表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/44

43:海から陸へ

 気がつけば、私は仰向けに寝かされていた。目の前に青い空が見える。

 隣を見ると、リーリアが横たわっている。


(そういえば、私……)


 直前の記憶を思い出し、慌てて周囲を確認すると、ここが船の上だとわかった。

 波の音が聞こえるということは、海……

 ダンジョンからかなり離れてしまったらしい。

 カルロたちに連絡したいが、チリはポケットの中で伸びている。倒れたときに巻き込んでしまったようで、申し訳ない。


 特に拘束されていないようなので、私は起き上がった。

 ヌシだけれど、ダンジョンから離れた私は無力だ。

 身を起こせば、助けた二人の人間が振り返る。


「あら、起きたのね。もうすぐショートカット地帯に入るわ」

「ショートカット?」

「この船は、モンスターの世界から人間の世界へ短時間で移動できる道アイテムなのよ」


 これが、例の魔石を使った移動アイテムらしい。


「あ、あの、私、もとの場所へ帰りたいです。ダンジョンへ」


 私が訴えると、人間の男女は信じられないという風に目を見開いて、口々に言った。


「駄目よ! あそこは危険なの」

「そうだぞ。無防備な女の子をモンスターの巣になんて、置いて行けない」


「でも、私は……ヌシなので」

「ヌシなら尚更なのよ。奪えば、モンスターが弱体化する」

「そんな、カルロがあなたたちに何をしたと言うの。彼は、禿鷲のダンジョンから二人を助けてくれたのに」

「……可哀想に。モンスターに洗脳されているのね」

「え?」


 私は驚いて、女性の目を見た。……本気だった。

 全然話が通じない。

 こちらの意見を聞く気がおおよそないのだ。

 それほどに、彼女はモンスターを危険視し、憎んでいる。

 人間の全てが悪人ではないように、モンスターの全てが悪ではない。


(そりゃあ、どこぞの蛇みたいに危険な奴もいるけれど、カルロは親切なモンスターだし!)


 主がいなくなれば、ダンジョンは立ち行かなくなる。

 過去、カルロは一度ヌシをなくし、ダンジョンは崩壊し、眠りにつく羽目に陥っている。

 二度と、彼にそんな思いはさせたくない!


「あなた方がなんと言おうと、私は帰ります。船を戻してくれないのなら、泳いで行く!」


 まだ、岸からさほど離れていない。今がチャンスだ。

 リーリアも途中から目覚めていたようで、困惑の表情を浮かべ、二人の人間を見ている。


「わ、私も……モエギさんと一緒に行きます! 一度モンスターの大陸に連れ去られた女性に、人間の世界は厳しいもの。それに、モエギさんとの生活は楽しそうだから」

「リーリア、泳げる?」

「ええ、泳ぎは得意よ」


 二人で頷き合い、一緒に海へ飛び込んだ。


「待て!」


 人間の男性の険しい声が聞こえる。

 でも、知ったことか。私たちはカルロのもとへ帰るのだ。あのダンジョンへ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
これもおもしろかったのです! 大好きです! ふたんでなければ(>人<)
[一言] 更新ありがとうございます、 白豚令嬢も、不良令嬢も好きですが、ダンジョンのヌシも大好きなので嬉しいです、 "淫魔の巣"というパワーワードがずっと気になっているので、 いつかモエギさんが建築し…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