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平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


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第十話 知ろうとする

◆レイナ


朝。


目を覚ますと、天井があった。


崩れていない天井。


血の匂いもない。


「……」


一瞬だけ、ここがどこか分からなくなる。


「お姉ちゃん」


隣でシオンが起き上がる。


「ごはん、もらえるんだよね」


「……らしいね」


外に出る。


すでに人が並んでいた。


パンと、薄いスープ。


それでも。


戦場よりは、遥かにましだ。


「はい、二人分」


配給の男が笑顔で渡してくる。


普通の人間。


普通の生活。


……本当に?


パンを受け取り、歩く。


ふと、視界の端に違和感が映る。


「……あれ」


建物の奥。


柵で仕切られた区域。


兵士が立っている。


中には、若い男たち。


痩せているが、体つきは悪くない。


「お姉ちゃん、あの人たち何してるの?」


「……」


答えない。


そのとき。


「適性ありだ。連れていけ」


兵士の声。


一人の男が引きずられていく。


「やめろ!!」


「また戦場には行きたくない!!!」


叫び。


だが、誰も止めない。


周りの人間も。


見ない。


「……徴兵、か」


小さく呟く。


難民受け入れ……


次に目に入ったのは。


女たちだった。


別の列。


年齢は様々。


だが、若い者が多い。


「番号で呼ばれた者はこっちへ」


兵士が淡々と言う。


女たちが並ぶ。


「お姉ちゃん……?」


シオンが腕を掴む。


「……見てて」


やがて、一人の女が連れていかれる。


奥の建物へ。


扉が閉まる。


男たちの獰猛な声が一瞬聞こえた。


「……」


レイナは目を細める。


さらに奥。


別の建物。


窓がない。


重い扉。


「ここから先は立ち入り禁止だ」


兵士が睨む。


あそこは……


視線だけで探る。


中から、音。


金属。


悲鳴。


「……行こう、シオン」


「うん……」


シオンは珍しく大人しい。


歩きながら、ぽつりと呟く。


「ねぇ」


「ここって、いい国なの?」


「……」


シオンが聞く。


少しだけ考える。


そして。


「いい国だよ」


返事を聞いて。


シオンは笑う。


その笑顔を見て。


レイナは、確信した。


リグナ王国。


戦場より、質が悪い。


見えないだけで。


壊し方が、違うだけで。


本質は同じだ。


そのとき。


背後から声がかかる。


「お前たち」


振り向く。


「今から検査だ。来い」


「……分かった」


歩き出す。


その先で何が待っているのか。


もう、想像はついていた。


建物の扉が開く。


中は白い部屋。


冷たい空気。


中に入る直前。


レイナは小さく耳打ちした。


「能力者ということは隠しておいて」


シオンは一瞬驚くが、頷く。


「まずは、そっちの子からだ」


シオンの肩に手が置かれる。


「……」


レイナの指先が、わずかに動いた。


鳴らせば。


終わる。


だが。


……まだだ。


ここで壊すのは簡単だ。


でも。


それじゃ。


変わらない。


「シオン」


「なに?」


「……大丈夫」


「うん!」


シオンは笑って、奥へ連れていかれる。


扉が閉まる。


静寂。


レイナは、ただ立っていた。


そして。


ゆっくりと目を閉じる。


私は世界を何も知らない。


だから。


全部、見る。


全部、知る。


それから。


指が、わずかに鳴りかけて止まる。


「……壊す」


その目に、迷いはなかった。

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