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異世界チートで姫様達と婚前旅行。  作者: 富士ヶ麓久遠
トランディア王国・迷宮都市レガル編
9/42

やんのかアァン?でございます

テンプレぶしゃあああ

 こんにちは、リュウタロウです。

 ただいま絶賛絡まれ中です。

 冒険者登録を終わって振り返ったら、目の前に汗臭い男達がいたのですよ。


「おいガキ。キレイどころ連れてオレの前に出るとは、良い度胸じゃねぇか。ちょっくらオレにも味見させてくれや」

「くはははっ、リーダーに任せたら味見どころか女がぶっ壊れちまうじゃねぇかよ!」

 

 モンスターの重厚な鎧をつけた大男が五人。

 風貌を一言で表すならチンピラであり、それぞれ大剣やメイス、ハンドアックスのような武器を背中に携えている。

 いかにも強そうだが、ゲーム序盤に出てきて主人公にサックリやられる雑魚盗賊みたいなセリフだ。そのためか、大して怖くない。


「クレアさん。これって喧嘩売られてるって思っていいんですかね?」

「えっ!? あ、あの、ええっと……」

 

 俺は四姉妹を庇うように前へ出る。

 そのまま背中越しでクレアさんへと声をかけたが、本人は答えづらそうだった。


「じゃあ、質問を変えますね。もしギルド内で喧嘩が起きて備品が破損してしまった場合、その損害賠償はどうなります?」

「そ、損害賠償ですか? 双方の意見や現場の状況を聞いて、過失があるほうに負担がいくことになると思いますが……」


 なるほどね。その言葉を聞いて安心したよ。


「よかった。この人達が勝手にイチャモンつけたのに、もし『何かが起こって』俺に請求が来たらどうしようかと思ってましたよ」


 クレアさんの息を呑む声を背後から浴びつつ、俺は男達に近づいた。

 うげ、汗臭い。なんだか剣道の防具から抽出した液体を百倍濃縮した匂いがする。


「で、何か用か? こっちは早く宿屋に行って休みたいんだけど」


 俺の言葉を受け、一回り大きい体格の男が進み出る。

 坊主頭なのに不精髭が目立ち、ニヤケ面が気色悪い。身につけている装備品は周囲の男に比べて格上だ。

 多分コイツがリーダーなんだろう。


「なに、そっちの女どもを一日ばかり貸してもらいてぇんだ。お前ら新人だろう? 狩りの仕方や夜の奉仕をたっぷり仕込んでやるよ」

「ま、帰ってこなくても悪く思うな。俺達の逸物に惚れちまうかも知れねぇからなァ!」

「なんなら、お前の尻も掘ってやろうか?」

「遠慮します」


 最後の一人は寒気がしたので脊髄反射で答えてしまった。それはともかくとしても、その辺で止めといたほうがいいと思うんだけどな。

 少しだけ後ろを見ると、うちのお姫様達はキレる寸前だ。

 アリサはツインテールがうねうねと浮いているし、シェリスさんは「うふふ」と笑いながらも額に青筋が立っている。ツバキさんは帯剣の柄に手をかけていて、残るベルンは帽子で表情が見えないが、その足元からは氷が割れるパキッという音が聞こえてきた。

 キレる寸前どころじゃなかった。既にキレてます。


(……仕方ないな。アリサが城でぶっ放した魔法の例もあるし、このままだと誤って殺しかねん)


 もう一度だけ大きな溜息をついてから、馬鹿どもの言葉を遮る。

 そろそろワンパターンなセリフにも飽きてきたところだ。


「悪いが、この子達は全員俺の嫁さん予定なんでね。お前らみたいに頭も悪く金玉も小さい、おまけに顔も悪いような塵芥ちりあくたに惚れる要素なんざ一片たりとも無い。潔く諦めて家に帰れ。そのまま土にも還れ。それが無理でも汚物のような顔面を見ただけで吐き気がするからフルフェイスの兜をつけて歩いてくれ。いや、身体からも悪臭がするな。もう今生一切近寄らないでくれ。万が一天地がひっくり返ってもありえないことだが、風呂で全身の皮膚が剥げるくらい必死に垢を擦り落として自力でフローラルグリーンの香りがするようになれば、全裸土下座で俺の奴隷に取り立ててやるくらいは考えてやろう。考えてやるだけだ」


