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第一話 トンネルの怪異

本作を見つけていただき、ありがとうございます!


神主×今どきギャルが狂った因習村に挑む、お仕事オカルトバトルです。


★本日はスタートダッシュとして、1話〜3話まで一挙同時公開中!

以降は、毎週【金曜・日曜の18:10】に更新いたします。


全10話の短期集中連載ですので、最後まで一気に駆け抜けます。

ぜひサクッと楽しんでいってください!

「あちぃ」


 私は車内の暑さにやられ、自力で仰ぐだけではどうにもならないと悟ったので全身クーラーに当たりたくてダッシュボードに足を上げた。


「こら、ひな!汚ねぇ足を上げんじゃねぇよ!」


 軽トラをダルそうな顔で運転していた潤がビックリしたように目を見開き、左手で私の足を払い落としてきた。


「ちょっと、暑いんだからいいでしょ!」

「だったらもっとクーラー下げてよ」


 車内の暑さにイライラしながら運転している潤に言うと、ただでさえ丸い背中をさらに縮こまらせながら、


「これでMAXまで下げてんだよ……」


と申し訳なさそうに答えた。

「マジか」と怒りよりも、令和にこんなに快適ではない車が存在していることへの驚きで胸がいっぱいになる。

 こんなアニメでしか出てこないような車に今どき乗っている女子高生は私くらいだろうと自分の境遇に絶望した。


「だったら窓開けるね」


 言うと同時に窓を開けたが潤は特に文句もなく、自分の方の窓も開け始めた。

 そして当たり前のように器用にタバコを取り出し火をつけた。




 7月の日差しが強い田舎道。私たちは軽トラで山あいの田舎道を走っていた。

 うだるように暑い車内。

 このオンボロの軽トラは道のガタつきを全部席に届けてくれるのでお尻が痛い。

 全開の窓から入る空気が少し冷たく気持ちがいいのが唯一の救いだ。


「ねぇ、今日行くところって村だよね?ちゃんと泊まるところあんの?」

 

田舎道が続いて不安になり潤に聞いてみる。


「お前のお父さんがその辺はちゃんと旅館とってくれてるよ。夕食は豪華にカニ付きだぞ!本庁の経費でカニだカニ。お前の父ちゃんに感謝だな」


 急に息を吹き返したようにニヤニヤし始め腹立たしい。

 そう思った瞬間トンネルに入り急に視界が暗くなった。

 トンネル内は日が入らないからか湿気ってカビ臭く、慌てて窓を閉めた。

 潤もそう感じたのかタバコを灰皿に押し当て窓を閉めた。



 進んでも進んでもなかなか外に出ない。

 日光が全く入らないからか、だんだんと冷えてきた。


「ねぇ」

「なんだよ」

「今度は、クーラー効きすぎなんだけど」

「つけてねーよ」

「は?なわけないじゃん」


 そう言ってクーラーのつまみに視線を落とすと確かに切れている。


 と次の瞬間、車の前に人影が飛び出してきた。

 潤も慌てて急ブレーキを踏む。

 けたたましいブレーキ音がトンネル内に反響しているのが耳を突く。

 急ブレーキで前の方に飛び出しそうになるのをなんとか押さえつつ、ぶつかるのを想像して反射的に目を瞑ってしまっていたが、予想に反して衝撃音は全然やってこなかった。


 おそるおそる目を開ける。

 するとさっき見ていたトンネルとは打って変わって左右にあるはずの電気がついておらず、軽トラの頼りないライトだけが光を発している。

「おかしい。」そう思った瞬間


バンッ


 目の前のフロントガラスに大きな黒い手形が付いた。

 あまりの光景にフロントガラスから少しでも離れようと座席に身体を張り付かせる。


バンッーーバンッーー


 今度は連続してすぐ横の窓に黒い手形が幾つもつき始める。


「ちっ。めんどくせぇなぁ」


 そう言いながら潤は不用心にも外に出て行ってしまった。

 ガサゴソと荷台を物色している音がする。

 

バンッーーバンッーー


 その間にも増え続ける手形に恐怖で頭を抱えながら目を固く瞑ってしまう。

 窓をバンバンと叩く音が続く中、潤の足音が軽トラの正面あたりで止まった。


コーーーーーーーン


 木で固い地面を突いた音がした。

 ゆっくりを目を開けると、軽トラの光に照らされた潤が、自分の身長ほどの長さの八角形の棒を持って立っていた。

 先にいくつもの四角ができるよう折り返された紙垂しでが沢山付いている大幣おおぬさだ。パパが神事の時に振っていたのを覚えている。

 けど、大幣にしては柄が長い。


コーーーーーーーン


 もう一度潤が大幣で地面を突いた。

 澄んだ音がトンネルいっぱいに響き渡る。

 するとトンネルの両サイドの電気が一斉に点いた。

 急な光に眩しくて目を細めてしまう。

 細めた隙間から人影がハッキリ見えた。

 車の前に飛び出してきた髪の長い人影が潤の前に立っている。

 俯いており髪が覆っているので顔は見えない。

 ただ“それ”が人ではないことだけは直感的にわかる。


「オォォォォォォォォ」


 潤が低く透き通った声で喉を震わす。

 神下ろしの合図だ。

 パパが神事の時に使う発声と同じだけど、全然違う。

 潤のは低くて、澄んでて……体の芯に響いてくる。

 

ーーペシャッ

 

 潤の神下ろしの声を正面から受けた人影は全身を波打たせたかと思ったらそのまま地面の黒い染みとなった。

 まるで泥が広がるように。


第1話をお読みいただきありがとうございました!


オンボロ軽トラで山奥へ向かう二人ですが、村に着く前から不穏な空気が漂っています……。


第2話、第3話もすでに同時公開されています!

下の「次の話>>」ボタンから、そのまま続けてお楽しみください!

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