第3話 断末魔の悲鳴~HAPPY END!~
忌々しい実家と縁を切ってから、俺は清々しい気分で毎日を過ごしていた。
大学を卒業してから就職したのはとある大手企業。その中で頑張って働き続けて今はまだ主任だけれど役職もつき、そして家に帰れば愛する妻や可愛い子供達もいる。時折祖父母が孫の顔を見に来てくれたりと、穏やかで充実した人生を過ごしていると思う。
そんなある日の休日、家族で買い物に出かけて車を駐車場に止める間に俺は先に車から降ろされ、荷物を運ぶことになった。両手いっぱいの荷物を以てマンションに移動している所で、なんだか見覚えのある黒いミニバンがマンションの近くに止まっていた。あぁ、微妙にボコボコで傷まみれのあの黒いミニバンは実家に帰った時にみたことがある車、残クレミニバンか。俺の姿を見つけて、車からはきぬよが降りて俺に声をかけて来た。
「あっ、あの、久しぶりタカちゃん」
「何しに来たんだお前と話すことは無いぞ帰れあとタカちゃんとか馴れ馴れしく呼ぶな気持ち悪い」
あまりの不快感と苛立ちに矢継ぎ早に話してしまった。きぬよも、俺のゴミをみるような目と全力の嫌悪感を籠めた早口に怯んでいるようだ。だが、ミニバンの扉が開きいつぞやのガキどもが3匹、走り出てきてきぬよのまわりから俺を威嚇しながら喚きはじめた。
「キッ!ミャミャヲイジメルクソヤンパァッ!キッ!!」
「ナンナンコイツゥ」
「キャーハハハッダッサァ」
「こらっ、樹樹斗、紗瑠那、茶瑠羅!」
きぬよがガキどもを制止させているが、俺としては買ってきたものが痛む前にさっさと家に帰りたいので邪魔極まりない。
「ハァ・・・前も言ったけど俺はもうお前らの家とは何の縁も義理もないんだって。もういいか?二度とその顔見せんなよな」
「―――待って!私、今は、いいえずっと・・・たかしを傷つけた事、後悔してるの」
「そうか、それじゃ一生後悔しててくれ。俺は一生許さないしお前と話すつもりもない。じゃあな」
「ねぇお願い話を聞いて!助けてタカちゃん!」
「嫌だよなんでお前を俺が助けなきゃならないんだ?」
「もう頼れるのがタカちゃんしかいないのぉ!あの人・・・紋雅さんはいつかビッグになるっていって定職にもつかないでぇ・・・子供達は全然私のいうこときかないし、お義父さんも最近は体調を崩してるし、義母さんは働かないし、私のパートの給料だけじゃいっぱいいっぱいなのに、いっぱいいっぱいなのに・・・こんな、これじゃあ」
話しながら感情が溢れたのか号泣し始めるきぬよ。けれど微塵もかわいそうだとは思わないのでいいからさっさと帰って欲しい、それができないなら今すぐ爆発四散しねーかなとぼんやり考えながら右から左へと話は聞き流す。まったく聞く価値のない話だからな!!
「残 ク レ 払 え な い よ ~~~~~~!!!!!!」
あたりに響き渡るきぬよの慟哭、いや悲鳴。そのあまりの内容に思わず目が点になった。何・・・、・・・何??やばい、面白すぎて思わず吹き出してしまいそう。残クレそのものは全否定しないし、自分の収入やライフスタイルに合わせて上手く使えるならいいと思う。でも背伸びして使うものじゃないだろう。
「車体はボコボコ傷まみれぇ!内装ヤニ・染み・ゴミまみれぇ!子供の零した菓子ジュース!残価は請求100万円!!」
「残クレラップかな??」
きぬよには必死の叫びなんだろうけど不覚にも笑ってしまった。あとマジで俺には何も関係のない話だな・・・と考えていると車を止めおわった妻子達がこちらにむかってきているようで、新太郎は一足先に走ってきたようだ。此処は歩道で車も来ないからいいんだけど一人ではしゃいで走らないように改めて教育しないとな。
「父ちゃん父ちゃん父ちゃ~ん!そんなところでなにしてるんだゾ?」
「おう、新太郎。なんかしらないオバさんが絡んできたんだよ。こわいなー、今日はしっかり戸締りしようなー」
「暑くなると変なのが出るといいますからなぁ~。
そんなことより、今日はようやくおゲットしたベンテンドーのボタン2でマサオカートで勝負だゾ!尻出しドリフトでインベタのさらにインをついて、峠の下り最速をキメるんだゾ」
