魔王決戦編 前編 -2
天高く聳え立つ巨木で囲まれた原っぱに眠っていたシュヴァールは、眩しく差し込む朝日で目を覚ます。そして、膝を三角に立て、抱え込んで座る。
すると、遠くから生い茂る雑草を踏む音がだんだんと近づいてくる。
ビクビクと怯え固まっていたシュヴァールは、その音のする方へ首をゆっくりと振り向かせる。
そこには、笑顔でこちらに手を振りながら歩いて来る、少し年上の少年がいた。そして、彼はシュヴァールの傍に駆け寄ると、顔を伺うように膝を屈め、腰を落とす。
「君、随分と汚れているね。こんなところで何をしていたの?」
シュヴァールは、顔をそっぽに向かせ、視線を落とす。
「隠れていたんです。この世界から…」
その白南風に鳴る風鈴のような弱々しく震える声に、少年は耳を澄ませた。そして、逸らされた瞳を横から見つめ、僅かな沈黙を置くと、シュヴァールの頭をそっと撫でる。
「そっか。この世界と”かくれんぼ”…してたんだね。きっと、今は一人になりたいと思うけど、僕を傍に居させてくれないかな?君の居る世界に僕も居たいんだ」
シュヴァールは、忘れようとしたはずの悔し涙を思い出したかのように、温かさが少し滲んだ涙を頬にスーッと垂らす。その一粒を追いかけるように、ボロボロと涙が溢れ止まず、泣き崩れた。
それを見た少年は、シュヴァールの背中に手を添えて静かに摩る。
──彼の名はヘリオス・アルバ。光の英雄と呼ばれる初代国王の第一王子であり、白い光に祝福されて誕生したと言われる”天使の御子”。




