アフタヌーンティーパーティー
雪の日が続いています。
という訳で、今日はちょっと手の込んだ料理を作り、カエン様をびっくりさせます!
「まずはお昼の準備です!スイーツを充実させたアフタヌーンティーパーティー風でいきますよ 」
女性陣は公民館に集合している。
甘いものが食べたいとのリクエストに答えて、数種類のお菓子を作るつもりなのだ。
「 分担していきましょう!まずはスコーン、プリン、ミルモンアイス、そしてロールケーキです。
試作を重ねて、ようやく完璧なスポンジケーキのレシピに辿り着きました!」
今日の一番の目玉は、もちろんロールケーキだ。
ふわっふわのスポンジに生クリームと、ジャムや野リンゴのコンポートを巻き込んで数種類作るつもりである。
そして大人用のスペシャルケーキとして、干しぶどうをきび酒に漬けたものとナッツを、生クリームに混ぜ込んで巻いていくのだ。
「 私はロールケーキを担当しますね、何人か手伝ってください。他は皆さん作ったことがあると思うので、お任せしますね 」
その後はグループに別れて、ひたすらお菓子作りに励む。スコーンだけは焼きたてを食べてもらいたいので、途中まで作った生地は冷蔵庫で寝かせておく。直前に卵とミルクを加えて、成型して焼き上げるのだ。
手の空いた人からサンドイッチの具材作りへ進み、こちらも直前に仕上げる事にする。
「 お姉ちゃん、美味しそうね!すごくきれい。
もう少し大きくなったら、一緒に作ってもいい?」
背伸びしてテーブルの縁に両手をかけて、ユキちゃんはキラキラの瞳で美波の手で巻かれていくロールケーキを見詰めている。
ハクも隣で、同じポーズでしっぽを振っている。
「 勿論だよ、今度はプリンみたいに子供でも出来そうなのを作ろうね 」
可愛すぎるおねだりにメロメロである。
余った生クリームを指にとり、二人の口に運んでしまう。
「 甘~い。これ、双子ベリー味だね。紫色でとってもきれい 」
可愛い~!なでなでしたい~!
小さな手をほっぺに当てて顔を見合わせてピョンピョンする二人の姿は、その場にいた全ての女性達を釘付けにしている。
「 さぁ二人とも、カエン様に招待状を持っていくんでしょう?そろそろいってらっしゃい 」
さすが母である、二人の破壊的な可愛らしさに免疫があるらしい。
アフタヌーンティーパーティーという設定なので、子供達が書いた招待状を渡してご招待する演出なのだ。
ユーリとカエン様は既に露天風呂に誘導してあるので、あがったところで手渡して会場まで連れてきてもらう予定だ。
会場の準備が出来るまで足止めするという重大任務には、現在カケルとハヤテとナギがついている。
途中でハクとユキちゃんが合流し、さらに時間を稼ぐのである。
「 はいっ!行ってきます!」
二人は仲良く手を繋ぎ、重要任務を果たすべく露天風呂へ向かった。
「 さて、皆さん。仕上げをしましょう!」
ここから急ピッチでテーブルセッティングを行い、公民館は別世界のように変身した。
美波が準備しておいたバルーンアートを設置して、椅子もキャンディーカラーの卵の側面を削ったような物を作ってみた。
アリスのティーパーティーというコンセプトだ。
カエン様の為というより、女子の夢を詰め込んでしまったような気もする……ナナ・マナはおおはしゃぎだ。
「 手伝いに来たわよ。凄いじゃない、可愛いわ!」
デザイン画を描くため別行動していたミチルが合流してくれて、準備は最終段階だ。
テーブルセッテイングが終了し、スコーンをオーブンに入れたところで他の村人達が集まってくる。
男性陣の野太い歓声が上がり、意外と可愛いものが好きらしい事が判明した。
皆が席に着いたところでリンが耳打ちしてくれた。
「 来るわよ、今噴水広場に入ったところね 」
皆さん耳がいいので、美波以外は気付いているのである。カチャッとドアが開いて、カエン様とユーリが入ってくる。二人の背中を押すように子供達も続く。
「 ティーパーティーへようこそ!」
二人ともびっくりしすぎて固まっているようだ。
重要任務を果たし、若干のぼせ気味の子供達がそれぞれの両親の元へ駆け寄る。
ハクとユキちゃんも、リンとギンに飛びついて誇らしげに胸を張っている。
「 すごいな、この飾りは美波か?見たことがないデザインだ 」
よし!カエン様をびっくりさせることに成功した!
「 おおっ、頑張ったな。女の子が好きそうだ、デートに誘えばOK間違いなしだな!」
忘れていたが、女好きなエルフさんであった。
「カエン様、村の皆の気持ちです。色々作りましたので、楽しんでいただけたら嬉しいです 」
気を取り直し、こちらへどうぞと案内する。
因みにユーリにも内緒だったのは、芝居ができずにカエン様にバレそうだからだ。
「 そろそろスコーンが焼き上がりますので、お待ちくださいね 」
オーブンからスコーンを取り出しテーブルに運ぶ。
各自のカップには熱々のハーブティーが注がれている。
「 では、カエン様を歓迎して!さぁ、食べよう 」
シロガネ様の合図で、皆思い思いのお菓子に手を伸ばす。
「 カエン様、スコーンは焼き立てがおすすめです。
アツアツですよ 」
「 いただこう。これをつけるのか?」
お皿に生クリームと、ジャムを何種類か乗せて手渡すと、美味しそうに食べてくれた。
「 んっ。旨い!シンプルだけど良いな、バターの香りがたまらん 」
そのコメントを聞いて、女性達はほっとして自分の食事に戻った。
「 良かったです。他にも色々ありますから召し上がって下さいね 」
「 美波、旨いよ!このロールケーキってやつ、フワフワだな 」
ユーリは既にスコーンを二つ食べて、ロールケーキを攻略している。
「 ありがと、力作なんだよ。サンドイッチも食べてね 」
見回すと他の村人達も笑顔で食べていて、卵形の椅子の背凭れの間で、しっぽが忙しなく揺れているのが可愛い。
こうして好評の内にティーパーティーは終了した。
食べ過ぎて動けなくなった、ユーリを始めとする数人が壁際のビーズクッションでダウンしているが……
パーティーが終わったら処分するはずだった椅子とバルーンアートは、カエン様の希望でお土産として持ち帰ることになった。
来るときに持ってきた箱のサイズなら、余裕で入るだろう。
「 王都で両親に見せてやりたいんだ、もちろん陛下にもな。城の料理人にお菓子を作ってもらって、ティーパーティーをするんだ 」
優しい息子さんです、男前でかつ性格もいいとは、なんというレア物件!
丁寧なお礼の言葉を頂き、美波達は後片付けと夕食の仕込みに取り掛かる。今日は夜も頑張るつもりだ。
ユーリは邪魔なので、カエン様が回収してくれた。
お姫様だっこで運ばれるユーリに、美波は腹筋が悲鳴をあげるまで笑い転げた。
暫く思い出し笑いに注意せねば。
この日の夕食はレシピの再現に成功したパイ生地を使って、クリームシチューのパイ包み焼きとミートパイをメインに、お酒似合うメニューが並んだ。
初めて食べるパイにはしゃぎすぎて、翌日は二日酔いに苦しむ村人が続出した。
ザルなカエン様とユーリはケロッとしていたが。