「とまぁそういうことだから、悪いけど他を当たってくれや。俺は可愛い息子と遊ばなきゃならないんでな」
そう言って息子の新太郎と手を繋いで家に帰ろうとしたところで、クソガキのうちの一番小さいガキがかけよってきて新太郎からボタン2をひったくろうとする。
「おお?何をするんだゾ!これはオラが父ちゃんに買ってもらったものなんだゾ!?」」
「ウルサイ!キッ!チャルエリート!コレチャルノ!チャルノ!ナンナルッ!ナンナレッ!ナンナレッ!ナンナレ~ッ!」
あろうことかボタン2を奪い取ろうとするクソガキ、チャルラ。
「おいやめろ!きぬよぉどういう教育してんだ、おめーはよぉ!!」
「あっ、えっ・・・うあああ・・・残クレどうしよう~」
きぬよは自分の事でいっぱいでクソガキが好き勝ってしていることを止めようとすらしていない。なんだこいつ。そしてその間に姉と兄もきて3人がかりでボタン2をひったくろうとし、新太郎は奪われまいと抱え込む。俺もガキどもを新太郎からひっぺがそうとするが3人のガキをひっぺがすのは一人では大変だった。
「これは、これは・・・オラのものだぞ!」
「ハァ~ッ?ナンナレー!!」
――――ボゴッ、という音がした。
ガキの一人が新太郎を殴り飛ばし、ついにはボタン2をひったくったのだ。
「やったぜ!これでこいつは俺たちのもんだ!!」
・・・なにしてやがるこのクソガキ!!
「おい新太郎、しっかりしろ?」
「う、ううっ・・・オラ、折角買ってもらったのに守れなかったぞ・・・父ちゃんや母ちゃんと遊びたかったのに、ううっ」
何の非もない息子が理不尽に暴力を振るわれて泣かされてたまるか!!!!
「コレッ、チャルラノッ!チャルラノッ!」
「ふざけんな!!それはうちの新太郎のもんだ!!」
いますぐにでもクソガキを蹴り飛ばしてボコボコにしてやりたいしボタン2も奪い返したいけれど、うずくまった新太郎の方が心配だ。殴られたところを抑えたままの新太郎の様子を丁寧に確認しているうちに、きぬよはミニバンにのりこみ、ガキどもも乗り込んでどさくさに紛れて逃げて行った。あの様子だときぬよはガキがボタンを強奪したことも把握していないかもしれない。
――――あぁ・・・越えちゃならない一線、越えたなぁクソどもがよぉ。
遅れて来た妻が俺達の様子にびっくりしていたけれど俺達は救急車を呼び、そして流れるように警察にも被害届を出した。
幸いにも新太郎のけがは大したことは無かったのは良かった。まぁそれでも、警察沙汰にはしっかりしていくけど。
あ、ちなみにきぬよたち一家の犯行はここが高級タワーマンションの目の前で防犯カメラなどもしっかりと取り付けられていたのでガキの反抗や暴行・窃盗はしっかりと録画されており、クソどもは速攻で捕まった。
なんか(元)親父ィ・・・が被害届を取り下げてくれといってきたので当然無視したし、どさくさにまぎれて紋雅が夜道で俺の嫁を襲おうとしてきたので阻止しつつ折角なので正当防衛で2人がかりでボコってから警察に突き出し立った。そうしたら紋雅は他にも余罪があったらしくて性犯罪者としてブタ箱にシューッ!されててこれは予想外すぎる。いやでもあの紋雅だしなぁ、やっててもたしかにおかしくねーよな。
勿論クソガキに容赦する必要はないので被害届は取り下げず、さらに俺は弁護士を立ててきぬよを訴えてやった。
クソガキどもは施設に送られたし、金輪際きぬよ達が俺達に接見することはないだろう。めでたしめでたし。
・・・ボタン2に関してはきぬよがフリマアプリで売り飛ばしていたので戻ってこなかったけれど、俺はすぐさま新しく買いなおして新太郎の心のケアに努めた。
そして今は、ボタン2で遊び疲れた新太郎がコントローラを握ったまま大の字で眠っている。
「なんか・・・墜ちるところまでおちてたねっ、幼馴染さん」
「そうだな。でもあいつらが俺の人生に関わる事はもうないさ。それより・・・そろそろ2人目の子供とか、どうかな」
「・・・私もそう思っていたところだよっ」
変な奴らに絡まれることもあったけれど、これからも愛する妻や可愛い子供を守って、頑張って行こうと思う。―――俺の人生はこれからだ!!




