氷じゃないかも
裏の世界——そこはスパイたちが日常を過ごす場所。
この物語は裏の世界でのほんわかとした生活の一部だ。
───────────────────────────────────
ここはスパイ組織「エンドカーディガン」いわゆる暗殺などの依頼・任務をする組織
裏社会とは思えない賑やかな雰囲気から他の組織からは「シャングリラ」と呼ばれている、ここが何故無駄に明るいのかそれはこの組織のボスがそう言う人を好んでいれたからだ。
本部のロビーは、妙に賑やかだった。雑談するやつ、あくびしてるやつ、全く緊張感がない。
そんな中で、ボスだけがいつも通り無駄に威圧感を放っている。
「今からペアの発表をする各自紙に記されている名前を見たら2人で固まってくれ」
そうボスが言いすぐに去っていった
「別にペアなんかいらねぇのに…」
独り言を言いながら俺は張り紙を見に行こうとする
エンドカーディアンに入って数年。ペア制度は今年から入ったが生活、任務、特訓、全てをペアと一緒にやるこの制度は陰キャの俺にとってはだいぶ面倒だ。特に誰と一緒になりたいとかはないが体力も近距離戦闘もダメ。そんな俺はただの足手纏いにしかならない。
「見に行くか…」
張り紙の前まで行き名前を探す
「葵…葵…っと…ペアは…はぁ?!」
そこにかかれている名前は瀬奈
瀬奈とは——幹部の一人で、ボスの直属の部下。
その無表情な顔は、何を考えているのか全く読めない。
いつしかついたあだ名は「氷の姫」。
(いやいや…ちょっと待て!多分見間違えだ!)
そう思いながら何度も張り紙を見返した
「ねぇ…君だよね、…葵って」
すぐ後ろで静かな声が聞こえた
「は、はい…」
(終わった…)
なぜか絶望を覚えながらあのクソボスを恨んでいる
そのまま瀬奈は何も言わずに俺の横に立つ
(この雰囲気気まずい…何か言わねば…)
「あ、あの瀬奈様…」
「別に…様なんてつけなくていいよ…」
「え?あ、はい!じゃあ瀬奈さんで…」
「うん…えと…どうしたの…?」
「何で俺なんかが瀬奈さんとペアなのかなって」
俺の中での一番の疑問を聞いてみてみた
「あ…え、と…ボスが…僕が前線で暴れるから…君みたいな冷静で…遠距離攻撃できる人って…なって…」
ちょっと待て、この人ただの口下手じゃ…?しかも僕って…
俺の中での氷の姫のイメージがボロボロと崩れていく
「そ、そうですか〜…」
「へ、部屋に…荷物運ばないとだから…い、行く?」
どこかぎこちない言葉で喋る瀬奈
「あ、そーですね!はい。部屋ってどこですか?」
「205号室だよ…い、行こっか…」
数分歩いているのだがさっきから同じ道を歩いているような…
(気のせいか?)
そう思っていたさなか、瀬奈がゆっくりと後ろを向いて困った顔で言った
「あの…迷った…というか…ここどこ?…」
「はい?」
(あ…だめだこの人ポンコツだ…)
「もしかして瀬奈さん、方向音痴ですか?」
「…まぁ…僕を先頭に歩かない方がいいかも…」
「はぁ…」
思わずため息をつく
(何で幹部についていって迷子になるんだよ…)
しばらくしてやっと205号というプレートのある部屋に着いた
「な、なんか…クソ疲れました…」
「僕も…なんかごめん」
少し目を逸らしながら言った
(これからこんな変人と2人でやっていくと思うと先が思いやられる…)
───────────────────────────────────────────────────────
そうしてペアが決まってから一週間が経った
瀬奈との共同生活で分かったことはニつある
一つ目はとんでもない方向音痴であること
二つ目は全く生活力がないこと
方向音痴は初日から発覚している、そして生活力ゼロに関しては部屋に着いてから初めのうちは交代で家事をしていたのだが二日で彼女は二つの洗濯機を壊し、フライパン6つを丸焦げにしたなお理由は不明だ。
「瀬奈さん、今日ペアでの初任務ですよ、寝てないで早く起きてください…あと30分で出ますよ?」
彼女はまだベットでゴロゴロしながら言った
「もう少し…寝たい」
布団に顔をうずめたまま、ぼそっと呟く
「いや、遅れたら怒られますよ?」
(特に俺が)
瀬奈から布団を剥ぎ取って起きさせる
「起きてください、あと料理は俺が作りますんで絶対キッチンに立たないでください」
「寒い…」
寝ぼけた状態で彼女は俺の袖を軽く掴んでくる
「はいはい、とにかく起きてください」
袖を掴む細い腕を見て、俺は何故か視線を逸らした
俺が朝食の準備を作っている間に布団を取られベッドの上で寒くなって瀬奈が起きてきた
「任務の準備してくださいね」
「うん…分かったよ葵…」
(俺は瀬奈さんの母親みたいになってねぇか…)
数分して戦闘服、髪型を整えた彼女がリビングに入ってきた
「…今日の任務って2人?」
俺は机の上の書類を指して
「そこの書類に詳細書いてあるので見てください」
「うん、分かった…」
「B地区の殺し屋グループの討伐…ね」
「あ、そうだ瀬奈さん今回の任務、主に近距離戦ですが俺はスナイパー以外の力はほぼゼロに等しいので覚悟してくださいね」
彼女は書類から目を離して
「そう?…じゃあ頑張らないとね」
彼女は静かにそう言った




