プレイヤー《色欲》
「お疲れ様です、ライトさん」
「あ、ありがたい?お言葉、です」
「全然、ちょっと雑になるんですけど、皆さん適当に宿でも取って休んでいてください」
追加された色欲の権能の一つ、〈王令〉によって最初に魅了した4人を宿に集め、そう命令した。
ゲームには王令というスキルや権能はなかったのだが、神視点で色々指示できるプレイヤーのコマンドを権能として組み込んだのだろう。
これを使って、新たに配下になった人に魅了の付与ができた。
そしてライトさんの言葉が拙いのは、きっと反抗心やそもそも目上、貴族などに対する言葉を使う機会がないからだろう。
魅了は本人の学を上昇させる効果はないらしい。説明にも、ステータスや記憶は本人に依存するとのこと。
「シン様、この者たちは?」
「昨日適当に魅了した人たちだよ、今は数があると思って」
「素晴らしい考えだと思います。では今の方針は……」
「いや、多分いけると思うから、トップを潰そうかな」
宿を出て、歩きながらセルマとそんな会話をする。
「私はどのように?」
「俺をこの国の王の元へ連れて行ってくれ、途中の障害はお前に任せる」
結構大雑把というか、適当な命令だったんだけど……
「仰せのままに、王よ」
こんな美少女を忘れてしまっていたのか、そう思うくらいにはセルマは綺麗だった。
流石は異世界、顔面偏差値が平均して高すぎるぜ。
……そういえば、転生って言われてたけど、俺の顔ってどうなってんだ?
「セルマ、俺の顔ってどう?」
急に申し訳ない。そう思っていたのだが、セルマは俺を見つめると、首を傾げて当たり前のように言う。
「……? お美しい限りです、桃色の瞳も今にも引き込まれそうなほど輝いています。一見幼なげな……」
「も、もういいよ?」
「……そうですか」
す、すごい残念そうだ。
まぁ一先ず、俺自身の体ではなさそうだな。
まぁ手とかちょっと小さかったし、昨日も顔面褒められすぎじゃねって思ってたんだよ。
◇
凄いなぁ、本当に英雄様々だ。
宿を出てから1時間が経った頃だろうか、俺は既に王城の中にいた。
俺の背後にはセルマと、魑魅魍魎と表現する他ない大量の死体。
正面から侵入して、止めてきた兵士は皆殺し。見ていて申し訳なさと爽快感を感じた。
ゲームばかりしていると、倫理観がおかしくなるのは本当だってことだ。
「では、偽りの王にその玉座を捧げさせましょう」
返り血も一切浴びず、召喚した時と変わらない姿で、セルマは言った。
王も逃げる暇ないだろうな、王城に入ってからまだ10分経ったくらいだ。
目の前にそびえる大きな扉を、セルマが俺に道を譲るように押し開く。
「……貴様が、侵略者か」
「まぁ、違いますとは言えないね」
目の前に広がる空間は、まさに異界。
高い天井、派手に飾った玉座、そこに鎮座する国王。
周りには臣下らしき人と、大量の騎士が剣に手をかけていた。
「大胆な者もいたものだ」
「随分余裕だな、頼みの綱の騎士はここまで殺し尽くしたけど」
両側に待機する騎士たちを、嘲笑うように言ってみた。パーカーフェイス大事だよね。
「あぁ、彼らは責務を全うした。そして、ここにいる騎士では貴様を止められんのだろう」
その言葉に、臣下達は息を呑む。王様と違って余裕なさそうだな。
「来い」
その王の一声と共に、背後から革靴の足跡が聞こえてきた。
微かに開いた扉から顔を出したのは、気怠げで清潔感の欠片も感じない中年男。
「はいは〜い、王命により馳せ参じましたぁ」
「おぉ!ドイル殿!」
「王城に来ていたとは、貴様も運がないな!」
登場と共に、臣下達は息を吹き返したかのように騒ぎ出した。
「その者は、我が国が誇る騎士。天剣のドイルである」
「ふぅん……」
確かに強キャラ感はすごい、でもなぁ……
「やっぱり無理だな。セルマ」
「はい」
その短いやり取りで、セルマは俺の命令を忠実に実行した。
今その場で、何が起こったか理解できる人間はきっといないだろう。
未知の脅威が突然襲来し、自分たちのトップが余裕と共に切り札を切った。
「……おかしいなぁ。なぁセルマ、俺はイカれてんのかな?」
「いえ、王がこの世の全てであり、正しさです。不安など感じる必要はありませんよ」
威厳ある王の顔は崩れ、声を奪われた。
臣下達は、目の前にいた兵士の列が血飛沫を上げて崩れる様に、絶望した。
天剣と呼ばれた男は、神話で語られる人間ではなかったみたいだ。
セルマは英雄だ。他の英雄と比べ、規格がどれほど小さくても、セルマは神話の人物だ。
「……あっ、あぁ、なんという……」
ようやく声が出せましたって感じだ。空間を震わせるような王の声は、今や声自体が震え、情けないものだった。
「……う〜ん、《《ゲーム》》だなぁ」
「どうか致しましたか?」
「ううん、別に」
ゲームと現実の区別がつかない。『そんな事あるわけないだろ』なんて言って笑えなくなったな。
ここは異世界だ、夢でもゲームでもなくて、この人たちは生きている。
だというのに、理解しているのに、俺は何も感じない。
実際に殺していないから?
そんなものじゃない。もっと本質的に、違う気がする。
「まぁいいや、王様。その玉座、もらっていい?」
「……」
目を見開いて、了承するでも拒否するでもなく、力なく虚を見つめている。
それを見て思うんだ。
可哀想だって。
でもきっとこれは、ゲームのキャラに対するもの。一時的で、思っているようで思っていないアレだ。
「……難しく考えるのは嫌いだしなぁ」
俺は玉座に向かって歩き始めた。
その後を、セルマは何も言わずに着いてくる。
俺は楽しめば良い。
転生したとか、人を殺してしまったとか、そんなことは考えない。
「セルマ、どけて」
「はい」
セルマは玉座に座った《《男》》を、雑に持ち上げて、臣下の方へ投げつけた。
玉座を少し見つめてから、これでいいと、俺は決意と共に座り込む。
「ゲームか、うん、それでいいじゃん」
気楽にいこう。
ゲームはやっぱり楽しくないと。
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【国家情報】
国家名:アスモデウス
【領土】
0 → 20,098 km²
【国民】
788 → 4,832,000
【配下】
788 → 904,956
【英雄】
1
【兵力】
0 → 42,680
【権能】
《大罪・色欲》
【使用可能な権能効果】
・対象への魅了
・配下への権能付与
・支配下にある者による勧誘
・王令
【所有している英雄】
【惨撃のダークエルフ〈セルマ〉】
【兵力詳細】
・王国騎士:12,400
・王都守備兵:8,600
・地方守備兵:15,280
・魔術師部隊:3,200
・その他:3,200
【現在進行中のイベント】
〈王国よ、揺籃に包まれろ〉
【支配率】
王都:76.9%
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