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悪役令嬢なのに慕われる!?~令嬢たちが放っておいてくれません~  作者: ねぎとろ


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第1話 転生しちゃった・・・

目を開けた瞬間、見慣れない天井があった。

白い漆喰に金の装飾、巨大な天蓋付きのベッド、ふかふかの羽毛布団。

そして――

「お嬢様! お気がつかれましたか!」

 若い女性の悲鳴にも似た声が響いた。

 私は反射的に飛び起きようとして、盛大に失敗した。

「いたっ!」

 額をベッドの柱にぶつける。女性はさらに悲鳴を上げた。

「お、お医者様を! 旦那様と奥様も!」

 何事?というかここどこ?

 私は混乱しながら周囲を見回した。

 広い部屋に高価そうな家具。

 壁に飾られた肖像画に窓の外には手入れされた庭園。

 どう考えても日本じゃない・・・というかホテルでもない。

「……夢?」

 そう呟いた瞬間、頭の奥に激痛が走った。

「っ……!」

 大量の映像が流れ込んでくる。

 高校の教室、友達との会話、スマートフォン。

 文化祭、コンビニ、電車。

 そして――

 横断歩道を照らす眩しいライトと急ブレーキの音・・・と衝撃。

 そこで記憶は途切れていた。

「……え?」

 息が止まる。

 私は、死んだ・・・はず・・・?

 いや、そのはずだ。

 だが同時に、別の記憶も流れ込んでくる。

 ヴィオレッタ・アルバレス。

 公爵家の一人娘で9歳の女の子。

 好きなものは甘いお菓子。

 嫌いなものは自分の思い通りにならない人間。

 癇癪持ちで傲慢な我儘お嬢様。

 使用人を困らせるのが日課な最悪なお嬢様だった。

「……うそでしょ」

 私は思わず呟いた。

 目の前の鏡台に映る少女を見る。

 艶やかな銀髪に大きな赤い瞳。

 人形みたいな顔立ち。どう見ても日本人女子高生ではない。

 完全に別人だった。

「お嬢様?」

 側に立つメイドが不安そうな顔をしている。

 たぶん20代前半くらい。

 記憶によれば名前はエマ。私付きの専属メイドだ。

 そしてヴィオレッタに毎日振り回されている苦労人でもある。

「……エマ?」

「は、はい!」

 エマは背筋を伸ばし、なぜか怯えている。

 いや、理由は分かる。

 今までのヴィオレッタなら、

『返事が遅い!』

 とか言って物を投げてもおかしくない。

 実際、やっていた記憶がある。

 ひどいなぁ・・・

「ごめんね」

「…………え?」

 エマが固まったので私も固まった。

 え・・・今なんでそんな顔した?

「いや、私が倒れて心配かけたから」

「えっ」

「いつも大変だったよね?」

「えっ?」

「ごめん」

「ええっ!?」

 エマの顔色がみるみる変わっていく。

 青、白、赤、忙しい。

 やがて彼女は震えながら言った。

「お、お嬢様……」

「うん?」

「どこかお痛みになりますか?」

「頭は少し痛いかな」

「やはり!」

 エマは泣きそうな顔になった。

「頭を打たれて性格まで・・・!!」

「違う違う違う」

 何その診断・・・怖いよ。

 だが訂正する間もなく、部屋の扉が勢いよく開いた。

「ヴィオレッタ!」

「娘よ!」

 飛び込んできたのは豪華な服を着た男女。

 父親と母親だ。記憶が教えてくれる。

 アルバレス公爵夫妻。この国でも有数の権力者。

 そして――

 娘を溺愛している人たち。母親は私を抱き締めた。

「心配しましたのよ!」

「本当に無事なのか!」

「え、えっと……」

 私は思わず苦笑する。少なくとも前世では味わったことのない勢いだった。

「大丈夫です」

 そう言った瞬間、部屋の空気が凍った。

 父も母もエマも。他の使用人も全員が固まっている。

「あれ?」

 何か変なこと言った?

 父親が恐る恐る口を開いた。

「今……何と?」

「大丈夫です?」

「……敬語を使った?」

 母親が呟く。そこで私は思い出した。

 ヴィオレッタは両親に対しても、

『お父様!』『お母様!』

 と命令口調で話すような子。8歳児とは思えないほど我儘だった。

 つまり今の私はあまりにも別人らしい。

「……あ」

 しまった・・と気付いた時には遅かった。

 部屋中の視線が私に集中している。

 だがそんなことよりも私の頭の中には別の問題が浮かんでいた。

 ヴィオレッタ、銀髪、赤い瞳、公爵令嬢。

 どこかで聞いたことがある。

 私前世の記憶を辿る。

 友人に勧められて遊んだ乙女ゲーム。

 タイトルは――

「聖…ローゼ…学院物語みたいな感じだったような?」

 (一気にやってたから題名があやふやだ.....ただ、学園もののゲームだった気がする)

 その瞬間、背筋に冷たいものが走った。

 なぜなら――

 ヴィオレッタ・アルバレスは、そのゲームで主人公を虐め抜き、最後に破滅する――悪役令嬢だった.....ハズだ

「……終わった」

 思わず漏れた呟きに、両親は顔色を変えた。

「ヴィオレッタ!?」

「娘よ、しっかりしなさい!」

 しかし私の耳には何も入らなかった。

 破滅、断罪、国外追放。

 ゲームで見た最悪のエンディングが脳裏をよぎる。

 そして数秒後、私は布団の上で静かに拳を握った。

「……絶対に嫌」

 誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。

 せっかく生き返ったのだ。破滅なんてごめんだ。

 私は決意する、悪役令嬢ヴィオレッタとして。

 今度こそ、まともに生きるのだと!


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