Part 1
この前U-NEXTでK・コスナーとかK・サザーランドが出ていた「世にも不思議なアメージングストーリー」という映画(元はTVシリーズ)を観ました。ちっちゃい頃…確か「ビバリーヒルズコップ2」の併映で観た記憶があります。なつかしーなーおい!と楽しんで観ました。それでこういうのを書いてみようぜ、と思いました。あと最近自分の誕生日がありまして、自分の誕生日に誕生日ネタで1本短編をさくっと誕生させてやるぜ!と思って、コカコーラゼロを飲みながら書き始めたのでした。でも1日じゃ無理でした
キッチンにある冷蔵庫を開いて、横にして入れてあったHOPEのボトルを取り出し、改めて確かめる。
内容量が20オンス(約590ml)、アルミ製スクリューキャップのバースデーボトルは8ドルもする。フレーバーはオレンジ、グレープ、アップルの3種で、すべて炭酸入りだが、果汁は2.2%しか入っていない。
僕、アレグサンダー・ルーベン・スミスは、昨日10歳の誕生日を迎えて、家族や友人から様々な…大半はガラクタ同然のプレゼントと、この1年に1本しか注文できないボトルをプレゼントされた。ボトルを購入するには、2か月も前に予約が必要になる。それを送る相手の名前とバースデーを、ボトルにプリントしなくちゃならないからだ。それ以外に普通のボトル(内容量も味もまったく一緒なのに、値段は2.6ドルですむ)と違う所は、目盛りの表示がある事だ。
目盛りに何の用があるんだ? どうしてバースデープレゼントにソーダを? そんなバカな風習は他のどんな町にも、村にも、禁酒コミュニティにだってないぞ? そんな事、僕だって赤ん坊の頃から知っているさ。理由はあとで説明してやるよ。とにかく僕が生まれたこの町では、誕生日に必ずHOPEのボトルを貰うんだ。ミドル、ハイ、大人になったって、この町に住んでいる限り貰い続ける。
ボトルを縦にして、紫色…つまりグレープフレーバーのソーダがどれくらい残っているか確かめる。昨晩確かめた通り、7本の目盛線の内、3目盛の高さまで(つまり約9オンス=265mlほど)残っている。これだけ残っていたら、きっと大丈夫だろう。僕は丁寧に冷蔵庫の中へ戻した。
どうして残量を気にしているんだ、それくらいもう飲んじまえだって? 僕のバースデーボトルなんだから、僕の勝手じゃないか。そんなもの、家族の誰かに飲まれてしまうだろうって? いいや、それは絶対にない。他人のバースデーボトルに手を付けるなんて、牧師に自分のクソを投げつけるより罰当たりな事なんだ。
「アレック、朝食は済ませたのか?」
パパが2階から降りてきた。ライトグレーのスーツを着ているけれど、シャツの皺が目立つ。
「まだ」
「何もできていないじゃないか、ママはどこへ行った?」
「シャワーを浴びてる」
「まったく …グエンは?」
姉の名前だ。 出番はないから、紹介はカットするよ。
「まだ寝てる」
「我が家の女どもは、朝食のひとつも作らないのか」
「性差別だ」
「バカを言え」
「平気さ、自分で作れる。もう10歳なんだから」
踏み台を蹴って運んで、その上に乗って、戸棚からコーンフレークの箱を取り出した。食器棚から僕専用のボウルを出して、食卓でフレークを入れた。
「パパ、ミルクを取って」
「ああ」
冷蔵庫を開けたパパが僕のボトルに気づいて、それを取り出した。
「アレック、もうこんなに飲んだのか?」
「ねえ、勝手に調べないでよ」
「もう半分も残っていないぞ」
「はやくしまって!」
パパはボトルを元に戻し、冷蔵庫の扉を閉めた。
「ミルク!」
「ああっ すまん」
僕の隣に座ったパパはミルクのパックをテーブルの上に置いて、フレークを直接箱から摘んで食べ始めた。
「願い事があったなら、家族の前でそれを言って飲むのがルールだ」
