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ロクでなしの魔女  作者: 木介


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魔女リリス

【登場人物】

・ハウス

魔女に会うため屋敷を訪れる。


・リリス

屋敷の魔女。

ボンドと別れ数週間が経った。

ハウスは瓦礫の山を掘る、掘る、掘る。

そしてやっと見つける。かつての美しさは無い黒く焦げた身体で眠る彼女。

応接室へ運びハウスは目覚めを待って、待って、待っていた。

そしてリリスはどろどろに剥げた顔で正気なく目覚める。


「おはよう」


寝起きだからか彼女は不機嫌に見えた。

もちろん表情からは読み取れないがそう見えたのだ。

暫く間をおいてから「全て終わったのね」とリリスは一人呟いた。


「まだ終わってない」


ここでやっとハウスの存在に気付いたかのように顔を向ける。


「そうだったわね、確か私を殺すんだったわね」


どうぞと言わんばかりに応えるリリスの言葉に以前のようなお互いに探りあい張り合う彼女はもういないのだと悟った。


心無いリリスを無視してハウスは箱を渡した。


それからもハウスは瓦礫の山を撤去していた。

腑抜けになったリリスとの最後の舞台を整える為に。


「リリス付いてきて」


ハウスは気が抜けたような見た目のリリスを半ば強引に連れ出し、かつて大広間であった場所にテーブルに見立てた石と近くの木を切って運んだだけであろうイスが用意されており、テーブルの上には木の実や山菜、一応肉も置いてあった。


「俺、一応狩りも出来るんだぜ」


そう言いながらリリスへ席を促す。

彼女は返事などせずただ従った。


「皆がいた頃もこんな風に二人で食事をしながら話したな」


「…」


「だけど今回話すのは俺、俺が屋敷に来る前の話をしよう」


この話しには興味があるのかリリスは顔を向けて、耳を傾けた。


ーーー


ハウスは子供の頃、両親に捨てられたのだと思う。

思うというのは物心ついた時には一人であった為、両親についてはまるで分からないからだ。


当時、好奇心旺盛なハウスは地元で有名な魔女と呼ばれる人の元へと訪れる事が多かった。

というのも地元に居場所などなく人気(ひとけ)のない所に行ったら、たまたま魔女が住んでいたに過ぎない。

その魔女は始め、一人でいる幼いハウスを死んだら死んだで良いという感覚で眺めていた。

それがだんだんと声をかけるようになり、一緒にいるのが暇潰しとなる。

次第にペットを飼う感覚で犬のように扱っていくようになった。

この頃のハウスは魔女とは名ばかりで只の偏屈な老婆が暮らしているという感覚であった。


この時に使用していた、魔女の帰れという意味の「ハウス」という言葉を自分の事だと勘違いしそのまま彼の名前となる。


魔女は彼が裸足なのに気付いて危険から逃げれる靴を与えた。


魔女は彼が全身傷だらけなのに気付いて身を守るジャケットを与えた。


魔女は彼が狩りを上手く出来るように剣と銃を与えた。


それに代償はなかった。


ハウスは歳を取るにつれ言葉を憶え話せるようになっていく、その時魔女はよく昔話をしてくれた。

過去を振り返れば一番楽しかったのかも知れない時期の話、だがその反面一人になってしまう一番辛い時期の話。


『かつてある屋敷にいた時、その屋敷の少年と魔女は恋に落ちた。

当時、屋敷の主が死んで後継者争いに巻き込まれる事になり、人間達は魔女である私の扱いに困っていた。


ある者は味方に付けたがり、ある者はやっかみ、ある者は私と契約したりした。

だけどこの少年は違った、一人の人として、いや、女として扱ってくれた。

少年は私にお願いなどしなかった、今にして思えばそんな事をする理由がなかっただけである。

魔女と一番親しいという事実が最大の武器になったのだ。


そんな事には薄々気付いていながらも魔女にとっては一番の存在であった。

そして少年が当主となった時、ある男から交渉される。


当主は自らの地位を脅かす者を全て殺害しようとしている、当主の再従兄弟を無事に逃がしてくれたら、代わりにある情報をくれるという交渉だ。

私と交渉する為の情報だ、そんなつまらないものでは無いはず、人一人の命で買えるなら安いものだと思い交渉に応じた。


男の情報は当主の女性関係である。

彼は好色で使用人とも肉体関係をもっていた。

だがそれは魔女も重々承知の上だった、同じ場所に暮らしていて気付かないわけがない、例え外に百人の愛人がいようと彼女にとっては今更な事である。


その様子を見て男は続ける、それは近々遠方の名家の娘と結婚をするという情報だ。

そして彼は続ける、財産などは既に移動し気に入っている使用人にも付いてくるように声を掛けているとの事だ。


つまり声を掛けられていない私は屋敷と共に捨てられる予定という事であった。


(捨てられる…私が…)