 さすがに自分でも言い過ぎじゃないかと思ったが、これくらいでいいか。どうせ先手を打ってきたのは相手側なんだ。

 後ろの四姉妹や受付嬢達も唖然としていたが、少ししてからクスクスと小さい笑い声が聞こえてきた。


「け、結構言うのね、あの子。ふふっ」

「肝っ玉据わってるな。くっくっくっ」

「同情するよ。あいつの女、ぶっ壊れるまで輪されちまうだろうな」

「あーあー、しらねぇぞ。緋刃に言い返すなんてよぉ」

「フローラルグリーンって何?」

「ぶふっ!」


 最後のはアリサか。もうちょっと女らしい噴き出し方しろよ。


「てめぇ……舐めてんのか? 俺達Cランククラン『緋色の風』に、よくもそんなでかい口を叩けたもんだな。所属メンバー十二人を相手にして生きていられるとでも思ってんのか? ああん!?」


 思ってます。

 それにしても『緋色の風』ねぇ。そこから攻めていけば、こいつらから手を出したりしてくれないかな……。

 よし、やってみよう。


「ひwwいwwろwwのwwかwwぜww。え、緋色って赤っぽい色ですよね? 何、赤い風? あれですか? 敵を倒しまくるから、その血で風が赤く染まる的な? ピャー、頑張っているんですねー、いつもオツカレッス、ちっすちっす(棒)」


 自分のキャラもお構い無しで煽りに煽る。これもスキルのおかげなんだが、なんか楽しくなってきたな。

 ついでに『表情七変化』もコンボで使ってピエロみたいな表情をしているので、はたから見ると相当ウザいはずだ。というか、自分で自分を殴りたくなるくらいウザい。


「あっはははははっ! や、やめて、リュウ……笑いすぎて、お、おなか痛い……」

「んっふふふ~」

「ぐっ。リュウ殿は他人をおちょくる才能があるな」

「……い、意外に、やる。ククク」


 アリサがヒーヒー言いながら、腹を抱えて地面を叩いている。

 交流スキル『喘人罵倒ぜんじんばとう』があるからか、言葉がスラスラと出てくるな。


「そ、そうだ。俺達はお前のために頑張っているんだ。その慰安としてお前が女を差し出すのは当然だろう?」


 ぐぬぬ。

 後ろにいるやつらは剣を抜いて待機しているってのに、このリーダーだけ本当に我慢強いな。

 あ、何があるか分からないので、クレアさんほか受付嬢は離れていてくださいな。


「なるほど。確かに頑張ってくれているなら、それ相応の褒美があってもいいだろうな」

「ほう、話が分かるじゃねぇか。なら、」

「靴を舐めさせてやろう。それがお前に相応しい褒美だ」


 俺が鼻で笑いながら片足を前に出すと、リーダーの額から何かが切れるような音がした。

 ぶちっとか、ぷちっとか。そんな感じ。

 奴の顔が真っ赤になり、背中に背負った大刀に手がかけられた。


「てめぇ、ふざけんじゃねえええええええ!!」


 はい、ダウト。

 いくら舌戦に負けたからといっても、剣を抜いてしまえば言い逃れはできないな。

 

 リーダーが抜刀し、右上段から俺を切り捨てようと大剣が迫る。

 そのままなら、俺の左肩から腰までが真っ二つになるコースだろう。

 かなりの使い手らしく、一般人であれば剣先がブレて見えるほどの速度だ。

 

 しかし、スキルセットで超強化されている俺の動体視力からすれば遅すぎた。

 身体性能だけでも、飛行機と陸亀で地球一周マラソンするくらいの絶望的な差がある。


(まぁ避けてもいいんだが、それだと剣先が床直行だな。いちおう事前に損害賠償を聞いておいたけど、無駄なことをしてギルドの施設を壊すのも悪いし、実力を見せつけるって意味合いもあるから……)


 俺は避けることなく左肩で大剣を受け止める。

 

「なっ!?」


 リーダーの顔が驚愕に染まるのも無理は無い。

 俺を真っ二つにするはずの大剣が、当たった瞬間に甲高い音を立てて真っ二つに割れたのだから。

 半分になって宙を舞う、剣の先端部分。それを信じられないような表情で凝視するリーダー。


「次からは相手を見て喧嘩を売ることだな」

 

