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第14節 高等教育の悩み ~問い一つなら、解一つって思ってる人はいるよね?~

更新アラームが鳴らなくて、変な時間の更新になってしまいました……orz

って1830とかむしろゴールデンタイム寄りか

 教員試験の混乱が収まった頃、レアナは一人、改めて行った試験結果を前に頭を抱えていた。


レアナ「……ここまでとは……思ってなかったわ」


 高等教育の合格者に対して、二泊三日の試験では問いきれなかった部分について改めて試験を行った。

 試験内容は批判的思考、基礎政治学、生命倫理といった、現代であれば大学教育に相当するもの。

 それをまともに解けた者は、実際一人もいなかった。


レアナ「はぁ、選抜試験で理系に偏らせ過ぎたかしら?」


 そこにリュカが入室してきた。


リュカ「レアナ、どうしたんだ?」

レアナ「まあ、とりあえずこの答案を見てよ……」

リュカ「どれどれ……うわぁ、なんて鬼畜な問題にしてるんだよ……」

レアナ「仕方ないでしょ!文理両方のバランス考えたらこうなったのよ!」


 リュカの命律端末からチカが登場した。

 なんの気まぐれか、今回も緑のチカだった。


チカ「兄くん、ノイズの実施した試験が異常なのだよ……」

リュカ「だよな?」

チカ「これは、文系学生にいきなり群論の問題を出すようなものだな」

リュカ「そのレベルだよな」

レアナ「だって、私は元小児外科医よ⁉そこまで文系のこと詳しくない!」

リュカ「それでこの難易度か……」


 リュカとチカは、同時にため息を吐く。


チカ「まったく、ノイズは命律端末経由で確認しなかったのか?」

レアナ「仕方ないでしょ!あんな設問じゃ……参考にならないと思ったのよ!」

リュカ「ってかレアナ、悪いけど俺もこれ、ちゃんと答案書ける気がしない」

レアナ「え、嘘でしょ⁉経済であんだけ無茶苦茶なことを……当然のように語っていたのに!」

リュカ「俺にだって得手不得手はある、生命倫理とか無理だ……」

レアナ「ほら聞いた?リュカは生命倫理以外なら答えられるって!」

チカ「兄くんをあまり過大評価しないでくれ……まあ、実際兄くんなら生命倫理でも可くらいは取れそうだがな」

リュカ「チカさん、味方のフリして背後から攻撃するの……止めてくれません⁉」


 レアナはがっくりとうなだれる。


レアナ「えー、この試験問題じゃ駄目だったの?」

リュカ「まあ、その……駄目とは言わないが、俺では解けないってだけの話だな!」

レアナ「私だって、全部解けとか言わないわよ!だけど……せめて、考えて欲しかったってだけよ!」


 リュカは、答案を取り上げ音読する。


『次の状況を読んで、あなたの考えを述べなさい(600字以内)


 あなたは難病の新生児を診察している医師である。

 その新生児には、通常の医療では救えない致命的な疾患があり、延命治療を行うことで数週間生かすことは可能だが、苦痛を伴う。

 両親は延命治療を望んでおらず、自然な死を迎えさせてほしいと希望している。


 ただし、この新生児の治療知見は、将来的に同様の疾患を治療・克服するための研究に極めて有益であり、延命させることでその研究の進展が期待される。


 この場合、あなたは延命治療を行うべきか?

 人間の尊厳・医療倫理・社会的責任の観点から、あなたの考えを述べなさい』


 リュカはなんとも言えない感じで、ただ……ため息をつく。


リュカ「なあ、問題の鬼畜さはともかく……この世界で新生児医療なんて可能なのか?」

レアナ「ほとんど無理ね、だからこそ!こういう問題が大切なんじゃない!」

リュカ「いや、俺でもこのケースでは……『医師が決定することではない』っていう短文回答になるぞ?」

レアナ「……っ!そう、そのレベルでも良いのよ!」


 レアナは何か見えた気がした。


レアナ「ねえ、もしかして試験って言ったから、正解があると思い込んだ可能性……ないかしら?」

リュカ「当然、あるだろうな」

レアナ「高等教育って、そんな単純な問題じゃないのよ!っていうか、答えがある問題なら命律端末を使えば出てくるし!」

リュカ「で、命律端末の利用を禁止したんだろ?」

レアナ「そうよ!自分の頭でどこまで考えられるか、これが大切だと思ったから!」

チカ「だったら、問題文に『正解はありません』とでも書いておけばよかっただろう、だからお前はノイズなのだ」


 ただ、この問題の根深さに気づいたリュカとレアナは、とてもではないが笑い飛ばせない。


リュカ「まあ、チカの毒舌はいつものこととして……果たして、答えのない問いを考えられる人材を育てられるか、だな」

レアナ「ごめん、リュカ。カリキュラムを見直さなきゃいけないの……民主主義教育も大変だと思うけど、できる範囲で手伝ってくれない?」

リュカ「だな……こんな問題だったら、とてもじゃないが無視はできない……」

チカ「兄くん……命律端末経由で、問いを立てることの大切さを教えようか?」

リュカ「その素養を、どうやって育てるかっていう段階だから、その時は頼むなチカ」


 そうして、リュカとレアナ、そしてチカはいかに「答えは一つではない」ということを教えるかについて深く討論した。

 リュカもまた、初等教育教育論に『問いを立てる課題』を急遽追加したのだった。


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