新たな動き
翌日、町では祭りのごとく騒いでいた。そう、先ほど、モンタギュー家とキャピュッレット家が和解を発表したのだ。勿論、反対する者はいたが、だいたいの人間は争いにうんざりしており、結局、反対した者も認めたのだった。ある人物を除いてーー
「どう言うことだっ!あの両家が和解だと!?」
「そうです、大公様。大変、喜ばしいことではありませんか」
「馬鹿を言うなっ!!もういい…でて行け…」
「はっ、はい」
…何故だ。何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だっ
突然、何故だ!?何百年も争ってきたのに、そう易々と和解するはずがない。目的は何だ?まさか、プライドさえ捨てれば、トップになれることに気づいたのか??
俺は、絶対に認めない。いや、認めたくない。
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そして、午後にはロミオとジュリエットの結婚が発表された。町全体が祝福モードになったが、ただ、若者たちは二人の結婚にひそかに涙したとかしなかったとか。
そして、ソフィアは一人、庭にいた。
今、私は、とても感動しているの。あ、それは、皆さんも解ってるよね。でも、まさか本当に、二人の結婚が祝福されるなんて!!
でも、油断は禁物。いつ、歪みを戻そうと世界が動き出すか分からないし、もし、大公を降ろせなかったらどうなるか分からないわ。
でも、とりあえず、大公だけは降ろさなければならないの!!あの男ったら、真面目に政ごとなんかろくにせずに、賭博に女への貢物に高価な宝飾品を買ったりと、贅沢三昧な日々を過ごしていて、そのくせ、威張る。本当に、マキューシオ達が言ってた通りね。
すると、そこにマキューシオが現れた。
「ソフィア、今日も君に会えてうれしいよ!!」
「そ、そうですか。では、さようならっ」
「あ、逃げないでよ!!てか、敬語を言ったよね。じゃあ…」
そう言うと、逃げるソフィアを追いかけだした。
ハアハアハア、疲れた…ここまで来れば大丈夫よね。それにしても、全速力で走るって生まれて初めてだなあ。前世も、病弱だったからそもそも、走らせてくれなかったし、現世もそんな機会は無かったしね~
そういえば、前世の親も現世の親も今頃、何してるんだろ~
「みいつけた!!」
「ぎゃー」
な、何で!?ここって、絶好の隠れ場所なのに…
「驚いた?そうそう、これ…」
そう言うと、どこからかダリアの花を取り出し、すっと、ソフィアの髪に挿した。
「何です…いや、何?」
「何って、ダリアだよ。綺麗なピンクダイヤモンドでしょ」
「で、これが何でここにあるの?庭のものじゃ…」
「あ、バレたか。そうだよ、追いかけてる途中に見つけて、ソフィアに似合いそうだと思って、勝手に一本貰ったんだ」
「やっぱり。折角、丹精込めて育て…!?」
突然、マキューシオがソフィアの口を押えてきたのだ。ソフィアは驚き慌てふためいた。
「しっ!しずかに!!」
そう言うと、手をソフィアの口から外した。すると何処からか、ヒソヒソ声が聞こえてきた。
『…これで刺せ。そして、ロミオの仕業と見せかけろ』
『ジュリエットをこれで刺して、ロミオに仕業に見せかければいいんですね』
『ああ。分かったなら行け!決行はロミオが来るであろう夜だ。奴が目を離したすきにやれ』
そして、二人はどこかに消えて行った。
えっ…ウソ、ウソよね?こんなにも早く、事態は動き出すなんて…
…世界は、歪みを元のように戻そうと動こうとするのね。…このピンクダイヤのダリアの花言葉のように、世界は不安定で先は判らない。
ちなみに、ピンクダイヤのダリアの花言葉は、移り気・不安定です。