「そんなルール、5歳を過ぎたら誰も守らない。僕はグエンの願いを聞いた事がない。彼女は去年、きっと処女を捨てられるよう願ったはずだ」
「おい、なんてことを言うんだ。 え、それって、グエンは誰かとその…ヤッたって意味か?」
僕はフレークにミルクをたっぷりかけた。
「個人情報だから言わない」
「おい、お前の姉はまだ16だぞ?」
「それって早いの?」
「スミス家のルールでは違反だ。相手は誰だ、ポールか? それともエリックじゃなくって…」
「エゼキエル」
「そうあの、科学オタクみたいなヤツか?」
「言わない。殺されちゃうよ」
「スミスルールでは、二十歳になるまでは家族の前で願い事を言うんだ。なにを願った?」
「勝手にルールを改正しないで」
「グエンにお前がばらしたことを言うぞ」
僕は器用にもミルクだけ吹き出した。
「き、汚いぞ!」
「ハロー!反抗期。 いいから言え」
パパはテーブルに置いてあるティッシュを取って、僕の口を拭いた。
「…リッキーの事をお願いしたんだ」
「…アレック」
「みんなやってるんだ」
「そんな事をしても無駄だ」
「分かってるさ、でも友情のためだ」
「それは否定しないがね、でもお前の願いを犠牲にしたって、法律は変えられない」
「法律を変えたから、いや滅茶苦茶にしたから、リッキーはアメリカから追い出されるんだろう?」
「変えたわけじゃない。厳格にしたんだ」
「これまでは何も言われてなかったじゃないか。ちゃんと毎年手続きをしていたって、もうすぐ永住権をもらえるって言ってたんだよ。 いつかアメリカ人になりたいって」
「詳しいことは知らないが、これまでもいくつか不備があったらしい。昨年までは温情で許してもらっていたけれど、厳しくなったんだよ。もう通用しない」
「大統領のせいだろ、クソな事しやがって」
「おい、よせ」
「どうして? 最っ低のヤツじゃないか」
「お前は子供だからよくわかっていない。確かに問題の多い男だが、移民政策に関しては彼の強引な手法に効果があったんだ。そのおかげでこの町も犯罪が減った。危ないヤツらの数がかなり減ったからだ」
「ボルガスさんはとてもいい人だ、お母さんも、お兄さんも危ないヤツなんかじゃない。みんな毎日まじめに働いていたじゃないか。パパだって知ってるだろう?」
「そりゃエンヅォはいい奴さ、マリアだってよくオマケをくれた。俺だって悲しんでいるさ。だが、それでも法は法なんだよ」
「権力者が法を踏みにじっているのに… あきれたもんさ、パパ達はそれまで、ああいうヤツらが悪役の映画やドラマを見て喜んでいたくせに」
「俺になにができる?」
「なにもできないさ、僕が学校に行く事しかできないように」
食べかけのフレークをそのままにして、ぼくはイスの背にかけてあったリュックを背負い、玄関に向かった。
「おい、送っていくぞ」
「自転車で行く、危ないヤツらがいなくなったんだから平気さ」
僕の住む町は南部の田舎にある。土地が余りまくっているから、みんな大きな家に住んでいるけれど、どれも古くてボロッちい建物ばかり。きっとハリケーンが来たら壊滅してしまうだろう。学校、教会、スーパーマーケット、ガスステーション、ダイナー、映画館、そしてボーリング場があって、車さえあればとくに困らないけれど、ほとんどの住人の生活は、決して豊かとは言えない。いいや、はっきり言って厳しいだろう。こんな町でも、物価は恐ろしくなる程上がっているからだ。パパをはじめ多くの人が1時間以上も運転して、町の外へ働きに出ているけれど、稼ぎの多くがガソリン代に消えているらしい。
こんな町にも基幹産業と呼べるものがひとつだけある。僕の家から西へ15マイル(24キロ)ほど行ったところにある、ある清涼飲料水の製造工場だ。
