第02節 成人の儀式、穢魂者のレッテル ~起動しない命律端末~
俺ことリュカは、十三歳を迎えた。
ヴァルミエ伯爵家は王都でも名の知れた、学術貴族の名門家系だ。
『マギ』の寵愛深い家として、かなり広く知られている。
……俺からすると、ただの変人家族なんだけどな?なんせ、女装嫡男に猫姉タマ。
神殿で、十三歳の誕生月に行われる成人の儀『命律端末授与式』によって、『マギ』と深く繋がるとされており、俺も父とともに神殿へ向かった。
大人になるということで、父が奮発したパリッとした服装だ。
これで『マギ』と繋がれば、俺も一人前の大人だ。
神殿は荘厳としている。
これ、相当金がかかってるな、などと思いながら眺めていた。
父が門番と話すと、父と共に神殿内に通された。
しばらくすると、今月の成人の儀を受ける十三歳の人が揃ったようだ。
大神官が激励を始めたが、ほとんど父と同じことを言っている。
大神官「命律端末が応答することで、君たちは『マギ』と深く繋がる。信仰が正しければ、きっと皆も『マギ』と繋がるだろう!健闘を祈る!」
なんだかんだ思いながら、命律端末に向き合う緊張で、周りの顔が頭に入らない。
そして、一人一人『祈りの間』に連れて行かれ、出てくるときには光り輝く『命律端末』を手にしている。
誇らしげで、嬉しそうで、まるで祝福を受けたみたいに……。
いよいよ、次は俺リュカの番だ。
『祈りの間』では、黒い板状の何かが鎮座している。
一見するとスマホのようだな?
そこに祈れと、大神官であろう人も言っていた。
俺は祈りの姿勢をとり、深く祈りを捧げた。
それは口頭で捧げなければならない祈り……だからこそ『祈りの間』と呼ばれ、隔絶された場所で行われる。
リュカ「皆が笑って暮らせる世界を……どうかその道しるべとなってください……」
リュカ「誰もが幸せになれる世界を……そのためにお力添えをお願いします……」
しかし、命律端末は応えない。静寂だけが祈りの間を支配していた。
信仰って、そういうものじゃないのか?俺は何か間違ったのか?
沈黙した命律端末を前に、俺は絶望し、それを手に取ることもなく『祈りの間』を後にした。
大神官「命律端末はどうしたのだ?」
リュカ「祈りを捧げましたが……応えてもらえませんでした」
大神官「なんと!すなわち、リュカ・ヴァルミエは『穢魂者』である証だ!」
今までの温厚な雰囲気を一変させて、大神官は目を充血させながら怒鳴り始める。
リュカ「私の祈り、何か間違っていたのでしょうか?」
大神官「それは私の知るところではない!ええい、この『穢魂者』を今すぐこの神殿から叩き出せ!」
両腕を掴まれ、神殿を追放される時、父の目はあまりに冷ややかだった。
「残念だ、リュカ・ヴァルミエ。貴様はこの家に生まれたことすら、神々に許されぬ『穢魂者』だったようだ。ゆえに、その名、その血、その一切を、我が家より永久に抹消する」
こうして俺は、命律端末を得られなかったことにより『穢魂者』とされ、神殿への立ち入りを禁じられただけでなく、実家からも追放された。




