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雪合戦てこんなだった?

本日は快晴である。


カエン様が明日王都に戻られるので、今日は昼間は外で遊び、夜はお別れパーティーの予定である。

例によってユーリに新しい遊びをねだられた美波の発案で、村人総出で雪合戦が行われる事になった。


「 はーい、四チームに別れて下さいね。

準備できましたか?」


雪合戦には正式なルールがあるらしいが、美波にはその知識がないので、オリジナルルールで戦うことになった。

チームは女性と子供の混成チームと、男性のみのチームである。熱くなると我を忘れがちな男達や、エルフとドラゴンの相手をするのは嫌だというもっともな意見を尊重し、このチーム分けになった。


ルールとしては、コートの中央に線をひき一番奥に旗をたてる。そして途中に幾つか小さな壁をもうけ、身を隠す事が出来るようにした。

相手の旗を取るか全ての敵を倒せば勝ち、雪玉が当たったら自己申告でコートの外に出るという決まりにした。


まずは、女性と子供達の戦いである。

しかし、忘れてはいけない。獣人族の女性と子供である。キャッキャウフフとほのぼのした展開には、ならないであろう。


「 では、始めます!スタート!」


言い終わった瞬間、ビュッと音をたてて雪玉がすぐ横を飛んでいった。


「 ひっ。何かヤバイ音がしたよー。怖い…」


因みに美波は、三つある防衛ラインの一番後ろにいる。つまり今の雪玉は、少なくともコートの中心より後ろからこちらのコートの奥に投げられたものである。


なんという球速だ……当たりたくない。

怖々と壁から顔を出すと、皆さん果敢に前へ出ている。ユキちゃんは走りながら雪玉を避けて、空中で一回転している。

双子達は別チームになっているようで、それぞれが戦っているようだ。


「 よしっ!当てたわ。行くわよ皆、突っ込め!」


怖いです。雪合戦とはこんなものだったでしょうか。

皆さん目茶苦茶アグレッシブなので、人数はどんどん減っている。美波は前に進めず、ひたすら雪玉を作り第二防衛線に転がしている。


「 キャンッ、当たっちゃったー 」


ハクは抜けたようだ、ユキちゃんがニャーと叫んでいる。女の子は強いのだ。


「 あと三人だ!一気に潰すぞ!」


ルリさんの声にビビる美波、味方は自分以外あと二人らしい。


「 あっちも三人よ!負けるな!」


リンも叫んでいる。こちらはリンとユキちゃん、そして美波が残っている。

私を戦力に数えないでー。という心の声は届かないようだ。


「 よし、行こう。怖くない、怖くない 」


心を決めて雪玉を握り締め壁から出て走り出した瞬間、雪玉が右肩に命中した。


「 お姉ちゃんっ!」


「 ごめん、ユキちゃん 」


瞬殺である。予想通りではあるが、情けない。


「 ニャー!お姉ちゃんの分も頑張るのー!」


コートの外に出た美波の目に、猛スピードで走りつつ飛んでくる雪玉をかわしていくユキちゃんの姿が映る。

リンの援護を受けて、敵陣まで一気に攻め込むつもりらしい。猫科なので上にも避けられるユキちゃんに、敵チームも手こずっているようだ。

リンの猛攻に壁から出られないまま、ユキちゃんの侵入を許してしまう。


「 行けー!ユキちゃん!」


リンが叫ぶとユキちゃんは敵をかわししつつ走り抜け、そして一番奥の旗を掴んだ!


「 やったー!ニャー!」


ユキちゃん、興奮するとニャーと叫んでしまうのね。何てラブリー!


勝利チームのメンバーは皆コートの中へと走り出し、ユキちゃんを揉みくちゃにしている。もちろん美波も駆けつけた。


「 凄かったよ、ユキちゃん。頑張ったね 」


「 ほんと?すごい?やったー!」


何やら想像以上にハードな戦いだったけれど、皆が楽しそうにしているし、これはこれでアリだろう。


「 次は俺達の番だ、行くぞ!」


「 おー!」


問題はこちらだ。始める前から危険なにおいがする。


「 カエン、負けないぞ 」


「 こちらのセリフだな、ユーリ 」


ドラゴンとエルフは別チームになったようだ、戦力差を少なくする為か……

カエン様はどうしても規格外の身体能力なので、ユーリと分けた上で二人少ない人数で戦うらしい。


「 何か雪合戦というより、合戦?みんな普段は穏やかなのに、ビリビリするよ気迫で 」


既に逃げ腰の美波は、試合開始の合図をすべくコートの横に立っている。

楽しく遊ぶはずだったのに、いいのか?


「 では、始めます。スタート!」


先程の試合以上にヤバそうな音をたてて、雪玉が飛び交う。

ドゴッ。防壁が抉れているが、大丈夫か?


「 行けー!ギン、そこよっ!」


リン……いつもとキャラが変わりすぎでは?


「 父様、頑張れー!」


ハクも同じくハイテンションだ。

人狼族に雪合戦って、駄目な組み合わせだったかもしれない。ギラギラしすぎてちょっと怖いです。


「カエン様、援護します!みんなあとに続け!

行くぞ!」


ミチルが……ミチルが何だかワイルドに……


カエン様はパワーを活かして正面突破、ユーリは身軽さを活かして防壁の陰から敵を狙い撃ちする作戦らしい。

他の村人達も大興奮で、つられるように女性達の歓声が上がる。


ビュッ!ドゴッ!キャンッ!


大人の狼のキャンは、何だか哀しい。


「ワイルドすぎだよ、ちょっと怖い 」


美波の呟きにルリさんが笑う。


「 そうか?みんな楽しんでるぞ、多分狩りの時の高揚感と似てるんだな。仲間とコンタクトをとりつつ獲物、この場合は旗だな、アレをとるのが似てるせいでこうなっているんだろう 」


狩り?雪合戦イコール狩り?


何でこうなった……


「 いえ、楽しんでくれてるならいいんですけど。

何だか私の知っている雪合戦とは別物になってるんですよね 」


オーッ!大歓声が上がり、勝負がついたようだ。


「 俺達の勝ちだな!」


カエン様の手には、旗が握られている。

ユーリ達は地面に両手両足をついて、悔しがっている。そこまで?

雪合戦とはこんなものだっただろうか……


「 くっ。もう一勝負だ!」


「 ハハハッ、受けてたとう!」


ものすごくいい笑顔でカエン様が言う、


「 うん。もういいかな、楽しそうだしね 」


美波はこの世界での雪合戦とはこういうものだと、認識することにしたらしい。


「 さて、私は夕食の準備に取り掛かりますね。皆さんはもう少し楽しんで下さい 」


ルリさんに告げて、カエン様のお別れパーティーのための仕込みに取り掛かることにする。

雪合戦は一度で充分という女性達と、協力して作業する予定だ。


今夜はかまくらをライトアップして、記憶に残る夜にするつもりだ。

投稿、遅くなりました。


急な予定が入ってしまいました(ToT)

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