つまり、そこで作られているのがHOPEだ。古くから町で親しまれていて、もちろんコカコーラやペプシ、セブンアップも売られているけれど、売り上げはダントツでトップだ。人気の要因は親近感だけじゃなく、丈夫なボトルに入れてあるおかげもある。その分他と比べて少し割高だが、ガラス製の注ぎ口が唇に触れる時の心地よさ、まろやかな甘みが、缶やペットボトルのものより明らかに勝っている。生活は厳しくとも、ソーダを飲みたい時はみんなHOPEを買うんだ。
そしてさっきも話した通り、バースデープレゼントとして住民に認知されている事も大きな要因だ。HOPEの名の通り、バースデーボトルは、名前がプリントされた本人が望みを言ってから飲むと、それが叶うとされている。また、その効力は飲む分量と比例する…それを測るために目盛りがあるのだ。効力は当然次の誕生日まで、つまり一年なので、すでに望みがある者は、プレゼントされた日にすぐ飲んでも構わない。しかしもしも全部飲んでしまって、あとで他に望みができた時、もうそれは次の誕生日まで叶わない、という事になる…あくまでその効力を信じるならば、だが。
そのため、一年かけて少しずつ飲む者もいる。そうやって複数の望みを叶えようとするのだが、あまり時間をおくと、炭酸が抜けてしまって不味くなるし、コップに注いでしまうと効き目がなくなるという理由から、みんな直接口を付けて飲むので不衛生になる。しかも少量ずつだとそれぞれの効力が薄く、すべての望みが叶わないまま終わる、という危険性もある。…だからあくまでその効力を信じるならば、だが。
僕は昨晩、親友のひとり、リカルド・ボルガスと彼の家族が、どうか強制送還されませんように、という望みを言って、HOPEを飲んだ…4目盛り分。
「おいアレック!」
校長先生にあいさつした後、校舎に入ると同時に、メタリカのプリントTシャツを着たジミーに、後ろから肩を組まれた。
「やあジミー、昨日はありがとう」
「いいって事よ」
「ちょうど欲しかったんだ、あの…プロペラがないドローン」
「プロペラはネットで買えばいいだろ。 それよりお前、ちゃんと飲んだのか?」
「もちろん飲んだよ… それで、効果は?」
「…ダメだ。 リックのヤツ、今日も学校を休むってよ。 それどころじゃないらしい」
「…そうか」
「クソっ! もうどうしようもねえのか」
ジミーはリックと同じメキシコ系で、両親もまた移民だったが、すでにアメリカ国籍を持っていて、町でコンビニを経営している。だからよりボルガス家に同情していて、なにかと力になっていたようだ。ジミーもまた4か月前にあった自分の誕生日に、僕らの目の前でHOPEを息継ぎ一回で飲み干した。小学生のくせに胸板があるガキ大将だが、情に厚く、友情を疎かにするヤツを絶対に許さない。
ああ、言い忘れていたけれど、僕は水色のシャツとベージュのハーフパンツを着た…どこにでもいる白人のもやしっ子さ。
「他に誕生日が近いヤツは?」
「俺が知っている中では、フランツ・バックマンとソフィ・マルグリスだな。だが2人とも来月だし、リックとはそれほど親しくない。本心で望んでくれないと効果はない」
「本心で… そうか…」
お互いロッカーにカバンを入れて、一時限目の教科書とノートを準備する。
「アレック、お前ホントに、リックの事を真剣に願って飲んだんだろうな」
「あ、あたり前だろ? 疑うのか?」
「全部飲んだんだろうな」
「え?」
「お前まさか…」
「全部って… そんな契約してたっけ?」
「契約だと?」
「…冗談だよ」
「どれだけ残したんだ?」
「…2目盛り、いや、3目盛り分かな~」
ジミーがバンッ!と大きな音を鳴らしてロッカーを閉めた。僕は思わず両目を閉じ、両手を前で結んで神に許しを請うた。
「学校が終わったら俺ん家に集合だ。ボトルの残りをちゃんと持ってこい!」
「お、オーケー ジミー、 必ず行くよ」
Part 2に
そら続く