 俺はそう言うと、落ちてきた剣先を指先で弾き上げる。

 ついでに所持金をスリ取ってやろう。命の代わりに貰って行くぞ。

 リーダーの胸倉を掴むふりをしてわざと回避させ、財布だけを抜き取る。

 

「意外に金は持っているんだな。金貨が数枚と、後は銅貨か?」


 右手に持った皮袋をお手玉してみると、予想外に重い。

 そこまできてようやく、バックステップで下がったリーダーは、俺の手に自分の財布が握られていることに気付いたらしい。

 奴の顔が赤から青に染まったのは、怒りを通り越したからか。それともスられたことに気付かなかった羞恥からか。


「一つ忠告だ。これ以上やると危ないから、下がったほうがいいぞ」

「返しやがれ!!」


 俺の忠告を聞かず、俺へ近づくために腰を落とすリーダー。

 その踏み出した膝に、先ほど弾いた刃が落ちてきて突き刺さった。

 ちゃんと人の話は聞きなよ。

 

「あっ、ぐあああああぁぁ!!」

「リーダー!?」


 足を破壊され、聞くに堪えない悲鳴が響く。

 リーダーがやられたことを自覚したらしく、激痛にうずくまるリーダーを呆然と見つめる『緋色の風』。

 彼らの俺を見る目は、得体の知れないものに出会ったかのような恐怖に歪んでいた。


「だから下がったほうがいいって行ったのに……」


 俺は溜息を一つつくと、動けない『緋色の風』を人差し指で挑発する。

 その動作に怒りを堪えきれなかったのか――。


「くそがあああぁ!!」


 メンバーが一人殴りかかってきた。

 獲物は石のハンマーで、表情を見るに破れかぶれの突撃か。

 だが……奴は、俺の横を素通りした。


「勝てそうに無いからって、アリサ達を狙うってのは感心しないな……殺すぞこのクズが……!」


 自分でも怖いくらい低い声が出てくる。

 でも、俺にこの感情オレを止める気は無い。

 先ほどの剣を折ったスキル『金剛皮』を発動した状態で、後ろから追いついてアリサの前に割り込む。

 そのまま彼女に向かって振り下ろされたハンマーを、真っ向から殴りつけた。

 

「このっ、ぎゃああああああぁ!!」


 ハンマーが砕かれた際に石片が目に入ったらしく、激痛で動きを止めるハンマー野郎。持ち手の棒だけしか残っていない武器をがむしゃらに振り回すが、そんなものが当たるわけも無く。

 その隙にオレは懐へ潜りこみ、肘を骨が折れるくらいの力で掴む。


「あがぁっ!?」


 変な方向に曲がった腕を持って一本背負いで地面に叩きつけてやると、喉から「ごぽぉっ!」と音を立てて胃液が飛び出してきた。汚いから顔を踏んで意識を飛ばしてやろう。

 トドメとばかりにアリサが骨盤を踏みつけて砕き折っていたが、男への同情は微塵も無い。むしろ殺してやりたいと思うくらいだ。

 アリサ本人が満足そうな表情をしているから、この程度で止めてやるけどな。


「次、来いよ。オレの女に手を出そうとしたんだ、楽に死ねると思うなよ屑どもが」


 オレ達の所業を見た残りのメンバーは、まるで蛇に睨まれた蛙のように微動だにしない。

 一歩でも動いた瞬間に狩る気だから、その認識は間違っていないんだけどな。

 仮に近づけたとしても、近接職の武器が通用しないと分かっている以上はオレを倒す手段など無いのだろう。


「もしかして、リュウってば結構独占欲が強いのかしら?」

「あらあら~。素敵な夫になれそうですね~」

「ふむ。それほど想われているというのは悪い気分ではないな」

「……ん。及第点」


 否定的な意見は出ていないが、流血沙汰を目の前にして動揺しない四姉妹も大概だろう。

 この世界の道徳教育はどうなっているんだか。流血させた本人がいうのもなんだけどさ。


 残った『緋色の風』がピクリとも動かないまま、凍ったように数十秒が過ぎる。


「はぁ……もう面倒だから、こいつら回収して帰れ。お前ら程度は指一本あれば殺せるが、死体の処理が面倒だ」


 あきれた顔のオレは、しっしっと手で追い払う動作をする。

 アリサ達が「もう十分反撃したし許してやるか」といった顔をしていたので、適当に理由をつけて逃してやるとしよう。

 怒りを納めた理由の大部分は、オレが胸元からチラリと覗かせた財布によるものだろうけどな。

 ツバキさんだけは何かと葛藤していたようだが、アリサが耳元で囁くと「当然の報いだな」とだけ言って真顔になった。お菓子がどうとか小さく聞こえたけど、ここはスルー推奨か。


