表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

ヴァイアン・ローレンス視点,1

 サンディー・ノエル、世界一嫌いな女だ。


 無駄に華美なドレスと装飾品、靴に髪飾り。しかもそのどれもがちぐはぐだ。


(豪華に見えればそれで良いのか。売女め)


 ちらりと僕を見るその目も、知性のかけらすら見て取れない。そんな女と並んで歩くのも嫌だと言うのに。


(…いけない、思い切り顔に出てしまいそうだ)


 僕は今日、このサンディー・ノエル伯爵令嬢と夫婦の契りを交わす。


「誓いのくちづけを」


 げんなりした。手の甲では駄目だろうか。僕の本当の想い人が見ている。サンディーの妹、メアリー・ノエル。

 僕の視線はサンディーを超えて、メアリーに向けられた。

 酷い姉を祝福するメアリーの穏やかな微笑み。彼女の視線が僕と絡んだ。


(ああ…)


 サンディーにメアリーを重ねて、なんとか頬にくちづけを交わすことで誤魔化した。

 ためらいに気が付いた牧師の、安堵のため息が漏れる。


(メアリー)


 なんという美しさだろう。君は、一瞬で僕の目線を奪ってしまう。


(ここに立っているのが君だったなら、どんなに…)


 だが仕方がない。求婚を断られた僕に、どうすることができただろう。


(義兄の僕は、誰よりも君を想う)


 僕の気持ちを、知ってか知らずか、サンディーはにこりと微笑んだ。


(本当に、げんなりする)


 どれだけの男に抱かれたか知れぬこの売女が、純白のドレスを着てヴァージンロードを歩く様は、滑稽を通り越して失笑ものだった。


 しかし、サンディーの持参金に目が眩んだのは事実だ。ノエル家としても、早くこの娘を嫁がせてしまいたかったのだろう。でないと、姉の悪名のせいで妹までもが婚期を逃す。メアリーを狙う男は数多いるというのに、だ。

 メアリーが僕の求婚を断ったのにも、姉を差し置いて先に嫁入りすることなどできないという謙虚な理由であった。


(だが、僕は知っている。求婚を断った本当の理由は、僕に付き纏う恐ろしい噂のせいだ)


『生娘を攫って喰らう、氷の伯爵』


 所詮つまらぬ噂だ。だが、なるほどそうか、だから売女の姉を寄越したのだ。命までは取らぬだろうと…。


(どうも卑屈になっている。やめよう、くだらん憶測だ)


 教会に、祝福の花びらが舞う。サンディーが嬉しそうに頬を赤らめたその様子に無性に腹が立つ。


(メアリー、僕は君のことを義兄として生涯見守ろう。他の誰よりも間近で…)

面白かった!続きが読みたい!と思ったら、

ぜひ広告下の評価を【⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎】→【★★★★★】にしていただけたらモチベーションがアップします!よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