証拠
「お父様~!!」
あ、忘れてたわ!!
アイリス様が空気を読まずに話しに入ってくるまで、存在をすっかり忘れちゃってたわ!!
今度、さり気なく謝罪しておこう…
そういう私も、空気だけど…
「お父様、聞いて聞いて!!私、パリス伯爵と結婚することになりましたわ!」
「はあ?何、恍けたことを言ってんだ!!お前はロミオと結婚するんじゃなかったのか!?」
「何を言ってますの?確かに、ロミオ様とは昔、マキューシオを通じて何度か遊びましわ。でも、それも昔の話であって、今はもう社交辞令程度の会話しかしませんわ。それなのに何故、結婚と言う話になりますの??」
あ、これは読めた。
大公は、娘をロミオと結婚させようとマキューシオを使って会わせてたけど、結果は残念。親の希望は伝わらず、アイリス様はパリスにベタ惚れしちゃったらしい。
でも、二人を結婚させたら、勢力は均衡に保てなくなるのに…
「そ、そうなのか…てかお前、出奔したんじゃなかったのか!?」
「違いますわ!!パリス様の婚約を解消してもらおうと、お父様に会いに行っても会ってくれないうちに、パリス様が、傷心のあまりに旅に出て行ってしまったので、追いかけて口説きに行ってたのですわ!!」
そうだったね~
パリスはアイリスが大公に頼む前に婚約解消しちゃったもんね。
それにしても、仮にも令嬢が口説くって言っても良いの??
「…そ、そうか」
「アイリス、そろそろ良いかな?」
「あら、マキューシオじゃない。奇遇ね!そうそう、私、パリス様と結婚することになりましたわ」
「うん、聞いた聞いた。おめでとう。で、話し戻すけど…」
あ、マキューシオは軽く流した!!
でも、本当はシリアスな感じだものね。
「大公は、そこにいる娘のアイリスをロミオと結婚させるためにロミオの妻、ジュリエットを暗殺しようとした。そして、正式な命令書がここにある。勿論、大公の直筆サイン入りだ!!」
何かと思ったら命令書って…
やっぱり大公は馬鹿…
普通さあ、暗殺なんだから正式に命令書なんて書かないでしょ!!しかも、判子ではなく、直筆サインまで書いて…
「これでもう言い逃れは出来ませんね」
「だっ、黙れ!私は、大公だ!!何をしたって許される存在だ!!」
「では、大公で無ければ許されないですよね?では、ここにいる皆に聞きましょう。この男が、大公にふさわしいと思う人はいるか?」
勿論、結果は誰もいない。
「じゃあ、ふさわしくないと思う人は?」
すると、一斉に手を挙げ、大公を変えろコールが始まった。
つまり、大公はもう大公ではなく、重罪を犯した人物なのだ。