5 アリアの助言
アリアは、どんな形であれ、2人が望むのであれば、
結ばれれば良いと思っている。
誠実に婚約を解消する努力をしてから、
恋人になってくれれば良いのに…とはずっと思っているが。
私としても、婚約の解消は有難いのだ。
まずは彼らが望む【最良】は…
レイ殿下とナターシャ嬢が結ばれ、
かつ、王と王妃の立場を得ることだろう。
実現するには、2人の努力が必要不可欠だ。
可能性としては、かなり厳しいがゼロではない。
2年生の間なら、まだ間に合うかもしれない。
ナターシャ嬢の意見によって、レイ殿下が良い方向に
変わるのであれば、ハードルが下がる可能性もあり得る。
最良の次、【良】は…
王位を手放さなければならないが、2人は結ばれる。
決断が迫られる時の2人の状況によるが、
新たな公爵家を立ち上げるか、ナターシャ嬢の男爵家に
入るかの、どちらかだろう。
そして、【最良】【良】共通の、改善するべきこと。
ナターシャ嬢は、
レイ殿下の側近の3人とも親しくしているのだが、
彼らにも婚約者がいる。
反感をかうのは当たり前だ。
これは出来るだけ早く、正してもらう必要がある。
貴族との関係が悪くなれば、今後困ることになる。
(本当に、何の為にいる側近なのかしらね…)
出来ればどちらかの道に進んで欲しい。
この2つの道以外となると、平民になるか…
もっと最悪な事になりかねない。
私が動くのは、5回の接触のみ。
タイミングを見て、ナターシャ嬢へ助言をするだけ。
その後、彼らが何を考え、何を選択するかだ…
***
国王陛下には、監視と記録の依頼以外に
レイ殿下に手を出さず、最後まで見守ってもらう様に
お願いした。命令するのでは、ダメなのだ。
彼らが、自分達で考え動く事が、重要なのだから。
そして陛下は
『卒業までに、レイ殿下が致命的な問題を起こした場合は、
すぐ婚約解消に応じる』と、約束して下さった。
***
結果として、助言は活かされなかった。
側近のうち1人が、
ナターシャ嬢との関係を問題ととらえ、
距離を取るよう改めた事しか
変化は見られなかった。
アリアは密かにがっかりした。
どこかでは、そうなるのでは…と予想していた。
でも良い方に変化が有るかも…と期待もしていたのだ。
(人の意識は、簡単に変えられないという事ね)
3年生の半ばには、ほぼ諦めていた。
そして、監視から決定的な不貞の報告があがり
婚約は解消となったのだ。
未練などなかったが、何故かむなしい気持ちになった。
(ここまで蔑ろにされるとは…ね)