男はその情報を残して立ち去った。

最後に約束は必ず守るようにと言葉を残して。


私には一匹の使い魔がいる名前はシャミ、小さな黒猫である。

屋敷に来てからは皆に可愛がられ悠々自適に暮らしていた。


「シャミー! 今日も可愛いねぇ~」


今日も多くの若い女性が群がり、屋敷の使用人である彼女達の膝に座って撫でられながら会話に混ざっていた。


「シャミ~、今日は私の所に来てくれないのね」


シャミに座られた女性は今日一日幸運に恵まれるという謎のジンクスまで出来る程だ。


だがこの日は違った。


膝の上で撫でられながら眠っていたシャミが突然起き上がる。


「シャミ? どうしたの?」


瞬間、シャミはその女性の首をかっ切った。


多くの悲鳴が聞こえるなかシャミは魔女の言葉しか聞こえない。


(女は全て殺せ、邪魔する男は痛め付けろ)


彼女の怒りに呼応するようにシャミは大きくなっていき、その場に集まっていた女性は全て殺される。


屋敷中パニックに陥った。

多くの者が屋敷から森へ逃げた、だがそこから街へ出られた者は一人を除いて存在しなかった。


直ぐに「どうゆうつもりだ!」と当主になった少年が駆け寄ってきて魔女の身体を揺する。

魔女は彼の言葉など聞かず、その心臓を手で貫いた。


「お前…」


そのその傷口から出たのは血ではなく火、彼は自らを燃料として燃え始める。


生きてる限り永遠に燃え続ける炎、魔女は彼を屋敷の一室に閉じ込めたのだった』


ハウスは大人になるまでこの話を永遠と聞かされた。

そしてハウスが二十歳になった時、魔女は言う。


「今まで私が与えた能力の代償を払って」


「えっ! 代償って?」


「何度も話したでしょ? 過去の私を殺してきて」


そして周りの景色が歪んでいく。


「お願いね…ハウス」


ーーー


「…」


ここまで聞いてリリスは何も応えない。

ハウスも同様に話さない、ただ彼女の言葉を待った。


「じゃあ、私を殺さなきゃね」


「いいや、まだ殺さないよ、今度は君が話す番だから」


「私が話す? 全てを未来の私から聞いてる貴方に?」


「あぁ、俺が話したのは未来の君だ、俺が来たことで変わった今の君と話したい…君はどうしたい?」


「私は…」そう言って彼女は箱を握り締める。


あれからいく年月が経ったであろう、心臓を取り戻したリリスはかつての美しい姿を取り戻していた。


彼女の選択それはハウスに任せるという未来の自分と同じ選択をする。


そしてハウスも選択したリリスを殺さないという選択を。


すると彼女は言う

「じゃあ私はまた未来の貴方に運命を託すわ」


今度は俺を永遠に閉じ込める気かとこのロクでなしの魔女を恨めしく想う反面、決して悪い気はしなかった。


(了)

最後まで読んで頂きありがとうございます!

誰かに読んで頂ける事でとても励みになりました。


この物語の主人公はハウスですが、リリスの物語でもあります。

彼は殺さない選択をする事で自らループをしてしまう事になります。ですがこの選択は前から決まっていたもので、ボンドと別れる時のセリフにも繋がってきます。


次にプロテスについてですが、永遠に燃え続ける炎というのは嫉妬を表現しており、ハウスがプロテスから彼女の心臓を抜き取ってます。

これは死ぬ時は共に死ぬという裏切られても尚、彼を愛していたリリスの覚悟の表れです。

なので応接室で目を覚ました時、彼が死んだ事を悟ってリリスは全てどうでも良くなりました。

彼女も誰かに依存して生きておりプロテスを利用していたという事です。


最後にこの話は誰でも一回は想像した事があるかも知れない、【特別な力を手に入れたら?】という所から始まっています。

その力で仮に何かを成したとしたら?

誰かを生き返らせたりしたら?

果たしてそれは幸せになるのか?自己満足ではないのか?

そんな想像を膨らませて作成しました。


長編というのはおこがましいかも知れませんが、私の作品でこれ程長く書いたのは初めてであり、プロ作家の方々はこれ以上の事を日常にしているという凄さを実感しました。


これにて【ロクでなしの魔女】完結となります。

また新しい作品を書いた際には読んで頂ければ幸いです。


改めましてお礼申し上げます。

ありがとうございました!!

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