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私と彼女の企み




君は一体誰に復讐しているのか、ですって?

ーーそうね、誰かしら。





誰からも愛され、自然にも愛される。

そんな者がこの世の中にいるのか。

答えは、否。

例え乙女ゲームのヒロインでさえも誰かには必ず嫌われ、妬まれ、憎まれる。

でなければ物語に悪役は存在しない。




そうとなれば彼女、ーーリリーナの敵は一体誰なのか。

それは親友という名の裏切り者、私キキョウ。そして、彼女を妬み憎む、学園の女子大半だろう。前者は別として後者は少し考えるだけでわかることだ。乙女ゲームのヒロインは必ずといっていいほど女子に嫌われる。

彼女が直接、何もしていなくても、嫌われるのだ。なんて理不尽だろうと思うが、そこは仕方ない。むしろ、彼女のことをよく知らないからこそ嫌うことができるのだろう。


彼女が嫌われる理由は簡単で、いわば美男子を虜にし、逆ハーレム状態を築いているからだ。まあ彼女はそんなつもりはないのだろうが、人間の考えていることはわからないので私には断言はできない。そう考えると、彼ら全員が必ずしも彼女に恋心を抱いているのかさえもわからなくなってくる。







「それで、キキョウ様。わたくしは何をなせば良いのでしょうか。」


突然声をかけられ、少しばかりが肩があがってしまったが、その無機質な声の主がわかり、少しでも驚いてしまった自分が恥ずかしくなった。彼女のきっちりと着こなした制服は模範生そのものだ。肩で切りそろえられた栗色の髪は正真正銘の地毛である。



「あなたって毎回毎回、ほんとナイスタイミングで現れるわよね。ほんと尊敬するわ。」



嘘でない。本当にこの子は私の周りに人がおらず、且つ、誰も私に注目していないときを狙ってこうやって話しかけに来るのだ。

今は、魔法の実践練習のため外に来ている。

そして私たちは、皆の輪から少しだけ離れたところにいるため、この会話が他の誰かに聞かれることはない。

それに普通、実践練習をみることに集中する。クラスメイトの弱点がわかるいい機会だからね。

現に誰一人してこちらを向いていない。




「ありがとうございます。しかし、キキョウ様も私がこの時間に来るとわかって、わざわざ離れたところにいるのですよね。」


と、彼女は相変わらずの無表情で冷静に言ってのける。



「で、どうなの?」

私はそれを無視し、要件だけ伝えろというように前を向いた。雲行きが怪しい。灰色の雲が重みでズシリと音を立てて落ちてきそうだ。今にも雨が降りそうな天気で、少し肌寒くもなってきた。



「着々と準備は進んでいます。しかし、本当によろしいのですか。」


といって、彼女も私と同じように前を向くのを視界の端でとらえる。

練習試合といってもほぼ実践のようなものなので、相手同士の魔法が激しくぶつかりあっているのがわかった。

なるほど、この試合は水の魔法と火の魔法ね。

さあどちらが勝つのかしら。




「何を今更。あなた、もしかして最後の最後で善人ぶるつもりかしら。」

火柱が高くあがった。

メラメラと燃え、火を吹き出す姿はまるで生き物のようだ。

離れてもわかるその熱さに相手は耐えれているのだろうか。



「いいえ、そんなつもりはございません。私は最後までやり遂げるつもりですから。」



今度はそれに耐えきれなくなったのか、相手が攻撃にでた。

大きな波が火柱にへと向かう。

周りが固唾を飲んで見守っている中、その波はだんだんと大きく、大きくなっていき、やがて。



「彼女が私たちに殺されるまでは。」




ーーー火柱を飲み込んだ。



前方で喝采があがる。

もう勝負はついたようだ。

気づけば隣にいたはずの彼女の姿はなく、探そうともしない私は先ほどまで火柱があった場所を意味もなくみていた。




入学して一年半が経った今。

リリーナが知らないところで事は進んでいる。彼女は学園の女子を敵に回し、自らの命に危機が迫っていることなど想像もしていないに違いない。いや、断言するのは良くないか。彼女は案外勘付いているのかもしれない。まあどちらでもいいんだけれども。


一年前、私は彼女、もといサーシャの存在を知ることになり、所謂仲間というものになった。彼女の目的は、リリーナの死であって、それ以下でも以上でもない。なぜリリーナを殺そうとしているのかまではわからないが彼女のその策略のあまりの徹底ぶりに本気だということだけは分かる。


「キーキョーウー!」

太陽はでていないというのに、リリーナの金色の髪はまるで、自分はここにいると主張するかのように美しく輝いていた。

両手で大きくこちらに手を振るリリーナとその横にいる彼ら。そして周りの人たちはそんな彼女達に様々な気持ちがこもった視線をそいでいる。

私は苦笑いをし、小さく手を振り返した。




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