↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BAKE-MONO  作者: 森村征爾
PR
1/21

冒頭 出会い

愛媛県の山間部には今も引き継がれた古唄がある。


〽お前は誰ぞ 誰ぞや

人の子なりと 答えけり

されど本当は 誰ぞや

獣なりとて 月が嗤う

人か獣か 誰ぞや



明治中期、松山城から東へ向かった先に東山神社という小さな社。

その社の下に一匹の獣が横たわっている。

左足に枝が刺さり、負傷したまま三日間動けずにいた。


獣の姿だけを見れば境内に鎮座する狛犬のような四本足の獣。

人が見れば、おそらく「犬」と呼ぶだろう。

だが、ソレは犬ではない。



三日月の夜。

一人の女が東山神社へ姿を現した。


「ウチの顔や足がこんなんでなけりゃなあ……」

左顔に大きな黒い痣があり、生まれつき左足も不自由な鈴(すず)は、人の視線を気にせずに済む夜を選んで参拝していた。


「もう東雲村で結婚してないのは、ウチだけやん……」

左足を引きずるようにして、ゆっくりと歩く。

雨が降りそうだと傘を持ってきたが杖代わりに使っていた。


家では、両親が鈴の貰い手を探すことに必死になっていた。

でも、鈴には分かっている。

自分の居場所など、どこにもない。


毎晩、東山神社で神様に向かって話をする。

他人から見れば独り言だが、鈴の話は誰も聴いてくれない。

ここだけが、鈴の居場所だった。


神社に着くと、鈴はいつものように手を合わせた。


「ウチの顔がこんなんでも、神様は結婚してくれるん?」

神様にまで求婚している自分がおかしくなって鈴は笑った。


雲行きは怪しくなり鈴が神社に辿り着くと同時に、三日月は雲に隠れ、雨が降り始めた。


「このまま一人で生きるしかないんかなあ……」

口にした途端、自分の言葉が惨めに思えてくる。


鈴は持ってきた干し柿を取り出した。

いつものように、神社の階段で食べようとした。


――そのときだった。


神社の下から、獣の唸り声が聞こえた。


「ひぇっ……」

鈴は驚いて立ち上がった。

その拍子に、膝の上に置いていた干し柿が地面へ落ちた。


そして……。


ソレが、鈴の前に姿を現した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。