042 謁見の間
三日後。
支部長とオレたちは王宮に来ていた。支部長はすぐに謁見の間に呼ばれるが、オレたちは控えの間に通された。
王様は支部長とオレたちとは別々に会うようだ。
前回はすぐに謁見だったから気が付かなかったけど、王宮って意外と派手派手しさはない。こういうのって王家の権威を見せつけるために庶民にもわかりやすいくらい豪華なのかと思ったけど、豪華な調度品とかそういった物はなかった。
意外と質実剛健な気風なのだろうか?
「はぁ……嘆かわしい……」
控えの間のソファーに座ると、アリューシアが深い溜息を吐く。
「どうしたんだ、シア?」
「いや、王宮もずいぶんと寂しくなってしまったなと思ってな……」
「寂しく?」
人ならたくさんいるとは思うのだが、もしかして大量リストラとかあったのだろうか?
疑問が顔に出ていたのだろう。アリューシアが口を開く
「以前はこの部屋も相応に飾り付けられていたのだが、おそらく戦費捻出のために売り払われてしまったのだろう。財政もかなり厳しいと聞いている。ヒイロたちは商爵というのを知っているか?」
「商爵?」
「なにそれ?」
「優れた商人に贈るという爵位ですよね? それがどうかしたのですか?」
オレとマリーは知らなかったが、エミリアは知っているらしい。
「これは公然の秘密だが、商爵という爵位は金で売られているんだ。表向きは寄付金という形になっているがな。この国の財政はそこまで厳しい」
「それはなんというか……」
半銅貨事件もそこまで責められなくなっちゃうな。
「だからというわけでもないが、報奨金が少なくても仕方がないと思ってくれると助かる」
そう言って困った顔を浮かべるアリューシア。貴族である彼女にとって、国家の衰退というのは他人事ではないのだろう。もしかしたら、自分が魔王を倒すという考えもそこに根差したものなのかもしれない。
その後、オレたちは案内役に先導されて謁見の間へと通された。
以前と同じく、幅の広い赤い絨毯が中央に敷かれ、その左右に兵士が列を作っている。
この前は気が付かなかったが、今回は多くの貴族と思われる人々が謁見の間に集まっているのがわかった。
以前はマリーと二人だったので注意されることもなかったが、今回は四人だ。当然、並び方にも席次のようなものがあるらしい。
まず、四人のリーダーで勇者のオレが一番右。その次は高位貴族の娘であるアリューシア。次に聖職者であるエミリア。一番左が平民であるマリーだ。
「勇者、ヒイロの入場です!」
部屋全体に響くようなバリトンボイスで入場を告げられる。
「行こうか」
オレは小さく呟くと、赤い絨毯に踏み出す。
そして、ストンと赤い絨毯の中に腰まで落ちた。
「ヒイロ!?」
隣を歩くアリューシアが驚きの声をあげる。
「あー……」
忘れてた。ここの絨毯は当たり判定がなくて潜ってしまうんだった……。
「勇者殿、今回は遊ばずに真面目にお願いします」
「あ、はい……」
近くの兵士に注意されてしまった。
オレだって好きで遊んでるんじゃないんだけどなぁ。
「よっこいしょ」
絨毯の端から登って謁見の間の入り口に立つ。
こういう時は腕輪の出番だよな。
オレは右手を前に差し出すと、金色の六角ナットのような腕輪から鋭角的な棘が突き出ると、腕輪が回り出した。そして、まるで文字化けしたような文字列の束が高速で発射される。
これで大丈夫かな?
足先でツンツンと赤い絨毯を突けば、ちゃんと当たり判定があった。
そのまま歩き出すと、今度は絨毯に沈まない。やったね。
それから今回言われた通りに十五歩歩くと、そこで跪く。
今回は玉座にちゃんと王様らしい人が座っていた。こっちのバグもついでに直ったみたいだ。
「勇者ヒイロ、ならびにその仲間たちよ。魔王十二魔将の一人、魔拳のガルシムを討ち取ったこと、褒めて遣わす」
「もったいないお言葉でございます」
事前にアリューシアにレクチャーされた通りに返す。仲間に貴族の作法に詳しい人がいるのはいいね。
「よく王都の危機を救ってくれた。朕はその偉業に報いたい。勇者ヒイロにはリアルエロ男爵の爵位を与える」
「ッ!?」
男爵!? そんな話聞いてないぞ!? 報奨金じゃなかったのか!?
そっと隣を見るとアリューシアも驚いた顔をしているし、謁見の間に集まった貴族たちも聞いていなかったのかザワザワしている。
「いや、あの――――」
「受けてくれるな?」
とても断ることができない雰囲気だ。
「はい。ありがたき幸せです」
「うむ」
そうして、ちょっと貴族間でも混乱がありそうな謁見が終了したのだった。
それにしてもリアルエロ男爵か。もう少しマシな名前はなかったのだろうか?
「リアルエロ男爵」
謁見の間を出ると、貴族らしき人に呼び止められた。
「はい」
「こちらが今回、陛下からのお祝いの品の目録になります。ご確認ください」
「はい?」
ちょっとして、男爵の位だけじゃなくて他にも貰えるのか?
なんだか前回と違ってかなり豪勢だな。
◇
翌日。
「ここがそうなのか……?」
オレたちの目の前には、伸び放題の雑草の向こうに蔦の緑で覆われた一軒の古びた屋敷があった。一目で整備していないことがわかる屋敷だ。
実はこれ、昨日の謁見の後正式に王様から貰った褒美の一つなのだ。他にも貴族が乗るような馬車や正式に男爵に任命されたことが書いてある書類などなどいろいろ貰っている。
「立派な屋敷だったのだろうが、住むには手入れが必要だな」
「そうだな」
アリューシアの言う通り、ここを住めるように整える必要があるが、コストがかかりそうだ。
「王宮にも近いですし、この広い敷地です。報酬を弾んでくれたのでしょうけど……」
エミリアも困った顔をしている。
そうだね。たぶん、ポテンシャルはいいんだけど、屋敷が古すぎるんだ。
「ねえ、ヒイロ。これだけ広いんだもの。草刈りすれば畑にしてもいいのよね?」
「畑はどうだろう……?」
他の貴族って家庭菜園とかやってるのか?
「まあいいさ。また帰ってきてから考えよう」
「そうね!」
「そうしましょう」
「そうだな」
謁見では男爵になれたし、屋敷も馬車も貰えた。大成功ではあるのだが、報奨金はもらえなかった。なので、日々の生活の糧を稼ぐ必要がある。男爵になったところで、冒険者は辞められないのだ。
それに、先の戦争では多くの魔物が多と近郊の森に逃げ出した。その討伐をする必要もある。噂では、近日中に森狩りがおこなわれるらしい。冒険者ギルドからもせっつかれてるし、オレたちも討伐に参加しないとな。
冒険者ギルドといえば、オレたちの冒険者ラングがまた一つ上がった。今度はレザー級らしい。ガルシムを倒すという大功を挙げたオレたちだが、冒険者ギルドには飛び級の制度はないらしく、一つ上のランクになっただけだった。冒険者の中では、レザー級はようやく新人を抜け出したという感じのポジションらしい。
まぁ、ガルシムを倒せたのはバグのおかげだし、あれがオレの実力と思われたら堪ったものではないのでよかったと言えばよかったのかもしれない。
「じゃあ、行くか」
「ええ!」
「はい!」
「うむ!」
オレたちは今日もゴブリン退治に森に行くのだった。
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