第13節 民主主義を教えよう ~ファシズムってレッテルだよね~
初等教育教育論はリュカが担当、高等教育はレアナが担当となった。
今のところ、最上位の医療教育については手を付けない。
なぜなら、高等教育の合格ラインに到達している貴族が皆無だったのだから。
リュカ「マルボロ……本当に、教育をねこ貴族に任せて大丈夫なのか?」
マルボロ「神殿から排除するために、愚物を炙り出したかったのです」
リュカ「はぁ……頭痛い、あんなのを相手に……教育しなきゃいけないなんて」
マルボロ「陛下、アレでもすしねこ王国においてはエリート層なのです」
リュカ「ってか『すしねこ王国』に『ねこ貴族』って、特権的階級に見えるな」
マルボロ「ご安心ください、思想的選別は既に済ませております」
リュカ「あれで、思想的選別が済んでるとか……マジかよ」
レアナが入室してきた。
レアナ「はぁ、少し部屋の外に漏れてたわよ?思想的選別を済ませてるとか、それファシズムじゃない」
マルボロ「?ファシズムってなんですか?」
レアナ「うっ……改めて問われると説明が難しいわね」
リュカ「レアナ、専門用語を使うな……ファシズム批判もまたファシズムだろ?レアナが言ってるのは要するに、国が定めた思想に準じない者を排除する、そんなやり方だ」
マルボロ「?なんで、それが問題になるんですか?」
レアナ「あのね、誰もがすしねこ王国の言い分に……納得できるわけじゃないわよね?そういう人を排除していったら……どうなるかしら?」
マルボロ「?そういう輩は『国家反逆罪』に問われますよね?」
リュカとレアナは頭を抱えた。
マルボロの前だから我慢なんてしない。
マルボロ「よく分からないのですが、先ほどの教員試験での『ねこ貴族』の剥奪……これと何が違うのですか?」
レアナ「殺してはいないでしょ⁉」
マルボロ「確かに、命は取っていませんが……貴族として終わりというのは、間接的殺害ではないかと」
リュカ「……俺が、間違っていたようだ……」
マルボロ「陛下は何も間違っていません!奴らから『ねこ貴族』の称号を剥奪してなければ……『国家反逆罪』に問われたところですよ?温情だったのです!」
リュカ「自分が王ながら、すしねこ王国が怖くなってきた……」
レアナ「同感よ、話が通じる人がいない……」
レアナは顔を青くしながら、マルボロに問う。
レアナ「ねえ、民主主義ってわかる?」
マルボロ「語感からすると、民が中心の思想ですよね!見くびらないでください!」
リュカ「その民の思想に、自由がなかったらどうなる?」
マルボロ「?どうもならないでしょう、先ほど申し上げました『国家反逆罪』がありますから!」
リュカ「マルボロ、命令だ……教員にならなくていいから、せめて俺の教育だけは受けろ」
そして、リュカは命律端末に「出てきてくれ」と命じると、今日は緑色のエメラルド宝石で彩られたドレスを着た……なんだか緑のチカが出てきた。
チカ「なんだい、兄くん?ああ……今までの話は聞いていたから省略してくれて構わないよ」
リュカ「そうか、チカ……民主主義の普及には、どうすればいい?」
チカ「それは王政廃止からが王道だろうな、立憲君主制という手もあるが」
レアナ「やっぱり、王政ってのがマズいのかしらね?」
チカ「王政が、必ずしも悪いとは限らないだろう?民主主義だって……黙って見ていれば、あっという間に衆愚政治――例えばポピュリズムに陥る」
リュカ「どうすればいいんだ……」
チカ「兄くん、今の『すしねこ王国』は、私が哲人とまでは言わないが、かつてプラトンが夢見た哲人政治に……極めて近いのだよ」
レアナ「まあ、こんなポンコツが国政に携わってる時点でねぇ……」
チカ「ノイズが王妃をやってる国だからな」
チカも含め、三人はため息を吐く。
レアナ「完全な統治なんて、ないのかもしれないわね」
チカ「まあ、理想的と言われた体制ほど……脆いものだからね」
リュカ「仕方がない、民主主義の種を撒いて、あとは民意に任せよう」
レアナ「その民意が危ういって話じゃなかったかしら?」
リュカ「言うな……ループしてるのは、自覚しているんだ」
そうして、初等教育教育論に民主主義教育が急遽含まれたのだった。




