僕と彼女のよふね2
少し短いです。
「突然すみません。私、望月と言います。これ、名刺です。」
差し出された名刺には有名な通信会社の名前が書かれている。
芦名です、と名乗り僕も話に乗り出た。目の前の彼女は、さっきと同じ雰囲気を纏い変わらず僕をまっすぐに見る。
「あまりお時間をいただくわけにはいきませんので、単刀直入に言わせてくださいね。
……芦名さんは、最近病気をしたりだとか生死に関わるようなことがありましたか?」
眉間にシワが寄る。いったい何の話だ。
「唐突な質問ですね。――お陰様で健康で毎日やっていますよ。それがどうかしましたか?」
「いえ…。」
彼女は一瞬虚を突かれたような顔をして、目の前のグラスを見つめて考えこんでいる。
しばらくして何かを決意したように顔を上げ、口を開く。
「では、2日後にどこかへ出かけたりだとかスポーツをされたりだとかの予定はあります?」
これは、誘われているのか? それとも何かのセールスだろうか。それなら性質が悪い。
僕は少しうんざりしたふりの顔で、いいえと返す。
すると彼女は何か考えこむようにまた下を向いて黙ってしまった。
うつむいた顔から時折なにかブツブツと声が聞こえる。
幾分経ったくらいだろうか、しばらくすると縋るような目を何度か僕に投げ彼女は問いかける。
「すみません変なことばかり聞いたりして。でも今からもっとおかしなことを言います。――芦名さんは何か変な能力がありませんか? ……例えば、【数字】に関すること…だったりとか。」
僕はしばらくあれこれ考えた。【数字】ならばあのことしか思い浮かばない。
いや、お金のことだろうか。違う。しかしどうしてこの人からそんな話が出るんだ。
そんなはずは。
そのまま僕が何も言えないでいると、少し落ち着いた彼女が続けて話す。
「もしかしたら、の私の仮定です。全て憶測なので心当たりがないようなら頭のおかしい人と思ってくださって構いません。……ですが多分、私は芦名さんと同じか似たような性質の人間だと思っています。証拠と言うほどではないですが、私の場合はそれが背中に現れるんです。例外を除いてですが。」
同じ? 似ている? 例外?
暗に示してくるような話し方に混乱する。
だがその一方で頭の片隅でカチっと何かが嵌った音が聞こえた
頭の中は彼女の言葉と「まさか」「でもそれしか…」がしつこく繰り返えされている。
僕の顔から視線をコーヒーカップに向けて、また向き直る。
「芦名さん、後日別の場所でお会いしませんか。私も混乱しているので頭を整理しておきます。私の勘違いだったとしても……どちらにしても、一度お話したいです。
――多分大丈夫だと思うので。」
最後の方は尻すぼみになってよく聞こえなかったが落ち着いたら連絡をくれませんか、と言って彼女は会計を済ませ店を出て行く。
その背中は今朝の彼と同じく何もなかった。
未熟な話を読んでくださりありがとうございました。
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