 俺は引いていく怒りを感じながら、青い顔で何度も首を縦に振る男達を見やった。

 これに懲りて手出しをしてくることはないだろう。

 フラグに聞こえるが……もし次があったらガチで恐怖を叩き込んでやろうか。

 

「お騒がせしてすみません」

「い、いえ。特に被害などは無かったようですし、リュウタロウさんが無事で何よりです」


 痛みで気絶した仲間をズルズルと引きずっていく光景を尻目に、俺はクレアさんに頭を下げる。

 その姿を見て、周囲の冒険者達は小声で会話をしていた。


「やるな。あのガキ」

「緋刃の大剣を生身で受けて無傷ってのは信じられねぇな」

「土魔法で金属を精製したんじゃねぇか?」

「おそらくな。もしくは鉄鋼皮のスキルかもな」

「バカ。ありゃ死ぬほどツラい修行を数年やって会得できるかどうかだぜ。んなことありえるかよ」

「固有スキルじゃねぇのか!? あんな羽みてぇな闘気なんて見たことねぇぞ!」

「一応、クラマスに連絡して勧誘の準備しとくぞ」


 話の内容に気になるところはあるが、今は無視でいい。

 無事を喜んでくれるクレアさんのほうが大事だ。


「それにしても、お強いのですね。今の騒動で戦闘の心得があることが分かりましたので、リュウタロウさんの冒険者ランクをEランクにしておきますね」


 その言葉に、俺達から「えっ」と声が漏れる。

 あんなのでいいのか?


「はい。ギルド職員の前で一定以上の戦闘能力を示せば認められますから。本来は週に二回開かれる初心者講習で実力を示さなければならないのですが。あ、ギルドカードをお預かりします」

「……リュウさん、ずるい」


 クレアさんが俺のギルドカードを受け取ると、ベルンが憤慨する。

 いや、俺に言われても。

 幸いながらギルドランクの上昇は大して時間が掛からない手続きだったらしく、俺が冷たい目線にさらされていたのは一分にも満たない。いや、一分間耐え切ったと言うべきだろうか。


「はい、これで手続きは完了しました。Eランクのリュウタロウさんがいるので、皆さんが彼のパーティーに所属している限り都市外や迷宮での活動も可能ですよ」

「本当!? ラッキー!」

「本棚からクッキーだな」


 ツバキさんや、それはもしかして棚からぼた餅の異世界版ですかい?

 喜ぶ四姉妹を尻目に、返ってきたギルドカードを見てみると……。


(お、確かにランクがEに書き換わってるな)


 これで初日から迷宮での活動ができるようになったのか。

 ある意味、緋色の風様々だな。少しだけ感謝をしておこう。


体力ツリー

===========================================

【スリ師の心得】

RANK:D

前提スキル:下忍の心得、観察眼

敵から武器を奪うための基本的な動作。敵から偶然掏り盗ることができる確率が5%上昇する。強敵相手には無効。

===========================================

金剛皮こんごうひ

RANK:A

前提スキル:体力増強[+20]、鉄鋼皮、破山衝、中級地墜魔法師、上級錬金術師

消費体力/魔力:1000/500(Active)

持続時間:5s

一時的に筋繊維の収束強度を上昇させ、かつ血中の鉄分を魔法で制御・練成することによって、身体の耐久性能を格段に引き上げる。物理攻撃の被ダメージを99%軽減する。威力3000以上の攻撃には無効。

===========================================



交流ツリー

===========================================

喘人罵倒ぜんじんばとう

RANK:D

前提スキル:初級交渉術、口八丁くちはっちょう

敵を罵倒する言葉を即座に思いつくようになる。興が乗れば乗るほど舌の滑りが良くなる。

===========================================



UNKNOWN

===========================================

【???】

RANK:???

前提スキル:???

持続時間:???

鳳凰の翼の如きオーラを纏う。詳細は不明。

===========================================



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