第十七話 驚く
◆レイナ
上層会議。
長い机。
重い空気。
誰も感情で話していない。
「召喚能力者について報告しろ」
男が言う。
レイナは立ったまま答える。
「暴走状態で召喚を確認」
「兵士複数を瞬時に排除」
目撃者がいる。
嘘はつけない。
紙が回される。
能力分類。
戦闘評価。
適性。
すべてが数字だった。
「召喚対象の制御は?」
「可能」
「精神状態は?」
「不安定」
短い沈黙。
だが。
「問題ないな」
一人が言った。
「召喚系は希少だ」
「子供でも不安定でも関係ない」
「即戦力化を提案する」
誰も否定しない。
当然のように進む。
「異論は?」
視線がレイナへ向く。
ほんの一瞬。
言葉が浮かぶ。
まだ、子供です。
だが。
「……ありません」
口から出たのは、それだった。
「決定だ」
木槌の音。
「召喚能力者シオンを兵士区分へ編入する」
決まった。
あまりにも簡単に。
レイナは目を閉じる。
……同じだ。
この国も。
昔いた場所も。
何も変わらない。
◆ミア
部屋の空気が重い。
ミアはずっと扉を見ていた。
シオンはもういない。
連れていかれた。
戻ってこない。
それだけが分かる。
「……行っちゃったな」
レオンが壁にもたれながら言う。
ミアは答えない。
「まただ」
小さく呟く。
「みんないなくなる」
レオンも黙る。
否定できない。
ここでは、それが普通だった。
ミアは膝を抱える。
「シオン、笑ってた」
「なんであんな普通なの……」
レオンは目を閉じる。
「……あいつ、優しいから」
その言葉だけが残る。
◆シオン
白い部屋。
冷たい空気。
兵士が並んでいる。
「今日からお前は兵士だ」
「能力者として管理する」
シオンは椅子に座ったまま聞いている。
よく分からない。
でも。
ミアとレオンは無事だった。
それでいい気がした。
「返事は?」
兵士が言う。
シオンは少しだけ考える。
そして。
「……うん」
頷いた。
兵士が記録を書く。
それだけ。
それだけで、全部決まった。
◆レイナ
廊下。
監視。
兵士。
視線。
すべてを確認する。
その奥。
隔離部屋。
シオンが座っている。
「お姉ちゃん」
レイナは短く頷く。
周囲を確認する。
「この国を壊す」
小さい声。
シオンは瞬きをする。
「……なんで?」
「あなたがまた兵器にされる」
シオンは少し考える。
そして。
「嫌」
レイナが止まる。
「ミアとレオンがいるから」
「二人が生きてるなら、それでいい」
レイナは言葉を失う。
シオンは静かに言う。
「私は、ここにいたい」
穏やかな顔だった。
だからこそ。
レイナには分かった。
染まってる。
少しずつ。
この国に。
その夜。
新しい報告書が届く。
レイナが目で追う。
ノクシア王国。
内乱。
新勢力。
最初は小さな文字だった。
だが。
読み進める。
「ノクシア王国南部にて新国家樹立確認」
「犯罪率ゼロ」
「反乱発生なし」
「国民満足度:高」
レイナの目が止まる。
次の一文。
「理想国家を掲げている」
最後。
名前。
そこに書かれていた。
王、ルーク。
レイナの指が止まる。
静かに。
本当に静かに。
口が開く。
「ルーク……?」




