の役に立ち、英会話の実力向上につながることを、心より願っています。
それでは皆さん、Thank you for reading my novel.
I'm looking forward to seeing you again.