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伝説の自由戦士(ハンター)がオカマだった件  作者: ぷちミント/キャラクターと設定原案:空星きらめ(にじさんじ)と愉快な仲間たち
3/3

後編。オカマ先生に休みなし。

「その様子。お疲れ様です、キラーリア様」

「やめてくださる、校長先生。あたしはヴァニラ。

ヴァニラ・キラーリア、この学校の教師。

立場上あなたの部下に当たるんだから」

 

「いやいや、わたしが依頼するのはキラーリア様にのみですので。それで?

いったいなんだったんですかな? 例のルル・ラーハに現れた力と言うのは」

「ご存じかしら、キラミエルって女神」

「ええ、名前だけは。……まさか?」

「ええ、そのまさかよ」

 

「なんと、その気配が消えている。と言うことは、ルル・ラーハに現れた破壊の女神をお一人で?」

「いいえ、うちの優秀な狼ちゃんといっしょよ」

 不意打ちの巨大魔弾の破壊力を知るだけに、

 破壊の女神と言い伝えられていることに

 内心いい気味だと、ニヤリと笑う吸血鬼。

 

「流石は伝説のハンター。神すら退けるお力とは」

「やめてよくすぐったいわねぇ」

 表情を本当にくすぐったそうに崩して、右手をおおげさに左右に振るヴァニラ。

 

 

「そうそう、ヴァニラ先生。本日、そちらのクラスに一人、

転入する学生がいますぞ」

「あら、あたしのところ? 珍しいわね、

特に時期の区切りでもないこんな時期に」

 

「これを」

 そう言いながら、校長はその生徒のプロフィールが書かれた紙を見せる。

「ルミエ・キラキラリー」

 口に出してその名を音にしてみて、ヴァニラは表情を不快に崩す。

 

「どうされたのですかな?」

「え、ああ、いいえ。なんでもないわ。ありがと、校長」

 嫌な予感がよぎるが、それを口にはせずに、ヴァニラは校長室を後にする。

 

「一睡もせずに運動してたから、付かれてるのよねぇ。ちょっと、仮眠取ろうかしら」

「先生。この時間で仮眠は、始業時間に遅れる可能性が高いです」

「ヴォルフちゃん。部屋の前で待ってるの、やめなさいって」

「今なら生徒はまだいませんから」

「教師に見られてもめんどうでしょうが」

 

「生徒である前に、わたしはあなたの従者ですから」

「融通利かないわねぇ、まったく」

 左手を額にやって、付かれた溜息を吐くヴァニラ先生であった。

 

***

 

「やっぱり。なんかあったんだ」

「マルスさん。おはようございます」

「硬いなぁ、いつも。おはよ、ヴォルフくん」

 このきさくな少女がマルス・アルサンダー、ヴァニラが有望だとしている少女である。

 

「なんか、やつれてない?」

「気のせいです」

「先生見れば、なにかがあったのかはわかるか。早くこないかなー」

 わたしに話を振った意味は、とヴォルフが問いかけるより前に始業の鐘が鳴った。

 マルスはスキップでもし始めそうな足取りで、自分の席へと向かった。

 

 少女の洞察力に、ヴォルフも一目置いてはいるが、

 しかしそのきさくさ、軽薄さが馴染めずにいる。

「おはようみんな。誰も欠席なしね、うん 優秀優秀」

 ぐるりと教室を見回して、ヴァニラはそう満足げに頷く。

 

 入って来た教師の、昨日と比べて見てわかる程度に痩せた姿を見て、

 一同は僅かにどよめいたが、しかし平然としている教師の様子に、

 すぐそれは静まった。

 

 マルス一人だけは、表情を殺しきれずにほころばせている。

 昨日なにかが、ヴォルフとヴァニラ先生に起きたのだ、と確信が持てたからだ。

 これは隙を見て質問攻めにしてやるしかない。そういう企んだ笑みである。

 

「ええっと。突然なんだけどね。

今日、うちのクラスに転校生が来ました」

 にわかにざわつく教室。ヴォルフは、校長室を出て少し

 主の顔が浮かなかったのを見ており、その原因ではないか、と推測する。

「入ってきなさい」

 

 教室の外に声を書けると、引き戸が開き、そこから一人の少女が現れた。

 その容姿に、教室がまたどよめいた。

 なぜなら、少女は顔に包帯を巻いた姿だったからだ。

 それを見て、ヴォルフは察した。現れた少女の正体を。

 

「ルミエ・キラキラリーです。こんなですが、これからよろしくおねがいします」

 済んだ声音で名乗った少女。男子がにわかに浮ついた喧噪を起こす。

「あの女神。よほど暇と見える」

 吐き捨てるように呟いたヴォルフの声は、男子のざわめきに掻き消された。

 

「ただものじゃないな、あの。どういうむすめなんだろう?」

 内包する魔力の秘められた力を感じたマルスは、

 ヴァニラ先生とヴォルフに対するのと同じぐらいに、

 転校生の少女にも興味を抱く。

 

「てきとうな空いてる席使って」

「はい」

 ヴァニラ先生に頭を下げたルミエ。しかし、頭を上げるまでの僅かな間に、

 ヴァニラ先生へと目で言葉を投げる。

 

『こうすれば、暇しなくて済むものね。人間の世界も知ることができるし』

 小さく微笑んだ少女の顔に、ヴァニラはやれやれの気持ちを溜息に乗せた。

 ルミエが優雅に歩いて、空いていた窓際後ろの席に向かう間に、

 男子は浮ついた喧噪を再び起こした。

 

「はいはい静かにしてねー」

 軽い調子で言いながら、ヴァニラは右手の親指と人差し指をくっつけ、

 人差し指を引き絞るような動作をした。その動きを見て、うわついた喧噪はすぐに大人しくなった。

 

「さ。今日も授業を始めるわよ!」

 

 

 エルジーニー王立魔法学校。

 ハンターと呼ばれる、自由戦士を育成するここには一人、

 あらゆる意味で常識外れの存在がいる。

 

 ヴラド・キラメ・フォン・オッカーマン・イチカラーリア。

 

 500年前に起きた、ルル・ラーハの戦いで最前線に立ち戦った吸血鬼。

 肉体は男でありながら心は乙女である、自称男女おとめの彼は今、

 ヴァニラ・キラーリアと名乗り、人の世界を楽しんでいる。

 

 めんどうな変化が起きた今、そしてこれからの学校生活。

 これはこれで、面白くなりそうだ、と密かに微笑して、

 今日も彼は教団に立つ。

 

 ーー未来を抱く若い命を導くために。

 

 

 

 

 

               終業ジ・エンド

お読みいただきありがとうございました。

 

余談ながらにじさんじネタとして、学校チャイムのメロディーは

バーチャルトゥーライブのさびの最後と最初を、学校チャイム風にした物です。

 

脳内変換してみたら、最後 最初部分の順番にすると、いい感じに学校チャイムっぽくなったのでネタにしました。

この作品の空気じゃ表現のしようがなかったので、おまけ情報です。

これでチャイムの雰囲気が伝わるといいんだけど。

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