ファイル6 殺人が行われた部屋
千堂と小林は、大家から依頼を受けて、とあるマンションを訪れていた。
「この部屋のお風呂場で死体をバラバラにして、トイレで流したんだよな。」
大家が語ったその言葉に、千堂は眉をひそめた。
「え…バラバラにして?」
千堂はが信じられないという表情を浮かべながら、質問する。
「そうだよ。しかも、排水溝を通してマンション全体にバラバラ死体が流れたんだ。」
大家はしみじみと続ける。
「その後、下水のメンテナンスで全てが一気に広がった。」
「つまり、全ての部屋で、その臭いや気配が広がったってことですね…?」
千堂が冷や汗をかきながら確認した。
「その通りだよ。」
大家が深く息をついた。
「そのせいで、マンション全体が『地獄』のような状態になった。」
その後
相場より半額で貸し出した、この部屋はすぐに入居者が決まった。
「入居者が決まってよかったですね。」
小林は賃貸契約書を大家さんに渡す。
「まあ、そうだな。次からは言わなくて、いいからね。」
大家は苦笑しながら答える。
「殺人現場だってことは最初の入居者には告知するけど、その後は告知しないことになったんだ。」
小林が千堂に説明をする。
「えっ、どうして?」
千堂が驚きの声を上げる。
「歴史あるマンションには、しょっちゅう人が死ぬから、そのたびに告知し続ける意味がないって判断されたんだ。」
「…それって、怖すぎませんか?わたし古いマンションは怖くなりました。」
千堂が冷や汗をかきながら言った。
その瞬間、辺りの空気が一変した。部屋の中に妙な静けさが漂い、何か不気味な感じがした。
「そうだな。でも、入居者が決まったってことは、何かが変わったんだろうな。」
小林が不安げに言う。
殺人が行わた部屋の様子を見に二人は、廊下を進んで部屋に到着した。ドアを開けると、そこには異様な空気が充満していた。
その瞬間、暗がりから何かが動いた。千堂と小林は一瞬、息を呑んだ。
「だ、誰かいる?」
千堂が震えながら言う。
「いや、気のせいだろう。」
小林は動揺を隠しつつ、周囲を確認した。
ヒュウー
その時、廊下の奥から冷たい風が吹き込んできた。
千堂が振り返ると、ドアが静かに閉まり、何かがその中に閉じ込められているような気配がした。
突然、ドアが急に開き、強い風が吹き荒れると、室内の温度が急激に下がった。
「ここ、何かがおかしい。」小林が足元を見て言う。
「いや、これは…」
千堂は何かに引き寄せられるように、部屋の奥に進んでいった。
その瞬間、目の前に異様なものが現れた。それは、無数の手が床を這い回るような幻覚だった。
「うわっ!何だこれ!」
小林が叫び、後ろに飛び退いた。
「今、何かが…確かに見えた…!」
千堂が声を震わせて言う。
二人は急いで部屋を出ようとしたが、ドアが開かない。
「何で開かないんだ?」
小林が焦りながらドアを引っ張った。
「うおおお!」突然、部屋の中からうめき声が響き渡り、ドアが激しく揺れた。
「やばいです、逃げましょう!」
千堂が叫び、力いっぱいドアを押し開けて、二人は一目散に廊下に飛び出した。
数ヶ月後、その部屋は誰もいなくなった。
その部屋には、不気味な兆しがまた現れた。再入居者が部屋に入った直後から、部屋の空気はさらに重くなり、徐々に不可解な出来事が増えていったという。もともとの告知内容が変更されたことで、何も知らずに入居した者は次々と異常を感じ、最終的にその部屋に住み続ける者は誰もいなかった。
そして、誰もが気づいた時には、異常がすでにそのマンションに深く染み付いていた。住民たちは「何かが取り憑いている」とささやき合い、部屋の前を通ることすら避けるようになった。
その後、マンションは放置され、やがて「禁断の場所」として地元で有名になった。しかし、それから数年後、その場所で新たな建設計画が持ち上がることになる。
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